阿佐ヶ谷駅(東京都杉並区)は、中央線沿線でも高円寺や荻窪、吉祥寺などに押され、どちらかと言えば印象が薄い駅かもしれない。しかしここは、新宿から中央・総武線で12分程度とかなり利便性がよく、それでいて緑豊かな街である。ふと、「東京23区だよね!? 」と思うようなのんびり感がありつつも、にぎわいを見せる阿佐ヶ谷の商店街で食べ歩きをしてみた。

南口に阿佐谷パールセンターの巨大ゲートが!

メイン商店街の見どころは天井!?

阿佐ヶ谷の商店街は、中央・総武線の線路を境に北側と南側に分かれている。その南側にあるのが、代表格の商店街「阿佐谷パールセンター」だ。南口を出ると、まるで巨大なカップケーキのようなゲートが設置されているため、すぐに見つけられるだろう。

「パールセンター」という名前は、戦後の高度成長期に「真珠のネックレスのように結び合って繁盛していこう」という意味で付けられたという。名前を公募し、採用された場合の賞品はルノーの小型自動車だったというから、相当な気合いの入れようである

パールセンターは、この入り口から青梅街道までの700mに渡る長い商店街で、その大部分が全天候型のアーケードとなっている。こうしたアーケードは最近の商店街では珍しくないが、ここには「阿佐ヶ谷だからこそ」という点がある。天井が山型の幾何学模様になっていて美しく、とにかく明るいのだ。

これは、天の川をイメージして造られたものだという。雨でも不都合なく歩けるものの、晴れた日に訪れてみれば、爽やかな陽の光の中を散策しているような気分になれるかもしれない。しかも、パールセンターはくねくねと湾曲していて、通りの色合いは統一感があり、流れる音楽は静かなジャズやボサノバである(取材時)。ふと、東京ディズニーランドのアーケードにいるような錯覚に陥ってしまった……のは筆者だけだろうか。

横道をのぞくと畑が見えることも。のどかさが漂う

近年のアーケードは、大型チェーン店で埋め尽くされていることも少なくない。もちろん、パールセンターにもチェーン店は複数あるものの、かなり昔からありそうな商店も多く並ぶ。せっかく食べ歩くなら、そういった店を探したいものだ。

「高円寺純情商店街」などで知られる小説家・ねじめ正一氏が経営する「ねじめ民芸店」も訪れてみたい

こだわりがたっぷりなたい焼き屋

パールセンターにも「行列のできる店」がいくつかある。そのうちのひとつが、たい焼き屋「ともえ庵」だ。サクッとした薄めの皮と砂糖を極限まで減らした餡が特徴の「たいやき」は1匹150円。自家製の白玉が入った「白玉たいやき」(300円)は、通常のたい焼きの2倍以上の手間をかけて作っているというこだわりの逸品で、注文を受けてから焼き始めるという。

さっくりした皮の「白玉たいやき」(300円)。営業時間は11時~20時だが、「餡がなくなり次第終了」となる

そのため、7分程度の待ち時間が必要になり、さらにはおいしく食べてもらうため「その場で食べるか、10分以内に食べてもらえる方に限定」して販売している。こう言うと、ガンコ親父の店のような雰囲気があるが、店員さんはみな親しみやすい印象だった。ローカル感満載の狭い店内には5人程度が横並びに座れる席があり、お番茶はセルフサービスで無料となっている。急ぐ旅でないのなら、しばし休憩してみるのもいいだろう。

棒状の白玉を入れ込んでいるため、しっぽのあたりまで白玉が入っている

そのほか、巨大いちご&いちごソースで味わう「生いちご練乳餅」(600円)や、広島から取り寄せたレモンを使った「広島レモネード」(400円)など、こだわりの変わり種も楽しめる。

「生いちご練乳餅」(600円)は3月9日までの季節限定販売。立派ないちごと、もっちりした練乳餅がおいしい

どじょうの唐揚げなるものも!?

塩系のおやつをつまみながら歩きたいと思ったなら、どじょうなどはいかがだろう。焼き鳥屋の「稲毛屋」をのぞいてみたら、小皿に山盛りになった「どぜうの唐揚げ」が目に止まった。50gで756円と、少々お高いのだが、見たら食べずにはいられない。煮干しのように見えるが、明らかに味も食感も違う。サクサクぽりぽりと食べながら歩いていたら、すぐになくなってしまうかもしれない。

「どぜうの唐揚げ」(50g/756円)

「初めて食べます」と言うと、店員さんは「おいしいですよ! 」と自信たっぷりに話していた。とても人気なのだそうだ。サクサクな塩味で、ビールが欲しくなる

パールセンターは商店街として長い歴史を持つためか、和菓子の老舗を多く見かける。続いてはそんな和菓子をめぐりつつ、阿佐ヶ谷の魅力に迫ってみよう。