日本人の花粉症に罹っている割合は29.8%と、非常に多くの人が苦しんでいます(参考: 花粉症環境保健マニュアル)。特にスギが原因になることが多く、2~4月のスギ花粉の飛散シーズンはマスクをして出勤・通学する姿が全国的に観察されます。そしてあまり知られていませんが、猫も花粉症になると考えられています。
猫の花粉症はほぼ未解明
花粉症になると言っても、猫は人間ほど高確率で罹ってはいません。人の花粉症は長年に渡って花粉にさらされてきた結果、成人してから発症することもありますが、猫は平均寿命が15年前後であり、途中から花粉症になることは少ないです。多くは、生まれつき特定の植物に対してアレルギーを持っていて、その植物の花粉の飛散シーズンになると免疫が反応して症状が現れます。
それでは、日本の猫はやはりスギ花粉症が多いのでしょうか? 実は、猫の花粉症については驚くほど解明されておらず、どのぐらいの猫が花粉症になっているかすら明らかになっていません。
発症率は低い
花粉症の診断方法の1つである、皮膚に注射をして反応を見る"皮内テスト"や血液をとって測る"抗体検査"は、猫では有用性に疑問があります。診断はあくまでも病歴や身体検査、他の病気の有無を調べて、総合的に行われます。
特に重要なのは「毎年同じ季節に発症する」という病歴で、これがあると花粉症の可能性があるかもしれません。実際に診察をしていて、典型的な花粉症の猫に会うことは稀です。少なくとも人間よりははるかに低い発症率だと感じます。
猫の花粉症の症状
猫の花粉症の症状は、人の花粉症のような鼻水、くしゃみ、目のかゆみだけではありません。皮膚のかゆみや嘔吐など、多岐に渡ります。
また、猫は匂いで食欲が刺激されるため、鼻がつまると食欲がなくなってしまいます。単なる鼻づまりといえど油断できません。
猫の花粉症の対策
もし愛猫に対して花粉症の可能性が高いと感じたら、愛猫が花粉に触れる量を減らす努力をしましょう。外出を減らす、洗濯物を外に出さない、帰宅時に花粉を落とす、など、人の花粉症と同じ対策が有効です。
あまりに症状がひどい場合は炎症を抑える薬を使うこともできるので、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
まとめ
人の花粉症とは少し違いますが、猫も花粉症になることを覚えておきましょう。その原因となる植物は、春だけでなく夏や秋に花粉が飛ぶものもあります。毎年必ず同じ季節にくしゃみをしている猫は花粉症かもしれません。
外を散歩している野良猫も、春の陽だまりを楽しみながら、実は日本の花粉の多さを呪っているかもしれませんね。
※写真はイメージ
著者プロフィール: 山本宗伸
獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み帰国。現在は猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialistsの院長を務めている。ブログ nekopeidaも毎月更新中。