2016年は自動車メーカー各社のエコカー戦略が見えてきた年だった。世界的には航続距離の長い電気自動車(EV)の開発競争となっている模様で、燃料電池車(FCV)を本命に据える日本メーカーもEVへの対応を迫られている。米国カリフォルニア州のZEV(Zero Emission Vehicle=排ガスゼロ車)規制が目前に迫るなか、米国市場を得意とする日本勢はプラグインハイブリッド車(PHV)の商品化も急ぐ必要がありそうだ。エコカーを取り巻く環境は2017年にどう変わるのだろうか。
欧州勢は電動化に素早く対応
2016年を振り返ると、欧州自動車メーカーの急速な電動化への動きが印象深い。
EVについては、BMWが2014年4月に日本国内へも導入したのにとどまり、逆にダイムラーの「スマート」は最新型にEVの設定がない。フォルクスワーゲン(VW)も「アップ」と「ゴルフ」にEVを用意したが、国内の急速充電器への対応が不十分で、立ち消え状態だ。だが、PHVについては、ドイツの5メーカー(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、VW、ポルシェ)が設定車種を用意している。なかでもメルセデス・ベンツとBMWは、高級車から普及車種まで幅広く車種展開を進めている。
また、秋のパリモーターショーにおいて、EVではBMWに出遅れ気味のVWやメルセデス・ベンツが、コンセプトカーを意欲的に出展した。
先見の明を示した日本勢は…
一方、国内では日産自動車の「ノートe-POWER」やスズキの「ソリオハイブリッド」など、ハイブリッド車(HV)の新顔は現れたが、トヨタ自動車の「プリウスPHV」は秋発売の予定が冬へ持ち越されるなど、もたつきが見える。他の国内メーカーからPHVの新たな動向は聞こえてこない。
ディーゼルエンジン車の普及は、2000年代に欧州で顕著だった。対する日本国内では、排出ガスに対する2009年のポスト新長期規制以降になって、東京都の「ディーゼル車NO作戦」以後の復権を果たしてきているが、そうしている間に、欧州では電動化が進んだといえる。ディーゼルエンジンに10年遅れの日本が、電動化でも10年遅れの様相である。
欧州の動きはいずれも、EUでのCO2排出量規制や、米国カリフォルニア州でのZEV規制強化に素早く反応し、手を打ってきているのを実感させる。一方、日本の自動車メーカーの動きはどちらに対しても鈍い。
20年ほど前の1997年に、トヨタが世界で初めてHVの「プリウス」を市販したことに始まり、2011年には日産がEVの「リーフ」を世界に先駆け市販した。そうした先見の明を示しながら、いずれもその後の世界動向の見方が甘いのか、見誤ったのか…。欧州勢に後れを取ってしまったというのが、2016年の率直な実感である。