2018年に入り、ロジック半導体メーカーおよびファウンドリーメーカーのプロセス微細化競争が、いよいよ10nmから7nm、そしてその先の5nmへと急速に進もうとしている。

IC Insightsがこのほど公開した市場レポートでは、主要半導体各社のプロセス微細化に関するロードマップが掲載されているが、それによると、14nmまではFinFETで先行したIntelが強みを見せていたが、その後10nmではSamsung ElectronicsとTSMCが急激にキャッチアップ。最先端プロセスを武器にAppleやQualcommといった有力顧客の奪い合いが生じた。

  • 主要ロジック/ファウンドリメーカーの量産プロセス・ロードマップ

    主要ロジック/ファウンドリメーカーの量産プロセス・ロードマップ。各メーカーが述べている14nmや10nmといった「プロセス世代」、ならびに2018年などの「量産開始時期」は、企業ごとに定義が異なるうえに、マーケッティング上の理由で実際より前倒して宣伝されている場合がある。したがってプロセス世代や次世代への移行の時期は、極めて大まかな指標として捉えるべきだろう (出所:各企業の発表内容や国際会議での報告などを元にIC Insightsが調査・作成)

10nmの次となる7nmでは、EUVリソグラフィが採用される可能性が高まっているが、露光プロセスのスループット向上を可能にする高出力な光源の開発が遅れており、実際に量産プロセスとして立ち上がるのは、2018年後半以降になるものと見られる。そのためTSMCは、EUVの立ち上がりを待たずに、既存の液浸ArFリソグラフィを用いた7nmプロセス「7FF」によるロジックデバイスのリスク生産をすでに開始しているほか、2018年の秋に発売されるであろうAppleの次世代iPhone用SoC「A12」は同プロセスで生産される見込みとなっている。

EUVリソグラフィの採用は7nmプロセスとしては2世代目(改良版)にあたる「7FF+」プロセスからになる予定で、同社のスケジュールでは、2018年後半にEUVによる製造プロセスの整備が進められて、2019年以降に量産を開始する見通しとなっている。

一方のSamsungは、7nmの立ち上げを2018年後半まで待ち、はじめからEUVリソグラフィを採用する計画だ。また、ファウンドリとして、先行する2社を追いかけるGLOBALFOUNDRIES(GF)も今年、10nmをスキップし、14nmから一気に7nmへとプロセスを移行させる計画である。同社のバックアップとして、IBMの技術チーム(ニューヨーク州アルバニーにあるIBM 300mm R&Dライン)がサポートに参加するようだ。

これまでプロセスの微細化を牽引してきたIntelは、ファウンドリといたずらに微細化で競争をするのを避け、着実にMPUの性能を向上させることに注力している。また、UMCは微細化で競合のTSMCに周回遅れの状態となっているほか、中国を代表するSMICにいたってはさらに周回遅れの状態であり、TSMCやGFなどは、そうした状況を見越して、中国本土に量産ファブを建設して、中国の先端ファブレスの顧客を取り込もうとしている。

プロセスの微細化が進む一方、2017年半ばにTSMCから12nmという聞きなれないプロセスが登場したほか、GFも2018年より12nmプロセスの提供を開始する模様だ。これらは、従来の16/14nmから派生したもので、16/14nmから設計を変更することなく小型化を実現し、コストを抑制することができる。そのため、NVIDIAやAMDのディープラーニング向けGPUの一部製品の製造で採用が進められることとなる。

2019年にリスク生産を開始する予定の5nm

ちなみに先端プロセスの開発を進めている各社は、ともに5nmプロセスの準備も始めている。TSMCは、5nmプロセスを用いたリスク生産を2019年第1四半期にも開始する計画を示している。同社はすでに、台湾Southern Taiwan Science Parkにおいて、5nmの量産プロセスに対応する「Fab 18」の第1期工事を2018年1月より開始しており、2019年には装置搬入・立ち上げが行われ、2020年に量産を始める予定である。その後も需要に応じて「Fab 18」の第2、第3期工事を始めるとしている。

一方のSamsungも2019年から5nmのリスク生産に取り組むとするほか、2020年からはポストFinFET構造による4nmプロセスのリスク生産を始めるとしている。これは同社が特許を所有する「MBCFET(Multi Bridge Channel FET)」と呼ばれる次世代のデバイス構造で、いわゆるゲートオールアラウンド(GAA)構造のSamsung版である。

さらに、Samsungは2月23日、華城(ファソン)工場の敷地内に60億ドルを投じて、2017年にシステムLSI事業部から分離独立させたファウンドリ事業部専用の新棟を起工した。TSMC同様に、新棟は2020年に本格稼働させるという。IC Insightsの調べによると、ファウンドリ業界で、TSMCが成長を続ける一方、Samsungは業界平均以下の成長率しか達成できておらず、早急なキャッチアップが必要との判断からの分離・独立であり、フットワークを軽くすることで、成長を促し、将来の基幹ビジネスの1つへと成長させたいという目論みがあるようだ。