今まで全く問題なかったのに……

10代後半~20代前半くらいまでは、特に恋愛においては誰でも情動不安定になることは多いものです。メンヘラと思われるような行動をとる場合も多々あるかとは思いますが、それで大きなトラブルを引き起こしていなければ問題はありません。ただし、周りに迷惑がかかるようになるとちょっと問題です。

今まで全く問題なかったのに、付き合った男性によってメンヘラになってしまった場合は、よっぽど相手の男性がひどい付き合い方をしたのでしょう。例えば、浮気を繰り返す、自分の親友や近しい友達と浮気をしたり付き合ったりした、何股もかけられていた、ひどい振り方をされた……などなど。そうなると、男性不信や人間不信となって、対人関係が不安定となり、さらには感情も不安定となり、自己否定感が強まります。

そうすると「またこの人は自分の前からいなくなってしまうのではないか」「またひどいことをされるのではないか」などといった不安感や見捨てられ不安が高まり、相手に依存し、束縛して自分の思い通りにコントロールするようになります。

付き合う男性へのアドバイス

一時的にメンヘラのような状態になっても、時間がたつにつれて、前述したような症状が治まってくればいいのですが、なかなか改善せず、次々と相手を変えるなどして、さらに状況や状態が悪化してしまう場合もあります。

相手と信頼関係を築き、信用や安心感を得られれば、メンヘラの方の心は安定します。男性は、このような女性と付き合うと大変なこともたくさんあると思いますが、途中で見捨てないこと。離れたりくっついたりと、相手を振り回してしまうのは良くありません。自分が好きになった相手、選んだ相手であり、"この人をなんとかしてあげたい、救いたい"と思うのであれば、何があっても最後まで本人の面倒を見る、くらいの覚悟でお付き合いをしてください。

ただし自分では手に負えない場合は、精神科へ相談するようにしましょう。精神科では、BPDそのものに効く薬はないため、気分安定薬を中心とした薬物療法と、各種精神療法を組み合わせて治療を行います。精神科を受診したからといってすぐに治るものではなく、服薬とカウンセリングを併用しながら環境調整も行っていき、ゆっくりと時間をかけて治療していく場合がほとんどであると思います。

※本稿は『あなたの周りの身近な狂気』(高木希奈著 / セブン&アイ出版)を参考にしています
※写真と本文は関係ありません


取材協力: 高木希奈(タカギ・キナ)

精神保健指定医、日本精神神経学会認定専門医、日本精神神経学会認定指導医、日本医師会認定産業医。
長野県出身。聖マリアンナ医科大学卒業。現在は、精神科単科の病院で精神科救急を中心に急性期治療にあたっている。また、産業医として企業にも勤務経験あり。
著書に『間取りの恋愛心理学』(三五館)、『あなたの周りの身近な狂気』(セブン&アイ出版)、『精神科女医が本気で考えた 心と体を満足させるセックス』(徳間書店)、電子書籍『女医が教える飽きないエッチ』(App Store、Kindle)など。趣味は、海外旅行とスキューバダイビング。オフィシャルブログはこちら。