おなかの赤ちゃんにはすくすくと育ってほしいもの。しかし、時として流産は起こってしまう。それは自然なことではあるが、何度も繰り返してしまう場合にはどうしたらいいのだろうか。また、流産後の妊活再開に適切な時期はあるのだろうか。順天堂大学医学部附属練馬病院産婦人科長の荻島大貴先生にうかがった。

流産は妊娠のうち15%程度に起こるとされている

「習慣流産」は普通の流産と違う?

流産とは、妊娠22週未満で妊娠が終了してしまうことと定義されている。普通の自然流産の多くは妊娠12週までに生じ、その多くが受精卵の染色体異常が原因とされている。妊娠のうち15%程度に起こるとされ、誰にでも可能性がある。

その中で、3回以上繰り返す流産は「習慣流産」と定義される。1回の流産でもショックは大きいのに、立て続けに起こってしまっては精神的な苦痛は相当なものだろう。この習慣流産を起こしてしまっている時はどうすればいいのだろうか。

原因はひとつだけではない

「習慣流産は病気の範疇(はんちゅう)です。まずは不育症の検査を行い、原因を探ります」と荻島先生は言う。ちなみに不育症というのは、妊娠はするがそれを継続できないことを言う。原因究明には、膠原病(こうげんびょう)などの自己免疫疾患、血液凝固異常、夫婦の染色体異常などの検査を行う。それらの検査から病気が見つかれば、原疾患の治療を行い、その後の妊娠の継続につなげられることもあるという。

荻島先生は、「血液が凝固しやすい病気のため流産を6回繰り返していた患者さんが、薬での治療により、出産までこぎつけることができたという例もあります」と話す。まずは、産婦人科で相談をすることが大切と言えるだろう。

しかし、検査を行っても原因が分かるのは50%未満だという。原因が分からなければ、根本的な治療はできない。そうした状況であっても、高齢でなくそれまでの流産の経験が3~4回なら、次の妊娠が継続できる確率は60~70%あるという(『産婦人科診療ガイドライン 産科編2014』(編集・監修: 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会、発行: 日本産科婦人科学会)より)。

まずは産婦人科で相談を

流産後の妊活、タイミングはいつ?

「再度、妊活を始めたい」という時に気になるのはタイミングだろう。当然、自分の体内がどうなっているのか見ることはできず、心配は尽きない。実は、「いつから妊娠してもいい」という医学的な決まりはない。そのため、アドバイスは医師によって大きく異なることもあるという。

荻島先生は、「私の場合は、『一度ちゃんとした生理が来てから妊娠するようにしてください』と言います」と話す。その理由は2つ。ひとつは分娩予定日を算定するためで、もうひとつは子宮内の環境を考えて、とのこと。

分娩予定日は最終生理日から算定される。流産後に、再度生理が始まる前でも妊娠はできるが、そうすると予定日を計算できなくなってしまう。この分娩予定日は、赤ちゃんを待つための期待感アップのためだけでなく、赤ちゃんの健康管理をしたり、過剰医療を行わないためにも非常に重要な指数となる。また、生理がきたということは、子宮内での新陳代謝が一度行われたという意味でもある。「"環境が整いましたよ"というサイン」と、荻島先生も言う。

また、荻島先生は流産した人に対し、「流産はあなたのせいではありません」とアドバイスするようにしていると言う。自分を責めることなく、もしも流産を繰り返す原因があるのなら治療を行うなど、心身ともに労わることが大切になる。

※写真はイメージで本文とは関係ありません

監修者プロフィール: 荻島 大貴

1994年順天堂大学医学部卒業、2000年同大学大学院卒業。現職 順天堂大学医学部付属練馬病院 産科婦人科診療科 長・先任准教授。日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、日本婦人科腫瘍学会専門医・指 導医・評議委員、日本がん治療認定機構がん治療認定医、日本周産期・新生児学会周産期専門医、母体保護法指定医。練馬区を中心として城西地区の婦人科がんの診療と周産期医療を行っている。

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスにつづったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。