2017年4月3日、日本各地で新入社員入社式が開催され、各社の代表が新たな仲間たちに熱いメッセージを送った。本記事では、新入社員にかぎらず社会で働く上で参考になりそうな有名企業のトップによる入社訓示を紹介する。
ソフトバンク 代表取締役会長 孫正義氏
携帯電話などの電気通信事業を手がけるソフトバンク。昨年10月には、最先端技術に投資する10兆円規模の超巨大ファンド『ソフトバンク・ビジョン・ファンド』をサウジアラビアと共同で設立することを明らかにし、話題になった。同社代表取締役会長の孫正義氏は新入社員390人に対し、次のようなメッセージをおくった。
「我々が中心となって全世界のベンチャーキャピタルを上回る規模のファンド(『ソフトバンク・ビジョン・ファンド』)を作るということは、世界中で新たな同志的結合を増やしていく構えができたということです。この構えを作ったことで、いつの日か世界で最も尊敬される、価値のある、勢いのある集団になれるのではないかと思っています。
この志は我々の本拠地である日本でスタートしていますから、国内でしっかりと業績を上げて、多くの人々に感謝され、尊敬されるような企業活動をしていかないといけません。加えて、皆さんはソフトバンクグループの中核であるソフトバンクの社員でもあります。国内だけではなく、今後世界中に打って出るあらゆる事業の核に貢献するという高い志を持って、力を発揮してほしいと思います。そのためには英語を欠かすことはできません。また、できるだけ早くいろいろな技術に関心を持ち、それらの知見を得てほしいと思います。
マイクロコンピューターの能力は人間の知能を超え、少なくともこの30年、40年の間に、つまり皆さんが現役の間にシンギュラリティー(Singularity/技術的特異点)が訪れます。それにより、仕事の定義が変わります。人工知能がロボットに融合され、それがクラウドにつながっていく。24時間365日働けて、人間よりスピーディに、また正確に手足を動かすことができるスマートロボットが社会のあらゆるところに存在する時代がくるのではないか。そうなったとき、人間の仕事とは何か。単純作業はどんどんロボットに置き換えられます。
逆に人と人とが心を触れ合わせることは今後もっと大切になり、常に自分たちの仕事を見直し、今後の社会の進展を先回りして考えることが大切になります。人間はおおむね自分が意識した方向に育っていきます。強い願望を持って努力し続ける、そういう思いを持つことはとても大切なことだと思います。我々が情報革命の推進役として、世界中に情報革命を起こすのは何のためか。人々を幸せにするためです。『何のために』を忘れ去ってしまったのでは意味がありません。いろいろな切り口から人々を幸せにするために努力をする、そういう思いを皆さんには強く持ってほしいと思います。今できること、今やらなければいけないこと、今のうちから志しておかなければならないことを強く意識してください。入社おめでとうございます。同志として一緒に頑張りましょう」(孫代表取締役会長)
KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏
ソフトバンクと同じく、大手キャリアとして知られる電気通信事業のKDDI。労働の終了から次の労働開始まで、一定の休息付与を義務付ける「勤務間インターバル制度」をいち早く導入するなど、社員の働き方改革も積極的に実施している企業だ。代表取締役社長の田中孝司氏は新入社員307名に対し、次のようなエールを送った。
「皆さんが物心ついた頃には、当たり前のように携帯電話やインターネットが使える環境だったのではないでしょうか。1985年に通信自由化が実施されて約30年が経過し、この30年間、"今の時代の、この当たり前"を提供するために、通信業界では、日々、激しい競争と技術革新によって切磋琢磨し、今では、通信は日本国民の生活に欠かせない社会基盤へと発展してきました。本当に、この30年、隔世の感があります。
先ほど、説明しましたIoT、AI、ビッグデータ、加えて、次の通信技術である5Gが、我々が住む社会の産業構造を大きく変化させ、また、我々自身も、この変化を梃にして、真のライフデザイン企業に脱皮できるのではないかと確信しています。当然、この変化の波に乗れず、変化できず、脱落する企業も出てきますので、我々自身も、生き残りができるよう精いっぱい努力しないといけないのは当たり前のことです。
一方、国内においては、いいことばかりではありません。今も、日本の人口は減少していますが、2020年以降は、団塊の世代が市場から卒業し、更に人口減が進むといわれています。そう思うと、我々のビジネスは、日本国内にとどまることなく、グローバルでの事業展開をひとつの柱にしないといけないことがわかります。
私が、会社に入った36年前には、誰もがスマホをもって、簡単にコミュニケーションができる時代が来るなんて、想像がつきませんでした。きっと、本日入社された皆さんが会社の中核になって、事業をドライブされる頃は、今、想像できる世界とは完全に違ったものになっているのではないかと想像しています。とはいっても、その世界は通信ということが消滅するわけではなく、より本質的なものに変化しているのではないかと思います」(田中代表取締役社長)