ガートナーは4月21日、同社が4月8日に発表した2026年の半導体市場予測に関する説明会を開催。2025年の確定値と、2026年の見通しについて、シニアディレクターアナリストの山地正恒氏が解説を行った。
2025年の半導体売上高トップ10、トップは断トツ成長率のNVIDIA
同社の確定数値(2026年3月末の集計)による2025年の半導体市場規模は前年比22.4%増の8053億ドル。売上高トップ10社は順に以下の通りとなる。
- NVIDIA
- Samsung Electronics
- SK hynix
- Intel
- Micron Technology
- Qualcomm
- Broadcom
- AMD
- Apple
- MediaTek
売り上げ規模については同社推定を含み、例えばトップのNVIDIAの成長率は約60%弱だが、外部調達のHBMを加味した実際の決算に基づくGPUソリューションとしての値ではなく、純粋に自社半導体の売上高をもとに計算しているとする。高い成長率を示している企業は主にAIデータセンター関連で実績のあり、そこに入り込めていない企業とは成長率で大きく差がついている状況にあるという。また、Appleは外販はしていないが、自社消費分を算出して計上している点に注意が必要である。
ちなみに、日本企業については13位にソニー、17位にキオクシア、18位にルネサス エレクトロニクスがトップ20社としてみると入ってくるという。
半導体調達額トップはApple、存在感増すハイパースケーラー
一方、2025年に半導体メーカーが販売した各種デバイスをどこの企業が買ったのかを見ると、調達額トップ10は以下の通りとなる。
- Apple
- Samsung
- Alphabet
- NVIDIA
- Meta
- Lenovo
- Microsoft
- Huawei
- Amazon
- BBK Electronics
このうち、スマートフォンを主力とするのはApple、Samsung、Huawei、BBK Electronics(OPPOやVivoなどのブランドを保有)、PCを主力とするのはLenovoくらいで、残りのNVIDIAを除くAlphabet(Google)、Meta、Microsoft、Amazonの4社はいわゆるハイパースケーラーで、いかにAI半導体分野の購入意欲が強いかが示される結果となっている。山地氏も「以前はPCやスマホが中心だったが、ここ最近はハイパースケーラーが入ってきたことが大きな変化」と、市場の変化を強調。2000年代中盤にはソニーやパナソニック、東芝といった日本メーカーもトップ10に入っていたとするが、この20年ほどでトップ10のメンバーが大きく変わったとする。ちなみに日本勢のトップは16位のソニーだという。
AIデータセンター頼みとなった2025年の半導体市場
全体としては前年比22.4%増と高い伸びを達成した2025年だが、山地氏は「半導体業界全体としては良かった年と言えると思うが、実際に良かったかどうかは判断が難しい」と語る。というのも、NVIDIAの約60%という高い伸び率を見ればわかるが、AIデータセンターに絡むロジック/メモリのサプライヤはその恩恵を受ける形で高い伸びを示したが、それ以外の領域では大きな成長はなく、場合によってはマイナス成長を記録している。特に日本はAIデータセンターに絡む半導体メーカーが少なく、AIデータセンターのために半導体消費をする企業も少ないため、推論ニーズで高まりを見せるSSD向けにNANDを手掛けるキオクシアがいるものの、それ以外の企業の存在感が乏しく、なかなかトレンドの恩恵をあやかることが難しい状況にあるとする。
2026年は63.9%増の成長予測、メモリの高騰がけん引
変わって2026年の半導体市場は、前年比63.9%増の1兆3200億ドルと予測しており、2027年も同17%増と連続で成長するが、2028年は踊り場に到達するとして同15%減を予測。2029年は同10%増、2030年も同9.4%増で再び成長軌道に戻ると予測している。
