子宮内膜症や子宮腺筋症、そして子宮筋腫といった疾患が疑われる場合、一日でも早く婦人科を受診するのがよい。船曳医師に「診察を受けるべきか否か」をセルフジャッジするための目安をいくつか教えてもらったので、ひどい生理痛に悩んでいる女性は参考にしてみてほしい。

(1)薬を飲んでも痛みの程度が緩和しなくなってきている

(2)初経よりだんだん痛みが強くなる

(3)性交時に毎回、子宮の奥が痛む(いわゆる性交痛)

(4)月経時と月経時以外に左右の下腹痛が痛む

(5)月経量が増えた

「月経痛は、年齢とともに軽くなってくることが多いので、だんだん強くなっている場合は、他の原因があると考えられます。子宮内膜症や子宮筋腫はいったん発生すると自然には消えませんし、その部分が線維化して硬くなるので、生理以外のときも痛みが起きたり、性交痛が出たりします。さらに筋腫が大きくなって月経時にはがれる内膜の面積が増えると、月経量も多くなり過多月経につながります」

上記5つのうち、1つでも該当するようだったら、婦人科への受診を検討した方がよいだろう。

子宮内膜症や子宮筋腫の治療法

実際に内診や超音波検査を経て、子宮内膜症あるいは子宮筋腫と診断された場合、治療は症状だけを抑える対症療法と病巣そのものをなくす根治療法を選ぶことになる。どちらを選択するかは、「症状の程度」「年齢」「子どもが現在いる、または将来子どもを望む」などを総合的に勘案して決めることになる。

対症療法は、鎮痛剤やピルでの症状緩和を目的とする。ピルは排卵を抑制し、子宮内膜を薄くするため、月経量も減って治療効果も現れる。妊娠を希望するまでの長期にわたり、投与するケースもある。

一方の根治療法は、ホルモン剤治療か手術を用いて行う。月経を止めれば症状が軽快するため、期間を限定してホルモン剤で月経を止める。症状が重度の場合は、手術が提案されるとのこと。

「注意しないといけないのは、排卵し女性ホルモンが出る限り、子宮内膜症や子宮筋腫の再発はありえます。治療に際しては、長期のプランを医師と相談するのがよいでしょう」

独りで悩まずに相談を

生理痛を我慢すると不妊につながる恐れもある。生理は子どもを授かるために不可欠な現象ではあるが、その生理のせいで妊娠しづらい体になってしまう――。残念ながら、そのような悲劇が起きる可能性はゼロではない。

生理痛や過多月経、PMSなどはナイーブなテーマだけに、同性への相談にも二の足を踏んでいる女性もいることだろう。ただ、独りで悩みを抱えているだけでは、事態が好転するとは考えにくい。しかるべき医療機関でしかるべき診察・治療を経て、少しでも生理とうまく付き合っていけるようにしてみてほしい。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 船曳美也子(フナビキ・ミヤコ)

1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、生殖医療専門医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚、43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2014年、健康な女性の凍結卵子による妊娠に成功。出産に至ったのは国内初とされる。著書に、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書「女性の人生ゲームで勝つ方法」(2013年、主婦の友社)、女性の身体について正しい知識を知ってもらえるよう執筆した「あなたも知らない女のカラダ―希望を叶える性の話」(2017年、講談社)がある。En女医会にも所属している。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。