堤真一と岡田将生が、WOWOWの『連続ドラマW名刺ゲーム』(12月2日毎週土曜 22:00~ 全4話・1話のみ無料放送)で共演。原作は放送作家の鈴木おさむによる同名小説で、テレビ業界の舞台裏に潜む心の闇を暴くヒューマン・サスペンスとなっている。
堤は、人気クイズ番組「ミステリースパイ」の売れっ子プロデューサー・神田達也役を、岡田は神田を追い詰めていく謎の男X役を演じる。娘と共に密室に監禁された神田は、Xからの指示で命懸けとなるゲームに参戦させられる。2人がエキサイティングな現場の撮影秘話を語ってくれた。
――最初に脚本を読んだ感想から聞かせてください。
堤「台本は読みものとしてすいすい読めて、面白い作品だなと思いました。テレビ業界のことが暴露されていく物語ですが、そういう役をやったことがないのでやってみようという事点よりも、シンプルに台本が面白かったので、やりたいと思いました。そういう感覚は大事な気がします。
巻き込まれていく役は、SABU監督の映画などでよく演じていたのですが、神田は『何で?』とわからないまま時間が過ぎていき、最後に全てのことに気づかされていくという流れになっています。『ああ、あいつだったのか!』と気づいた時の感情を表現するのがものすごく難しそうだなと思いました」
岡田「攻めている作品というのが第一印象でした。そのあとでWOWOWだと聞いて、『だからこんなに攻める作品ができるんだ』と納得し、参加したいと思いました。堤さんとご一緒したかったという点も大きかったです。また、堤さんと同様で、とにかく本が面白かったに尽きます。全話読んでからすごく良くできた脚本だと思いました」
――昨品におけるリアリティについてはどう思いましたか?
堤「人間は多面的で、いくつもある顔のどの部分で他人と接しているかで反発したり、仲良くなったりすると思うんです。つまり立ち位置によっても変わるんじゃないかと。もしかしてある人があまりにも無能だったとしたら、僕も『ハゲ!』と思わず言ってしまうかもしれない。相手をもっと怒らせるようにわざとそうしむけていたとしたら恐ろしいなと思いました。
僕は本当に天使のような人は1人もいないと思っています。人間は必ずしもきれいごとだけで生きているのではなく、人を押しのけたりする競争社会に自分がいるということを、自覚しています。だからこの話も決して正義と悪に分けられる完全懲悪の話ではありません。
たとえばすごく腹の立つ上司が、実は家に帰ったらすごくいいお父さんかもしれないし、僕らが知る世の中で起きていることも一面的なことしかわからない。見る角度が違えば人の見方も違うというのはドラマの基本ですけれど。鈴木おさむさんは神田のモデルがいると言っていましたが、そういう意味でもリアルなのかもしれない」
岡田「鈴木おさむさんが関わっているから、バラエティ番組の世界って本当にこうなんだろうなと素直に受け止めてしまい、バラエティを見るのが少し怖くなりました。ドラマを観てくれた人もそういうことも感じるのかなと。
本当にこのドラマに出てくる人は黒や白じゃなくてグレーな人たちなんです。いい顔している時と悪い顔をしている時がありますが、あまりリアルすぎてもつまらないのかなとも思います。エンターテインメントですが、そのギリギリのところをお芝居で出せたらいいなと思いました」
――堤さん演じる神田は、最初はいい人だったけど、売れっ子プロデューサーになってからだんだん人が変わっていきました。その変化を演じる上で気をつけたこととは?
堤「神田はあっというまに嫌なヤツになるんです。でも、すごくいいお父さんが急に悪人になるような変わり方ではないので、変わってしまうけど、根っこはこっちなんだというものをもっていたいと思いました。そもそも神田がやっていること自体がせこいんです。新人に罵声を浴びせたり、その小物感を出すのが難しかったです(苦笑)」
――岡田さんはX役についてどうアプローチしていきましたか?
岡田「最後まで行くと見方は変わりますが、最初はすごいキャラクターだと思ったし、今まで演じたことのない役どころだったので興味が湧きました。演じるにあたり、最後に至るまでで段階を踏めたらいいなと思いました」
――『プリンセス・トヨトミ』で共演されて以降、プライベートでも交流されているそうですが、今回の現場で気づいた新たな一面があれば聞かせてください。
堤「意外な面はないですね。お互いにすでにさらけ出してるから。そうですねえ。彼は一見、人と接するのが苦手そうだけど、実はお酒を一緒に飲むのが好きという点とか?」
岡田「それはもう知られています(苦笑)」
堤「意外とおとなしそうなイメージがありますが、そんなことはないです。楽しいし面白いし、いじりがいがあります」
岡田「僕は今回、芝居で堤さんをいじり倒してやろうという気で臨ませていただきました 」
堤「岡田くんのことはいじりたくなるんですよね。それに30くらいから逆にだんだん落ちついてきて、どんどん幼児化していくんだよ。僕は完全にそうだし、そっちの方が楽しかったりするので」
岡田「僕が知ってる堤さんは裏表がなくてまったく変わらないし、親戚のおじさんみたいです。たまにスタジオでお会いして『おいちゃん!』と言っちゃったりしますが、一回誰かスタッフさんからにらまれたことがあって、思わず逃げ出しました。また、堤さんが本当に怒っている姿は見たことがないです」
堤「仕事では怒らないけど、三歳児の娘にはマジでキレたことがあります。『もういい!』と怒って車に乗って家を出ていったんです。行くあてもなかったし、渋滞にハマってなかなか戻れなくなって。戻ってきたら『どこへ行ってたの?なんで?怒ったから?ふーん』と言われて。自分の小ささに呆れました(苦笑)」
岡田「すごいなあ」
堤「でも久しぶりに岡田くんと一緒にやれて嬉しかったです。やっぱり大変な世界だし、一緒に仕事ができるのは、彼も僕も一生懸命やってきた証拠ですから。これから30代になってもっともっといい役者になるだろうし。なんか子どもができるとおじいちゃんみたいな気分になって、人の成長が楽しいんです」
岡田「僕も堤さんのことを親戚のおじさんなんて言っていますが、僕にとっては大先輩なので、お仕事ができて本当に嬉しかったです。だから最初からフルパワーでやらせてもらいました」