トヨタ自動車の新型「カムリ」発表会では、「セダン復権」という言葉が掲げられ、メディアでも広く紹介された。しかし世界的に見れば、セダン人気はまだまだ根強い。そんな中、なぜトヨタはこのメッセージを打ち出したのか。主要国の自動車シーンを思い出しながら考えた。
セダン全盛期は過ぎた? 日本の現状
7月10日の新型カムリ発表会では、昨年発足したトヨタ・ミッドサイズビークルカンパニーのプレジデントである吉田守孝氏が、SUV人気が高まる中でセダンを復権させたいとアピールした。
そのためにトヨタは、プリウスで初採用した「TNGA」コンセプトをプラットフォームのみならずパワートレインにも投入し、オールニューTNGAの第1号車としてカムリを開発。ミッドサイズビークルカンパニーが手掛けた初の新型車でもあり、「前例のない変革」であることを強調していた。
確かに今の日本でセダンは売れていない。2016年の新車乗用車販売台数ベスト10は、軽自動車5台、登録車5台という内訳で、前者はハイトワゴン・スーパーハイトワゴンとハッチバック、後者はハッチバックとミニバンのみであり、セダンは入っていない。
トヨタで言えば、「カローラ」や「マークⅡ」などが上位に入っていた1980年代とはかなり様相が異なる。もっとも、ここにはSUVもランクインしていない。
日欧は例外的な市場とも言える
では欧州はどうか。同じ2016年のデータで見ると、SUVは8位に日産自動車「キャシュカイ」(日本では旧型をデュアリスとして販売)、10位にルノー「キャプチャー」が入っており、残りはすべてハッチバックである。こちらにもセダンの姿は見当たらない。
ここだけ見ると、確かにセダン凋落というイメージが思い浮かぶ。しかし、昨年日本で売れた新車乗用車は約497万台であり、8424万台と言われる世界販売台数の6%にも満たない。欧州全体では1708万台となるものの、こちらは29カ国の合算である。
日本の自動車業界は、とかく欧州の動向を気にする。たしかに欧州は自動車発祥の地であり、プレミアムブランドをはじめ名門が数多く存在する。しかし世界的に見れば、欧州はやや特異なマーケットということもできる。
売れ筋は前述のとおりハッチバックであり、この傾向は1970年代から変わらない。ワゴンも根強い人気がある。しかしそれ以外の国や地域で、この2つのボディタイプが支持されている場所は少ない。日本が数少ない例外と言ってもいいぐらいだ。