天海演じるマダム・マンブルチュークは一番難しい役かも

――アニメ映画初出演となった小日向さんはいかがでしたか。

初めてとは思えないほどパワフルでしたね。ちょうど天海さんと別のお仕事で同じ現場をご一緒されていて、アフレコに入る前に色んなアドバイスを受けていたみたいで、収録に臨んでいただいていた時は、最初からスムーズにいきました。

――そんな天海さんらを抜てきされた経緯はどういったものだったのでしょうか。

やっぱりマダム・マンブルチュークとドクター・デイは重要だと思っていて。ピーターとメアリの2人とマダム・マンブルチュークとドクター・デイの2人は登場するシーンも多いので人物のイメージと俳優さん方の声をイメージをしながら考えていきました。マダム・マンブルチュークは幅の広い演技が必要になってくるので、ひょっとしたら一番難しい役と言えそうな面もありました。

――(マダム・マンブルチュークは)優しいところも怖いところもありますものね。

裏の顔と表の顔があって。でも上品でないといけないし、チャーミングなところもあるし、滑稽な感じの演技もしなくちゃいけない。そうすると、すごく難しい役になると思っていたんですけど、「天海さんだったら」と思い立って、「是非ともやっていただけないか」とお願いしました。快諾していただき、アフレコ時はもう本当にノリノリでやってくれましたね(笑)。実際に声を聞いても(普段の)天海さんの声には聞こえないですし、本当にすごい。小日向さんが演じたドクター・デイもコミカルなキャラクターですが、エンドア大学の人たちは皆本気で一生懸命なんです。

大竹の熱演でシャーロットが力のあるキャラに

――確かに魔法や実験に対しては真面目な一面も見られますね。

そうです。自分がやろうとしていることに対しての信念をもったキャラクターたちで、ちょっとでもコミカルにやろうと意図してしまうと何かシラケてしまうだろうなと思ったり。ドクター・デイは少年を何か他のものに変えてしまう変身実験のような怖いこともやっているんですが、それで世界征服を目論むとかではなくて。それも生徒たちや学校のためになると思ってのことだし、彼らは彼らの正義をもって行動しているんです。

――悪意があってやっている訳ではないですものね。

彼らは彼らの正義があるんだけど、メアリたちにとってみればすごく迷惑なことをやっている(笑)。そういう中で、メアリとピーターが若い力でまっすぐ進んでいくような話にしたくて。だから2人はすごく純粋な子どもたちであってほしいと思いました。それは声もそうだし、作画する時も気をつけたところですね。

――それでは4人の他のキャストさんはどうでしたか。

皆さんそれぞれ上手いし、(シャーロットを演じる)大竹さんは「何十年も赤い館に住んでいる感じを出してください」「メアリにとってはホームなので包容力のある感じを演じてください」と言ったら、もうバッチリ。シャーロットは、登場しているシーンも多くはないんですけども、とても大事な役どころなんです。言葉数も決して多くはないですから、物語の中で存在感が出せるか不安もあったのですが、大竹さんがパッと演じられるだけで、すごく力のある登場人物になりました。何十年という時間の厚みとメアリに対する優しさを短いフレーズで表現されて……いやぁ本当にすごいです。

実は声優・大谷育江やLynnも子猫役で出演

――どの演者にも共通してアドバイスされたことはございますか。

「楽しんでください」ということですね。楽しい作品にしたかったので、そういった意味では、皆ノッて演じていただきたかった。杉咲さんも声としては初主演だということもあって、最初はとても緊張されていましたが、それでも「楽しんで」と言うとその通りにやってくれましたね。メアリになりきって「一緒に魔法の世界を冒険しているような気持ちで演じられた」と言ってくれました。終わった時には「もうあの世界にはいないんだ」と呆然とされていたくらい本当にのめり込んで演じてくれましたね。

――なるほど。

あと、声に注目していただいているということで、実はティブを演じているのは(『ポケットモンスター』シリーズのピカチュウ役などで知られる)大谷育江さんなんです。ティブも演技をしっかりしなければいけない役でしたが、大谷さんはさすがで、バッチリですごかったですね。猫だから、あんまり"キャラクター"になりすぎるといけなくて。普通の猫として描かなくちゃいけなかったんですけど、猫性とキャラ性の……ここはもうちょっと猫っぽく、ここはもうちょっとキャラクターっぽくというバランスを上手くコントロールして演じていただきました。そこは大ベテランの声優さんである大谷さんの力に助けられましたね。ギブも声優のLynnさんがやっているんですけど、2人のコンビネーションは良かったですね。

天海の演技を真似る杉咲に要注目

――最後に、この役者さんのこの演技には注目! といった部分をアピールしていただければと思います。

そうですね……いっぱいあるんですけど、杉咲さん演じるメアリがマダム・マンブルチュークのモノマネをするシーンです。

――あの場面はメアリがちょっと調子に乗っている感じもすごく可愛くて素敵ですね!

実際に天海さんの声を聞いて、真似をしているんですけど、可愛いんですよ。あの場面でも、おどけて「イヒヒ」と笑いますし。さじ加減が難しいシーンですが、あそこは是非、声の演技に注目していただきたいですね。

■プロフィール
米林宏昌
1973年7月10日生まれ。石川県出身。金沢美術工芸大学在学中に似顔絵を描くアルバイトをしながらCMなどのアニメーションの制作を経験した。1996年、スタジオジブリに入社し『千と千尋の神隠し』(2001年)で初の原画を担当。その後も『ハウルの動く城』(2004年)、『崖の上のポニョ』(2008年)で原画を描き、2010年に『借りぐらしのアリエッティ』で初めて監督としてメガホンを取る。監督2作目となった2014年公開の『思い出のマーニー』は、第88回米国アカデミー賞長編アニメーション映画部門にノミネートされた。2014年にスタジオジブリを退社。本作は同時期に同社を退いた西村義明プロデューサーが、新たなアニメーション制作会社・スタジオポノックを設立した初長編映画となる。

(C)2017「メアリと魔女の花」製作委員会
photo by 河邉有実莉(WATAROCK)