誰にだって、「懐かしい味」ってものがある。本当にお腹が空いたときや、ほっと一息つきたいときにこそ、そんな味を思い出して食べたくなるもの。昭和生まれのみなさん、都会の真ん中でふとセンチメンタルな気分になったときにはここにいらっしゃい! そのお店の名は「レストラン はやしや」(東京都新宿区)。新宿の繁華街に店を構えて24年の老舗洋食店だ。今回は同店の名物メニュー「昭和プレート」を食べに行ってきた。

「レストラン はやしや」(東京都新宿区)

不夜城・新宿歌舞伎町のすぐ近くにある老舗洋食屋

お店は、JR新宿駅の東口を出て徒歩数分。「スタジオALTA」の間裏にある「新宿サンパークビル」の5階にある。ビルの入り口自体はALTA裏からも入れるし、反対側の靖国通りからも入ることができる。どちらにせよ不夜城・新宿歌舞伎町のすぐ近く。そんなリスキーな匂いのする場所に、昭和の懐かしい味が本当にあるのか!? 怖い人出てこないよね? とにかく午前中の開店前から突撃! おじゃましま~す。

「レストラン はやしや」店長の小林幸雄さん

「ああ~、こんにちは。ようこそいらっしゃいました」

対応してくださったのは、店長の小林幸雄さん。なんだ、めちゃくちゃ優しそうじゃないか! よかった~。っていうか、歌舞伎町界隈への偏見を反省。そういえばビルの入り口にもメニューサンプルが賑やかに並んでいたのだった。「店は昭和のデパートの上にある大食堂をイメージしているんですよ」と話す小林店長さん。確かに、昔のデパートの一番上の階にあったような懐かしさがありますね?

スタジオALTA裏から行くとエスカレーター下で早くも「昭和プレート」に遭遇

ちなみに靖国通り側入り口。太鼓の音が空腹に響くぜ

昔のデパートの一番上の階にあったような懐かしさが食品サンプルから感じられる

小林店長さんは、東京都・池袋のご出身。8年前から店長を任せられているのだとか。それにしても、お店自体の創業は昭和24(1949)年からだというから、当時にしては相当モダンなレストランだったのでは?

そんな筆者の質問に、「そうみたいですね。創業者がアイスクリームを好きだったみたいで、お店でアイスクリームを手作りしたり、寿司とか色んなものを用意したりしてて、学生さん向けになんでも気楽に食べられる店にしたかったみたいです」とにこやかに答えてくださった。

食べ物について語る小林店長さん。明るくて優しい雰囲気がお店の魅力を物語っている

現在お店がある5階は、もともとディスコのフロアだったそうで、同店は下の階で営業していたのだが、時代と共に移り変わってきて現在に至るそうだ。アイスクリームにディスコ、やはり東京には昔から海外の文化がいち早く集まっていたんだろうねえ。

ちなみに以前の店名は「三平食堂」だったそうで、途中から創業者の屋号であった「はやしや」になったとのこと。たまたまそれが落語家の林家三平と同じ名前になったということで、創業者は初代の林家三平師匠と交流もあったという。昭和ならではのエピソードで、どうもすいません。

ビルに入る前の想像以上に広い店内にビックリ

店内は120席あり、窓側に座ると靖国通りを行きかう人々や街並みを眺めることができる。きっと、昭和の時代から平成の現在に至るまで、色んな人がここを訪れて物思いに耽りながら窓の外を眺めてきたに違いない。

眼下に広がる新宿の街並み

「今も学生さんが来ることも多いし、家族連れなんかも多くて、幅広いお客さんが来ています。それと、2世代で来てくれるお客さんもいるんですよ。親御さんが学生の頃に来ていて、子どもも来てたりとか。今は東京を離れている人が、わざわざ九州から食べに来てくれたりもします」と小林店長さん。自分の学生時代の思い出になっている人も多いんだろうね~。

落ち着いた雰囲気の店内はとてもくつろげる

いよいよ「昭和プレート」とご対面

広くて落ち着く雰囲気の店内で、小林店長さんのお話を聞いてたらなんとなくノスタルジックな気持ちになってきた。と言いつつ、実はめちゃくちゃお腹空いています! と、いうわけで「昭和プレート」(税込1280円)お願いします!

