――第1シーズンが始まってから6年がたちますが、そんな糸村に何か変化はあったのでしょうか?

どうやらその様子がない(笑)。でも、その変わらなさが面白いと思えるんです。糸村の奔放さは、他で務めさせていただいているどんな役にもない部分。この唯一感こそが6年をへて僕がより強く感じてしまっている愛着なのかもしれません。

――それは、この第4シリーズが終わったときにも、変わらないのでしょうか。

(しばし黙考の後…)変わらないような気がします。大きな山の地層を調べたら、大昔は海の底にあったことが分かるなんて話がありますが、その変化は僕らには感じられないゆっくりとしたもの。もちろん、長い目で見たら糸村にも何かの変容はあるかもしれませんけど、1クールの時間の中で彼が大きく変化するようなことは、少なくとも表立ってはないと思います。でも例えば、セカンドシーズンで同僚の死を目の当たりにした糸村がいて、それ以前とそれ以降はなんとなく違うような気がしてるんです。そうしたことが今回のシリーズの中で起きないとも限りません。1クールという時間の持っている可能性の1つだと思います。

――今作では共演者も一新されました。まず、バディを組む神崎莉緒役の栗山千明さんの印象を教えてください。

他局で一度ご一緒させていただいて、その時は上司と部下という関係だったんですが、演じている栗山さんはとてもクレバーで冴えもあります。今回お食事も御一緒したんですけど、そこでは現場で拝見していたようなお人柄とはまた違って、かわいらしさやユーモアもある、とても気さくな方で新たな魅力を感じました。今回の莉緒という女性は、才気走ってもいるんですけど、どちらかというと、自分の感情を押し隠さないようなキャラクターで、彼女のもつ一面が反映されるにはとても面白い役柄だと思いました。どこかファーストシリーズの貫地谷しほりさんと組んでいた時のバディの再来という感じもあります。

――他の共演者の皆さんを含め、現場の雰囲気はいかがですか?

とても良いです(笑)。戸田恵子さんは以前『お水の花道』(フジテレビ系)でご一緒したこともあって何の不安もありませんし、永井大くんはびっくりするくらい場を盛り上げてくださるんです。段田安則さんは今回が初めてなんですが、昔、劇団「夢の遊眠社」の作品の中の一本をビデオで繰り返し見ていた事があって、その中でとても重要な役を演じていらしたのが段田さんだったんです。ですから、段田さんと相対しているときは、20歳そこそこの小僧の自分に戻っている気分です。そして村木役の甲本雅裕氏の存在は「遺留捜査」になくてはならない、大切な要素。彼がいなければ始まりません(笑)。現場の空気はとても和やかに過ごせていますし、お芝居のやりとりもとても円滑です。

――前クールの『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』(フジ系)では、制作発表会見やさんまさんの番組祭り特番で、高嶋政宏さんに的確なツッコミを入れているのが印象的でした。今作で、ツッコミがいのある共演者をあげるとすれば、どなたですか?

しいて申し上げるなら、栗山さんなのかもしれません。あのクールビューティーなルックスからは想像できない天然な発言をポロッとおっしゃったりするので、たぶんチームの中でもマスコット的な存在になっていくんじゃないかなと思います。

『遺留捜査』(テレビ朝日系、7月13日スタート 毎週木曜20:00~)
上川隆也演じるマイペースで空気を読まない刑事・糸村聡が、遺留品から事件を解決していく姿を描くもの。連ドラ第4シーズンとなる今回は、舞台を京都に移し、難事件を鮮やかに処理する"火消し"と呼ばれる「特別捜査対策室」に加入する。
(左から)永井大、段田安則、上川隆也、栗山千明、戸田恵子、甲本雅裕=テレビ朝日提供

――『遺留捜査』は、これまで水曜21時、木曜21時と放送してきて、今回の木曜20時の放送で、テレビ朝日ゴールデンタイムのドラマ枠をすべて制覇したことになります。

流浪の番組です(笑)。番組の特性自体がマイペースな糸村の個性とリンクしているんでしょうか? 細かいことは分かりませんが、そうした判断ができるような素材であったということなんでしょう。ただ、僕は枠が変わるから何かを変えるという思いを持ち込むことはありませんし、『遺留捜査』は『遺留捜査』でありつづければ、枠が移動したことの意味は、後から付いてくるんじゃないかなと思います。

■プロフィール
上川隆也
1965年生れ、東京都出身。中央大学経済学部在学中の1989年に演劇集団キャラメルボックスに入団し、1995年にNHK70周年記念日中共同制作ドラマ『大地の子』で主役の「陸一心」役に抜てき。その後も、NHK大河ドラマ『功名が辻』、『エンジェル・ハート』(日本テレビ) 、土曜ワイド劇場『作家六波羅一輝の推理シリーズ』(テレ朝)の主演などで活躍している。