冬におねしょが増えるのはなぜ? 改善するにはどうすべき?

トイレトレーニングの進み方には個人差がありますが、いつまでも子どものおねしょが続くと、不安になってしまうパパ・ママも多いのではないでしょうか。特に冬の寒い時期は、おねしょが増えてしまうという声が多く聞かれます。

寒くなると、なぜおねしょが増えるのか。おねしょをした子どもにどのように対応すればいいかなど、小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。

Q.そもそも、おねしょはなぜ起こるのですか?

年齢にもよるので一概には言えませんが、以下の要因などが挙げられるでしょう。

・自律神経が未熟なため、尿を止める機能が働きにくい
・膀胱が大人に比べて小さい
・尿を出すための「括約筋」が締まっていない

また、しっかり眠れず浅い睡眠になっていたり、ストレスが多い子どもがおねしょになっていたりするケースもあります。おねしょの原因は1つではなく、本当に数多くあるのです。

Q.秋から冬にかけて、おねしょが増えるのはなぜですか?

気温が低くなると、人は寒さを感じて体を温めようとするので、代謝を上げるために血流が多くなります。尿は血液の不純物によってできるので、血流が多くなると、それだけ尿の量も増えます。もちろん夜間の尿量も増えるので、寒い時期にはおねしょが増えるということが考えられます。

Q.寒い時期のおねしょを改善するために、有効な方法はありますか?

「これをすればおねしょがピタッとなくなる!」というような劇的な改善方法はありません。しかし、気温が低いと尿の量が増えてしまうという体のメカニズムを踏まえると、できるだけ寝ている間に寒さを感じさせないということが重要でしょう。布団を温めたり、暖かい寝巻きを着せたりして、体の芯から温めてあげてください。安心して眠れる環境を整え、子どもに精神的な安定をもたらすことが、おねしょの改善に繋がるかもしれません。

Q.病院で診てもらった方がいい「おねしょ」の症状はありますか?

小学校入学を期に、おねしょを「夜尿症」と言い換えて治療を薦めるのが一般的な考え方です。おねしょも夜尿症も、夜寝ている間に無意識に排尿してしまう点では同じですが、小学校入学以降は、例えば膀胱の大きさや臓器の疾患など病的なケースが疑われたり、親子ともに心のケアをしていく必要があったりするからです。

ただし、小学校入学後でも、1回や2回のおねしょはよくあることです。あまり心配しすぎず、毎晩続く場合や、何十回も繰り返す場合には小児科に相談して下さい。また、パパやママや子どもたちが不安を抱えて悩んでいれば、どんな状況でも、抱え込まずに小児科に行ってください。

Q.おねしょをした子どもに、親はどのように接することが重要ですか?

私は、子どもがおねしょをした時に寝ていたら、何も言わないでそっとシーツを変え、おねしょをしたこと自体に気づかせないくらいの方がいいと思っています。おねしょは、生活や環境が変わるタイミングで始まることがあり、心理的な作用が大きいと考えられるからです。

難しいとは思いますが、親は子どもをしからず、おおらかな気持ちで見守ってあげることが大切です。とにかく前向きな言葉をかけて、子どもを不安な気持ちにさせないようにしてあげてください。

Q.おねしょをさせないために、親にできることは何かありますか?

「お水をたくさん飲んだらおねしょをするよ」など、おねしょを連想させるような声掛けをすると、かえって子どもの不安をあおり、おねしょを誘発させてしまうことがあります。できるだけおねしょのことを思い出させず、リラックスさせてあげることが重要です。その方法は子どもによって異なると思いますが、絵本の読み聞かせは手軽にできるため、お勧めです。1日の中で少しでもいいので、子どもと真正面から向き合う時間を作っていただきたいと思います。そうすれば、子どもの不安も取り除かれ、おねしょから卒業するための一助になるかもしれません。

※写真と本文は関係ありません

竹中美恵子先生

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。