独ダイムラーが欧州でディーゼル車300万台超の大量リコールに踏み切った。違法な排ガス操作の疑いは否定した上での自主的な動きだが、今後の展開を注視すべき状況だ。メルセデス・ベンツが好調な日本市場にも影響はあるだろうか。

ダイムラーのディーゼル車リコール問題は、日本にどのような影響を及ぼすのか

不正は否定、リコールの内容はプログラムの書き換え

独ダイムラーは18日、欧州でディーゼルエンジン(DE)車300万台以上を無償で修理(リコール)すると発表した。ダイムラーが販売したメルセデス・ベンツDE車のうち、欧州の排ガス規制である「ユーロ6」と、それ以前の「ユーロ5」に対応したものが対象となる。

ダイムラーについては、5月頃からDE車で違法な排ガス操作をした疑いが表面化していた。ダイムラーは不正を否定しているものの、無償修理の内容についてはソフトウェアの更新でプログラムを書き換えるものとしている。リコール費用は2億2000万ユーロ(約280億円)だ。

それにしても、欧州のベンツDE車で300万台以上というリコール台数は、ダイムラーの世界販売台数(2016年実績)に匹敵する規模だ。ダイムラーのディーター・ツェッチェ社長は、「世の中のDE車を巡る議論が不安にさせているDE車のドライバーを安心させる措置」との声明を発表している。

DE車の排ガスの有害物質である窒素酸化物(NOx)を減らせるよう、排ガス制御装置などのプログラムを書き換える自主的な措置を進めるとダイムラーは言うが、この背景には欧州で進む厳しい排ガス規制がある。欧州の排ガス規制はユーロ6のステージ2に入っており、2020年までにさらに強化される。特にDE車のNOxについては、ユーロ5の1キロあたり排出量0.18グラム以下から0.08グラム以下へと大幅な規制強化となり、欧州メーカーから「厳しすぎる」との声が上がっていたのも事実だ。

欧州でDE車の排ガス不正疑惑が再燃

フォルクスワーゲン(VW)の米国におけるDE車排ガス規制検査不正が表面化したのが2015年9月。VWは不正を認めて米国で2兆円超の制裁金を課され、DE車不正は世界で1100万台規模に広がった。

欧州では、VWだけでなく仏ルノーなどにも疑惑の目が向けられたが、その後は沈静化していた。ところが、ここへきてDE車排ガス不正疑惑が再燃したのだ。オランダ検察当局がスズキのDE車の調査に入ったが、これはフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のDE供給搭載車だ。

ルノーなどにも疑惑の目が向けられたが、事態は沈静化していた

ダイムラーと言えば、世界で初めてディーゼルエンジンを乗用車に搭載したメーカーである。今回の大量リコールは、不正はなく自主的なソフトウェアの更新だとしているものの、排ガス規制を逃れるため、違法ソフトウェアを搭載していたとの疑いは晴れていない。