Tokyo Otaku Modeが中心となって組織された「オタクコイン準備委員会」が5月9日、日本のアニメ、マンガ、ゲームなどに特化した仮想通貨「オタクコイン」の概要を発表した。アニメなどのファンである「オタク」向けに仮想通貨を無償で配布し、それを「投票券」として、アニメなどの新作製作プロジェクトを応援する仕組みを作り上げるのが目標だとしている。

オタクコインは、ブロックチェーンの仕組みを使った仮想通貨で、「オタク領域に特化したコミュニティ内コイン兼投票券」(Tokyo Otaku Mode CEOの小高奈皇光氏)とされる。無償配布されたコインに応じて、所有者には投票券が付与される。

  • オタクコインの仕組み

アニメやマンガ、ゲームなどのクリエーター側は、作品のプロジェクトを作って投票を受け付ける。投票券を使ってプロジェクトに投票が行われることで、票を多く集めた、ファンによって選ばれたプロジェクトが作品として制作されることを目指すのがオタクコインだ。

作品制作の資金調達の形として、「SPIRIT VOTE」と命名されたこの仕組みは、小高氏によれば「(マンガ)ドラゴンボールに登場した元気玉の英語名がSpirit Ballで、それをリスペクトして名付けた」そうだ。

  • プロジェクトに投票するSPIRIT VOTE

コインの無償配布はAirDropやBountyを使って発行される。昨年12月の段階ではICOも含めて検討していたが、オブザーバーとして参加した慶應義塾大学SFC研究所 斎藤賢爾氏らとの議論の結果、ICOは実施しないことにした。オタクコイン自体は、当初Tokyo Otaku Modeのオンラインサイトでの商品購入にも利用できる。現時点では、1オタクコインあたりの何円になるかは決まっていないという。

今年の夏から秋にかけて、最初のコイン無償配布を実施。どういった方法で、どういったユーザーに配布するかはまだ決まっていない。当初はTokyo Otaku Modeでの支払いにしか使えないが、来年からはプロジェクトを公表し、最初の投票が行われる予定だ。

オタクコインは、例えばパートナーの正規コンテンツ配信サイトへの登録などでさらにもらえる仕組みも検討しており、正規サイトへの誘導のモチベーションに活用して海賊版サイトへの対策も狙うという。

  • オタクコインでは、プロジェクトへの投票だけでなく、クリエーター支援や決済なども可能になる

当初、オタクコインをユーザー同士がやりとりするような取り引きが行われる可能性もあるが、これ自体は「コントロールできない」(同)。オタクコインに興味を持った仮想通貨取引所が相談に来たら、取引所での取り扱いも検討するという。

取引所で扱われると、オタクコインの価値も変動し、現金への換金も容易になり、そうすると将来的には投票で集めたオタクコインを製作資金として、プロジェクトを実現できることになる。

  • オタクコインに賛同したパートナー

最終的にはそうした資金調達の仕組みとして活用されることが目標。ブロックチェーンの仕組みを使い、コイン大量所持のユーザーの投票だけで結果が左右されないようなルール作りなどもすることで、多くのファンが望む作品が製作されることがオタクコインの目標だとしている。