羽田空港の敷地内で、飛行機の歴史や構造を実体験を通じて学べる約100分間の無料ツアー。トリップアドバイザーに寄せられた過去1年間の口コミ評価で決定する「行ってよかった! 無料観光スポット 2016」にて、この「JAL 工場見学 Sky Museum」(東京都大田区)が第1位に選ばれた。では実際、どのような体験ができるのだろうか。
現場経験者だから知りえる小話も
工場見学は約30分の航空教室、約30分の展示エリア、約40分の格納庫見学から構成。受付は東京モノレール「新整備場」駅から徒歩2分のところにあるJALメンテナンスセンター1となり、年末年始を除く1日4回(10:00~、11:30~、13:00~、14:30~)開催し、1回の見学で100人まで対応。予約は見学日の6カ月前の同一日9:30より、インターネットを通じて受け付けている。なお、見学は安全上の理由で小学生以上としている(小学1~2年生は5人につきひとりの割合で成人(20歳以上)の同行必須、小学3~6年生は成人の同行が必須)。
それぞれのエリアでは、整備士やパイロット、CAなどを経験した42人のスタッフたちが案内をしてくれる。その内容はその人その人によって、また、特に格納庫見学ではその時の整備状況によって変わるため、いつ訪れても新しい発見ができるだろう。実際、スタッフの方々の説明を聞いていると、「本当に航空業界の仕事を愛しているんだろうな」ということが伝わるくらい、一つひとつていねいに説明してくれる。
それぞれの仕事を疑似体験
まずは約30分の航空教室から。スライドでは、羽田空港の仕組みや飛行機の構造、ボーイングで飛行機ができるまでの様子などが紹介される。子どもの参加者を意識して、「なぜ飛行機は空を飛べるの? 」「燃料はどこに積むの? 」「飛行機の高さはどのくらい? 」などとクイズを織り交ぜながら紹介し、実際に疑似体験を通じて理解を深めさせる工夫もされている。
続くボーイング777の模型が出迎える展示エリアは、約30分間、自由にエリア内をめぐるというもの。このエリアは2013年7月にリニューアルされ、昭和26(1951)年に会社を設立したJALの史料を一般公開している。また、JALグループの現場で活躍するパイロットやCA、航空整備士、空港スタッフ、グランドハンドリング・貨物スタッフの仕事紹介ブースを新設し、JALの新シート・新サービスなども実物展示をしている。
50mを超える大年表では、1960年代にJALがDC-8を用いて展開していた和の贅を尽くしたおもてなしや、昭和39(1964)年の東京オリンピックの時の様子、昭和41(1966)年のビートルズの来日、1970年代のジャンボ導入、そして2019年に予定しているエアバスA350導入、東京2020、MRJ導入など、過去から未来にわたって、JALの歴史を通じて世界の空事情をうかがい知れる。展示はJAL/JASの歴代航空機のモデルプレーンや制服を始め、時刻表、機内誌、カレンダーとさまざまなアイテムが集められている。
仕事紹介エリアでは、さまざまな体験コンテンツや各職種の7つ道具などがそろう。飛行機のタイヤやエンジン、コンテナ、コックピットなどの展示のほか、飛行機の誘導をするマーシャラー疑似体験など、実際に体験を通じて実感できるように工夫がされている。また、パイロットやCAなどの制服を着て記念撮影もできるので、子どものみならず大人もぜひ、CA気分を楽しんでいただきたい。
展示エリアの奥にはグッズショップがある。このショップも施設リニューアルと同時に新しく生まれ変わり、ここでしか買えないグッズもとりそろえている。2016年12月現在の人気ナンバー3は、ショップ限定販売の「チェンジング定規」(税込200円)、「トライアングルシャープ」(税込330円)、「カドケシ」(税込250円)などの文房具だとか。
そのほか、飛行機の形をした煎餅や、小腹がすいた時にぴったりのインスタントラーメン「らーめんですかい」、JALデザインのMRJグッズ、整備士の制服デザインのキッズTシャツ、などがある。ちょっと変わったお土産を探している人は、「航空用救難食糧」(税込1,900円/5人前・1日)なんていうものもいいかもしれない。
現場で整備の今を知る
最後は、実際に実機の整備をしている様子をそばで見られる約40分の格納庫見学。展示エリアから移動して格納庫に通じる扉を開けると一気に視界が開け、ややひんやりとした空間に機械音が鳴り響く。JALは羽田にふたつの格納庫を持っており、この工場見学では両方を見て歩ける。まずは最長で1カ月半くらいかけて重整備やシート交換などを行うメンテナンスセンター1の格納庫から。高さ約20mの飛行機でもすっぽり入れるよう、格納庫の高さは約40mにもなっている。
通路を渡ってメンテナンスセンター2に移動すると、さっきとはまた別の風景が広がる。幅約205m、奥行き95mの格納庫には、先ほどと違って柱がない。ここでは必要な部分に油をさしたり、タイヤやブレーキ、エンジンなどに不具合がないか検査をしたりと、主に1晩で終わる整備を担う。最大で5機収容できるため、実機を目の前にして機種の見分け方も教えてもらえる。また、すぐそばでは分間隔で飛行機が離発着をしているので、着陸した後にエンジンを逆噴射させるシステムの構造など、その時の案内スタッフによっていろんなトリビアを学べる。
全部で約100分の「JAL 工場見学 Sky Museum」は、予約自体は6カ月前から予約を受け付けている。現在、予約がとれにくい状況が続いているようだが、特に冬休み前の今は比較的すいているという。また、キャンセルで急きょ空きが出ることもあるので、定期的にチェックしてみるといいだろう。