立地に優位性

三菱自動車のタイ工場は、同国唯一の輸出港で、自動車輸出のほとんどを担うレムチャバン港の近くに3つある。この地区に自動車組立工場を持つ自動車メーカーは三菱自動車のみ。ここで「ミラージュ」「アトラージュ」「パジェロスポーツ」「トライトン」の4機種を製造している。部品の現地調達率も高い。

MMThの生産工場があるレムチャバンは、バンコクから100キロ程度離れた場所に位置する港町だ。事務機能をつかさどる本社はバンコク市内にあるが、100キロという距離は渋滞を考えなければさほど遠い距離ではない。MMThの各事業所は、バンコクおよびレムチャバン周辺に集中する。レムチャバン工場の至近には、開発拠点となるR&Dテストコースや輸出向け補修部品庫を配置。本社のあるバンコク北側には、トレーニングセンターと国内向け補修部品庫を配置している。

  • 三菱自動車がタイに持つ拠点

    三菱自動車がタイに持つ拠点

日本の各メーカーもタイのバンコク周辺に生産工場を設けているが、レムチャバンに工場を持つのはMMThのみだ。MMThの場合、接岸した輸送船にそのまま自走で船積みが可能だが、レムチャバン以外に生産工場を持つ他のメーカーは、同港までをキャリアカーなどで輸送する必要があり、MMThの優位性が見て取れる。

  • レムチャバン港周辺の三菱自動車拠点

    輸出港に近い立地が三菱自動車の優位性となっている

生産能力は年間42.4万台

レムチャバン工場を構成するのは、第1~第3までの組み立て工場とエンジン工場だ。ピックアップトラックベースの乗用車ラインを備える第1工場では「パジェロスポーツ」を生産。第2工場ではピックアップトラックラインで「トライトン」を、第3工場では乗用車ラインで「ミラージュ」と「アトラージュ」をそれぞれ生産している。エンジン工場ではガソリンとディーゼルの双方を作る。

2018年3月末でのMMThの本社とレムチャバン工場の従業員数は計6,114人。うち5,600人弱がレムチャバン工場に勤務する。3工場を合わせた生産能力は年間42万4,000台にのぼり、2017年は35万6,000台を生産、稼働率は84%となっている。

現地調達率も高く、「パジェロスポーツ」では80%、「トライトン」では86%を占める。「ミラージュ」と「アトラージュ」では、日本からのノックダウンパーツはECUやクランクシャフトなどわずかなものだけで、その現地調達率は94%にものぼる。