前回は「子どもの成長を促す公園のメリット」を紹介した。でも、「公園なんて、どこも同じでしょ?」「家から5分の公園しか行かない」、という人もいるのでは? 子どもの成長に大いに役立つ公園は、遊具の種類や面積、形状など特長がそれぞれ異なり、まさに"十園十色"。ここでは、子どもの運動神経を育む運動教室「リトルアスリートクラブ」代表トレーナーの遠山健太さんに、公園選びの極意を教えてもらった。
「最近は『公園に行くと汚れるから嫌』『ケガをしないか心配』といった理由で、あまり公園には行きたくないパパ・ママも多いですが、それはすごくもったいないこと」。
そう話す遠山さんは、これまで都内を中心に200以上もの公園を巡り、スポーツトレーナーとしての観点で"公園が子どもにどのようなメリットがあるのか"、独自に調査を行ってきた。その結果、運動神経はもちろんのこと、想像力、社交性、そして自信の向上など、子どもにとって多方面の成長が期待できることがわかったという。
とはいえ、一口に公園といっても、その数は都内だけでも7,800以上に。もちろん、それぞれに遊具、施設、面積などが異なるので一つとして同じ公園は存在しない。そうなると知りたくなるのが「どんな公園を選べばいいの?」という疑問。スペシャリストの遠山さんは、次の点に着目して公園を選べばいいと語る。
遊具で選ぶなら「複合遊具(アスレチック)」
まず、一つ目に注目したいのが「遊具」。どこの公園にもある"鉄板遊具"こと「滑り台」「ブランコ」「うんてい」は、いずれも不安要素が高い(バランスが不安定)ので、その分、バランス感覚やその為に必要な脊柱周囲の筋群が自然と養われるのでおすすめとのこと。中でも「うんてい」は、握力のほか空間認識能力も身に付けられるとあってぜひとも子どもに遊ばせたい遊具だという。
遠山さんが公園選びのポイントにしてほしいと話すのは、そんな子どもの成長に効果的な"鉄板遊具"が融合した「複合遊具(アスレチック)」。「吊り橋やジャングルジム、クライミングが楽しめる壁など多彩な遊具が一体となっている分、運動面で相乗効果が得られますし、遊具を進んでいくためには考える力も必要とあって思考力も鍛えられます」とのことだ。
「自然」「スペース」も公園選びの重要ポイント
次に、おすすめしたいのが「自然」。林のように木々が生い茂るスポットや、「〇〇庭園」のように回遊式の庭園が併設した公園もある。遠山さんは「ただ歩いて回るだけでもいいですし、あとはドングリを拾ったり、木登りをしてみたりと、自然もさまざまな楽しみ方があります。子どもの成長においても、遊具で遊ぶのとはまた違った相応のメリットが得られますよ」と話す。
そして最後に着目したいのが「スペース」。運動場や原っぱの広場のことだ。できれば、前述の「複合遊具」「自然」とセットになっていることが望ましいという。「親子で鬼ごっこをするのがおすすめです。鬼ごっこは、走力はもちろんのこと、スピードの緩急、反射神経、急な方向転換、そして先を予測して行動する能力も必要になりますので考える力が養われます。その点、自然や複合遊具とセットになった公園なら、より遊びの充実度が増し、それに見合った効果が得られるんです」
中には、この3つのポイントがすべて揃った「複合型公園」もあるので、近所で探してみるといいだろう。
遠山さんがおすすめする都内の公園5選
これらの点を踏まえ、遠山さんが太鼓判を押すのが下記の5つの公園だ。
「肥後細川庭園/旧:新江戸川公園」(文京区)
園全体が池泉回遊式の庭園になっている公園。子どもと一緒に、美しい景観の園内を散策するだけでもいい運動になる。
「東板橋公園」(板橋区)
小規模ながら動物園や芝生の広場を併設しているほか、遊具のバリエーションも豊富で充実度が高い公園。
「荒川自然公園」(荒川区)
荒川区で最も広大な公園。アスレチック、池、昆虫園などを有する複合型の公園で、交通ルールが学べる交通園があるのも魅力。
「行船公園」(江戸川区)
無料の動物園や和風庭園を有する公園。遠山さんのおすすめは、遊具ゾーンにある斜度が40度近くもある急な滑り台。スリルも満点で、遊び甲斐があるという。
「甘泉園公園」(新宿区)
新宿区内とは思えないほど、美しい景観が楽しめる回遊式庭園。多彩な遊具と広いスペースの広場が併設されているのも魅力のひとつ。
都内だけでもバリエーション豊富な公園がそろうとあって、遠山さんは"公園のはしご"をおすすめする。初めての公園に行くたびに、子どもは新しい刺激を受けるので、休日は自転車を使って2~3か所の公園巡りを楽しんでみるのもいい。いろいろな公園をまわって、わが子にぴったりな"推しパーク"を見つけてみよう。
筆者プロフィール: 遠山 健太(とおやま けんた)
ウィンゲート代表取締役、健康ニッポン代表理事、「リトルアスリートクラブ」代表トレーナー。1974年、米国ニューヨーク生まれ。ワシントン州立大学教育学部初等教育学科卒業。東海大学スポーツ医科学研究所研修員を経て、2004年より全日本フリースタイルスキーチームフィジカルコーチを務め、主にジュニアアスリートの指導を担当する。現在は学研プラスと共同で立ち上げた子ども運動教室「リトルアスリートクラブ」を展開。また都内の公立小学校へ「文部科学省新体力測定結果を用いたスポーツ適性診断」の特別授業も行っている。著書は「スポーツ子育て論」(アスキー新書)、「運動できる子、できない子は6歳までに決まる!」(PHP研究所)、「ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本」(学研プラス)など多数。