忙しくてどうしても病院に行けないとき、大人は市販薬に頼ることができますよね。しかし子どもに飲ませるとなると、自己判断で薬を選ぶことに躊躇してしまうママ・パパは多いかもしれません。今回は、子どもの市販薬の利用方法について、小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。

  • 市販薬と処方薬の使い分け、どうしたらいい?(画像はイメージ)

症状が軽ければ、市販の飲み薬を使うのも手

Q.まず、市販薬と処方された薬との違いを教えてください

市販薬には、多くの症状に対応するため、いろいろな成分が含まれています。例えば子ども用の風邪薬なら、咳止めや鼻水止め、解熱剤などが入っています。年齢や体重、体質の違いなどを考慮できないこともあり、比較的効き目は弱いですが、副作用は少なめです。

一方、処方薬は症状によって、鼻水なら鼻水止め、咳なら咳止めと、一人ひとりの状態に合わせて出されています。そのため、効き目は市販薬に比べて強めと言えるでしょう。

Q.常備薬として、家に置いておきたいという人も多いと思いますが、何歳から市販の飲み薬を使用してもいいのでしょうか?

市販薬に記載されている年齢制限に従いましょう。薬局では子ども向けの咳止めシロップをよく見かけると思いますが、中には生後6カ月から使えるものもあります。そのような商品は、その月齢で飲んでもいい成分で作られているので、表示の通り、生後6カ月から使ってもいいと思います。

Q.軽い風邪程度なら、子どもにも市販薬の飲み薬を使ってもいいですか?

症状が軽ければ、市販薬を使用するのも選択肢の一つだと思います。子ども用の市販薬は飲みやすく作られているので、子どもが嫌がらずに飲んでくれることが多いですよね。また、風邪は引き始めになるべく早く対処することが重要なので、病院に行けないときは、一時的に市販薬を活用するのもいいでしょう。

ただ、使用を悩むような場合は自己判断せずに、必ず医師に相談してください。

Q.市販の飲み薬を使用するときの注意点を教えてください

市販薬を使ってもいいか気になるときは、小児科に電話で相談するのもいいと思います。自分で判断せず、医師の確認を仰ぐことが重要なので、もし受診を促されたら、ぜひ病院へ行きましょう。場合によっては、市販薬を飲んだ方が早く対処できて症状が重くならないということもありますので、うまく活用してもらいたいです。

塗り薬は成分に注意を

Q.子どもの肌荒れや乾燥にも市販薬が便利ですが、使ってもいいのでしょうか?

ワセリンなどの保湿剤を活用するのはいいと思います。ただ、さまざまな成分が入っている塗り薬は、その子の皮膚の状態や症状によって、炎症を引き起こしてしまう可能性があります。

また、市販薬だけでなく化粧品にも注意が必要です。「子どもに優しい」「家族で使える」と表記されていても、わずかな成分に反応して湿疹ができる子もいます。皮膚の疾患については、子どものうちはできるだけ、医師に処方してもらった薬を使った方がいいと私は考えています。

Q.薬の成分に反応して、炎症を起こしてしまう可能性があるのですね

薬の成分のほかにも、香料などが加えられている場合、免疫が弱い子どもたちの肌はかぶれてしまうことがあります。肩こりや筋肉痛を緩和するために直接塗るタイプの薬や、虫刺されの薬で肌がかぶれた子どもたちも診察したことがありますが、その原因はそれぞれ異なっていて、特定するのは難しいです。

Q.市販の塗り薬を使う場合には、どのような点に注意が必要ですか?

重要なのは、傷があるところを市販薬で治そうとしないことです。焦って薬を塗りたくなる気持ちは分かるのですが、傷口の中まで薬の成分をしみこませてしまい、さらに炎症がおきやすくなってしまいます。

また初めて塗る薬は、皮膚の一部分に少しだけ塗ってかぶれないか確認したうえで、広範囲に広げてください。

Q.市販薬を使ってもいいのか悩むママたちにはどんなことを伝えたいですか?

忙しくて子どもを病院に連れて行けないママたちには、ぜひ市販薬を有効活用してもらいたいと思います。もちろんすぐに病院に行くのがベストですが、軽い症状なら、市販薬も選択肢の一つと思っておくことが大切です。

"困ったときは市販薬もありなんだ"と考えてもらえたらと思います。ただ、処方薬を出してもらうに越したことはないので、不安なことがあれば、必ず医師に確認したうえで薬を飲ませてあげるようにしてくださいね。

竹中美恵子先生

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。