MYDCは1月16日、スマートフォンから手軽に手続きができる個人型確定拠出年金(以下iDeCo)のサービスを提供開始した。このレポートでは、発表会の様子などをお伝えする。

MYDC、確定拠出年金のサービス提供開始

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?

「iDeCo」とは、加入者自らが積み立て・運用をする年金制度。経済成長の鈍化や少子高齢化などで公的年金の受給額が減ると言われている昨今、個々人でできる老後資金形成の手段として関心が高まっている。同制度は、積立金が全額所得控除の対象になるほか、運用益が非課税になり、受取時の税金が軽減されるなど大きな節税メリットもある。

iDeCoのメリット(発表会配布資料より)

また、2016年までは自営業者や一部の会社員のみが対象であったが、2017年1月から公務員や専業主婦(夫)を含む、原則60歳未満の公的年金の加入者約6,700万人ほぼすべてが加入できるようになった。

2017年からはほぼ全員が加入対象に(発表会配布資料より)

場所と時間の分散投資が豊かな老後の鍵に

2016年に設立されたMYDCは、フィンテックベンチャーのお金のデザインと福利厚生サービスを提供するベネフィット・ワン、そして伊藤忠商事が出資するiDeCo運営管理機関だ。お金のデザイン ファウンダーの谷家衛氏は発表会で、iDeCoのメリットは「時間と場所の分散投資」にあると語った。

谷家氏「今の日本人に必要なのは、世界中に時間をかけて分散投資をすること。これから人口が増えて発展する世界の国に投資して経済成長に貢献し、配当を受け取りながら、自分の好きなライフスタイルをしていくことが一番重要。iDeCoであれば、自由に自分が好きなライフスタイルを選ぶことができる」

老後資金の準備に加え、大きな節税メリットが期待できるiDeCoだが、手続きが煩雑なこともあり、2016年3月時点での加入者は25万7,000人にとどまっているという。

このような現状を踏まえ、MYDCではスマートフォンで簡単に申し込みができるサービスを作り上げた。同社が目指すのは「10分で老後の40年を。iDeCoをもっと身近に」。MYDC 代表取締役社長の前川卓志氏はサービスについて次のように説明した。

前川氏「iDeCoの申し込みはオンラインで10分でできるようにした。申し込みと商品選択、相談機能の『3つのカンタン』を用意している。商品選択も簡単にできるように、2つの質問に答えるだけでロボアドバイザー『THEO(テオ)』がアルゴリズムに基づいて決定する。極力ムダなものは排除し、書類の記入もほぼ必要ない」

MYDCの3大特徴(発表会配布資料より)

ユーザーは情報を入力して郵送するだけ

MYDCからiDeCoを始める場合、まずユーザーは年齢・年収・職業の3つの質問に答えて将来の受取額と毎年の節税メリットを確認する。

例えば25歳で年収400万円の会社員が月々2万3,000円を積み立てた場合、毎年の節税メリットは4万1,000円。60歳で受け取れる額は定期預金を選んだ場合は1,001万円、投資信託を選んだ場合は1,718万円というシミュレーション結果が表示される。この段階ではアカウント作成や登録の必要はないため、「ちょっと興味がある」という人でも気軽に試算できる。

iDeCoの受取額と節税額シミュレーション(MYDC HPより)

iDeCo申し込みを希望する場合は、そのままアカウントを作成し、専用サイトから住所氏名や年金番号などの必要情報を入力する。その後、MYDCから書類が送られてくるので、銀行印などを押して返送し、不備がなければ申し込みは完了だ。あとは毎月26日に積立金が引き落とされるという至極シンプルな仕組みになっている。

初心者が資産運用を始める際のハードルになる商品選択は、「THEO」がサポートする。債券を中心に定期預金などが組み込まれた安定志向の運用、株式を多く含む投資信託を中心とした積極運用など、ユーザーは2つの質問に答えるだけで、様々な地域・資産・通貨に分散投資することができる。また、資産配分割合をカスタマイズすることも可能となっているため、自分の取れるリスクに応じた運用をしたいという人にも良さそうだ。

老後の資産形成と節税を同時に実現できるiDeCo。個人で始めるには煩雑な手続きが障害となり、対象者数に対しての加入者は非常に低かったが、MYDCはフィンテックの力でハードルを下げることに成功した。大きな可能性のあるiDeCo市場で、手軽さを武器にどこまで加入者を伸ばすことができるか、今後の動きにますます注目が集まりそうだ。