以前から2品くらい入ったコンビプレートはあったそうだが、小林店長さんが店長になった際に、小さい頃の「こんなものを食べたかったなあ」という、食べたいものへの欲求を反映させてメニューにしたのが「昭和プレート」なんだという。

某番組で紹介されたことで大人気のオムライスもおすすめメニュー

厨房でてきぱきとサーモンをソテーしたり、フライパンでハンバーグを焼いたり、豚肉を焼いたり、エビフライを揚げたりしている小林店長さん。うわぁ~、すでに美味しそう。

華麗な手際に見惚れていると、「カレーとハヤシを選べますけど、どうします?」と聞かれる。う~ん、店名からしても、めったに食べないということを考えても話題的にはハヤシをチョイスするのがノーマルな取材という気がするが、ここはあえて……、カレーでお願いします! なぜならカレーが好きだから。カレー・イズ・ジャスティス。みんな好きだもんね。

ハンバーグをしっかり手ゴネ中の小林店長さん

そんなこんなで「昭和プレート」完成! うわ~、本当に昭和って感じ。なんでかわからないけど、平成でもなければもちろん明治でも大正でもなく、これはまぎれもなく子どもの頃デパートの食堂で食べたお子様ランチの大人版っていう気がする。ガッツリ昭和生まれの筆者が言うのだから間違いない。でも、平成生まれでも何となく懐かしく感じるのではないだろうか? そんなビジュアルだ。

「昭和プレート」としか名付けようがないでしょう、これは

では早速、カレーをご飯にとろ~り。うん、芳醇な香りが漂って食欲をそそる。ライスの山の隣にある肉厚なハンバーグにも半分かけて、ハンバーグカレーに。ああ~、このカレー、日本国民もれなく全員が好きなやつ。辛すぎず、甘すぎず、ちょうど良い加減の中辛加減。だけど優しいだけじゃなく、口に入れて少しするとジワジワとスパイスの味が広がってくる味わい深さがある。ちなみにポークカレー。お米の炊き具合も少し固めで見事にマッチ。そしてハンバーグも手作り感たっぷりの大きめサイズ。いわゆる肉汁ジュワーっていうハンバーグではなく、ガッツリしたうま味ある肉の塊といった感じで食べごたえあり。

どっちにしようか悩んだけど、ここはカレーをチョイス

カレー・meetハンバーグって嬉しすぎるよね

ポークソテーのお肉も柔らかくて美味しい。さらにサーモンムニエルは、控えめな味付けでサーモンの風味を生かしており、しっとりとした身が口の中でほぐれる柔らかさ。刺身用のサーモンを使用しているそうで、なんとも贅沢。

ポークソテーのお肉も柔らかくて美味しい

ちなみにお酒のメニューも豊富で、ワインは通常で37種類をそろえており、食事のメニューを頼んでおかずを食べながらお酒を楽しむ人も多いのだとか。確かにこのサーモンムニエルはワインに合いそう。実際、取材当日も午前中からワインと共に食事を楽しんでいるお客さんがいた。イカす!

見よ! この豊富なワイン。37種類を常備。「ワインを覚えるために飲んでいたらいつの間にかワイン好きに」と小林店長さん

さてさて、残るはエビフライをタルタルソースにつけて。コレ、衣が薄めで身が太いですね! 「そうでしょ? 海老が太いと嬉しいじゃないですか? 衣ばっかりだとガッカリしちゃいますもんね」さすが、小林店長さん、食いしん坊の気持ちをわかっていらっしゃる。

エビフライ、大きくてプリップリで美味い

そんな小林店長さんが一番好きな食べものってなんだろう? 「ビーフシチューですね。この仕事を始めたときに、"こんなに美味いものがあったのか"って思いました」とのこと。見ればシチューの種類も多い。ゴロっと肉が入った「角煮シチュー」もオススメだ。シチューが好きだから昭和プレートにもハヤシを加えたらしい。そうだったのか!? だったらやっぱりハヤシにすべきだったかも? まあいい、それは次のお楽しみにとっておこうっと。いやあ~ご馳走さまでした。

小林店長さんのおすすめ、というより大好物の角煮シチューも食べてみたい

「本当に洋食が大好きなんですよ」と、終始満面の笑顔で対応してくださった小林店長さん。聞いているこちらもなんだか嬉しくなってしまった。そんな小林店長さんが考案した食べることへの憧れ、楽しさが伝わってくる「昭和プレート」。昭和生まれの人も、もちろん平成生まれの人も、変わりゆく新宿の街並みを眺めながらゆっくり食べてみてほしい。

●information
レストラン はやしや
住所: 東京都新宿区新宿3-22-12 新宿サンパークビル 5階
営業時間: 10時30分~23時(L.O.22時15分)
定休日: 無休