大手菓子・アイスクリームメーカーのロッテはこのほど、日々の業務を支える経費精算の仕組みに、大きなメスを入れたという。現場の声を反映しつつ、社内規定の変更も伴いながらシステムを刷新し、経費申請業務50%削減という成果につながった今回のプロジェクトについて取材した。
なぜ経費精算は非効率だったのか?旧システムの課題か
ロッテは2年ほど前から、物価上昇や人材不足といった環境の変化に対応しながら収益を確保するため、トップダウン型で全社的な生産性向上を開始した。
そのプロジェクトの中で、経費精算や承認など管理業務に要する時間を削減し、営業や研究開発など本来あるべき業務に注力するための時間創出が進められていたという。
同社が以前使用していた経費精算システムは、ボタン配置やレイアウトが視線の動線と合っておらず、マニュアルを見ながらでないと申請が難しかった。
さらに、旧システムは請求書払いや会社払い、立替払いなど、申請する項目によって画面の見え方が異なり、ユーザーを迷わせる要因となっていた。また、事前申請とひも付けるボタンの場所が分かりにくく、連携漏れなどのミスも多発。
単に現場のユーザーが使いにくかっただけではない。管理部門においても、保守をベンダーに依存していたことから、設定変更の可否や方法が直感的に分からず、都度ベンダーに問い合わせる必要があった。しかしベンダー側の回答が遅く、対応が遅れる場合もあったという。
ICT戦略部の中村太紀氏は「管理用のマスタデータがブラックボックス化しており、変更したい部分に対してどのマスタを修正すべきか不明確だった。似たようなマスタが多く、相互関係も分かりにくい状態だった」と、当時を振り返る。
こうした背景から、システム刷新による効果が見えやすく、ユーザーの困りごと解決に直結する経費精算システムの入れ替えが、優先的に進められたそうだ。
なぜ4カ月で移行できたのか?意思決定を止めない導入プロセス
ロッテの持株会社であるロッテホールディングスや、他のグループ会社ですでに導入実績があり、現場の評判も良かったことから、ロッテは経費精算システムとして、ラクスが提供する「楽楽精算」を導入。
取材して驚いたのは、通常は半年以上を要する経費精算システムの刷新をわずか4カ月で遂行した点だ。2025年3月に導入キックオフミーティングを開き、それから4カ月後には社内のユーザーに展開したという。
経費管理を担当する福島崇広氏は「ホールディングスで既に導入していたこともあり、特に大きな障壁はなく比較的スムーズに導入できた」と語っていた。
具体的には、週次で定例会を設けて集中会議を開いたほか、社内で役員とのタッチポイントも定期的に設けたことで、社内規定の変更が必要な場合にも迅速に承認を得ながら進められたという。
また、システム刷新に際して、生産性向上という大きな軸が定まっていたため、「こういう場合はどうする?」のような例外的な要望や議論に対して「それは本当に必要な議論か?」と立ち返りながら進めた点も、迅速な導入に寄与している。
ロッテホールディングスが先行して導入していた楽楽精算を単に横展開するだけでなく、その知見を最大限に活用しながらも柔軟に対応を進めた点が、ロッテの短期間でのシステム刷新につながった。
導入効果は?業務50%削減とチェック体制の集約(50人→3人)
約2000人が使用する経費精算システムをわずか4カ月間で刷新したロッテ。旧システムは入力項目に誤りがないかを確認するために、およそ50ある各拠点に内容チェック担当者を設置していたという。
しかしそうした場合によくあるのは、拠点ごとに独自のルールが作られてしまうことだ。実際、ロッテでも拠点ごとに異なる運用が課題になる場面が生じていたとのことだ。
「楽楽精算」を導入したことで、現在はわずか3人の本部の担当者だけでチェックが済むようになった。
「ユーザーの申請業務も1件当たり15分から7分まで削減され、実に50%以上の業務効率化につながっている。事前に申請した内容と容易にひも付けて申請できる点が、業務効率化に寄与している」(福島氏)
社内への浸透フェーズにおいては、まず各拠点のキーとなる人材に説明し、協力を得られる体制を構築。トライアル期間を設けたり、動画を用いた説明会を開催したりと、システム移行に伴う心理的なハードルを下げる取り組みを実施したという。
加えて、チャットボットやFAQ(よくある質問)を搭載し、現場のユーザーが自己解決するための手助けをしたため、問い合わせの削減につながっている。
経理部の成田徹氏は「営業担当者などは経費精算の件数が多いので、どうしても長時間の申請業務が生じていた。しかし現在は半分の時間で申請が済むので、より多くの時間を商談に使えていると聞いている」と話していた。
また、システムを管理する立場として、中村氏は「旧システムは毎日のように問い合わせやトラブルの連絡が届いていた。楽楽精算を導入してから問い合わせの件数が減り、現場にプラスの印象を持たれている」とコメントしていた。
次の課題は何か?バックオフィスのデータ活用と自動化
中村氏は今後の目標として、「データドリブン経営を進めたい。社内のあらゆるデータをクラウドに集約して、ナレッジを蓄積しつつ、ロッテの事業戦略に役立てていけたら」と話す。
そのために、「楽楽精算」のような個別のサービスを全社に導入する方針ではなく、部門ごとの目標に対しボトルネックとなっている業務を丁寧にヒアリングした上で、ITで解決できる部分を検討するという。
また、経費精算を含む管理業務はさらに自動化を進め、全社員が本来の業務に集中できる環境作りを支援する。
「管理部門も会社の利益に貢献できる組織を作れたら」(中村氏)
今回の取材で明らかになったように、ロッテが取り組んだのは単なる経費精算システムの刷新ではなく、業務のあり方そのものを見直すプロジェクトだ。現場の意見を受け入れながら、役員を交えて社内規定の変更も柔軟に対応したという同社の事例からは、学べる点も多いだろう。
コアラのマーチやチョコパイ、雪見だいふくなど、長年にわたり親しまれてきたロッテの商品。その裏側では、今回のように業務のあり方を見直し、変化を続けてきた企業姿勢がある。変わらない価値を届けるために、変わり続ける——同社の取り組みは、その重要性を示している。