アプリケーションで見た場合、2026年はメモリや各種プロセッサなどを含むデータプロセッシングが同90.1%増と全体平均の63.9%増を上回る一方、オートモーティブが同25.1%増、コミュニケーションズが同47.3%増、コンシューマが同47.4%増、インダストリアルが同33.2%といずれも高い成長率が予想されるが、平均と比べるとデータプロセッシング以外は下回る結果となっており、そのけん引役がAIデータセンターであり、デバイスとしてはメモリがけん引役で、メモリを多く使う領域が高い成長率となっているとする。
山地氏も「年間成長率が約64%という値は、この20年ほどで経験したことのないレベル。これもAIデータセンターに起因している。特にHBMの価格上昇と、HBMにリソースを割かれた影響でスマホやPC向けメモリの価格も上昇しているが、そうしたメモリ価格の高騰が大きな要因となっている」と、これまでにない勢いで半導体市場が成長していることを強調する。
メモリ単独で見た場合、金額ベースの成長率は同193%増と約3倍に市場規模が拡大すると予測している。DRAMとNANDで分けてみると、DRAMが同151%増、NANDが同293%増と、NANDの方が高い伸びを見せるという。この差は、それまでの動向に違いがある。DRAMは2025年も同56%増と高い伸びを示していた一方、NANDは2024年、2025年と低迷していたことから、その反動でNANDの方が高い伸び率を示すことが期待できるという。
一方でビット容量の伸びで見た場合、DRAMは2025年で23%増、2026年で同12%弱、NANDも2025年、2026年ともに同18%増ほどと金額ベースで見た場合に比べて低い成長率であり、価格の高騰がいかに影響しているかが窺える。
メモリの高騰は2028年に沈静化か?
このメモリ価格の高騰が大方落ち着くのが、メモリメーカー各社の新工場の稼働が軌道に乗る2028年ころと同社では見ている。実際の価格の高止まりはそれよりも少し前から生じる可能性もあるが、大筋としては2028年には生産量が増加し、それに伴い、価格も安定し、市場が落ち着くことが予想されるという。
「AIデータセンターのロジック(GPUやAIアクセラレータ)の成長率が急減したり、マイナス成長になったりすることはなく、ずっと成長が続くという楽観的な予測をしている。常に高い成長率というわけではないが、2030年になってもGPUとAIアクセラレータの合算で金額ベースでは2桁%の成長率予測であり、勢いがかげるとは考えていない」(同)とする一方で、「だがメモリについては、いくらAIが活況だといえ、過剰投資で供給が需要を上回ると、価格を下げる必要がでてくる。この動きが2028年に起こると予想される。あくまで生産能力の拡大による供給量が需要に追いついた結果であり、電子機器やAIサーバの需要そのものが大きく減速するというシナリオではない」と、標準製品であるメモリ市場特有の需給バランスの関係により価格下落が生じ、市場が落ち着きを取り戻すとするシナリオを想定しているとする。
また、DRAM、NANDともに2028年には価格は落ち着くことが予想されるが、NANDの方が下がり幅が大きくなることが予想されるとしている。
なお、AIサーバ/AIデータセンターの恩恵の範囲は最初期のGPUから、DRAM、そしてNANDと徐々にすそ野を拡大してきており、現在、ネットワークチップなどにも恩恵が届きつつあるという。「AIデータセンターはGPUだけで成り立つのではなく、いろいろな半導体チップを活用して成り立っていく。パワー半導体も電力の効率化需要などから伸びが期待されているが、その需要の拡大はAI関連としては時期的には遅い方で、まだその恩恵が顕在化した段階に至っていない」(同)としており、今後、そうした半導体メーカーにも恩恵が届く可能性があるとしている。
実際にNVIDIAはAIデータセンターの800V直流電源化を提唱しており、パワー半導体大手のInfineonのほか、onsemi、Texas Instruments(TI)、ルネサス、STMicroelectronics、中Innoscienceといったパワー半導体メーカーたちと協力して電源供給のためのアーキテクチャ開発を進めており、今後、そうしたパワー半導体メーカーがAIデータセンターの市場拡大の恩恵を受けることが期待される。

