仕事をする罪悪感はゼロにはならない

「自分を満たしてあげてもいい」と語る高島さん

――出産しても仕事復帰はしたいと考えていましたか

分量は考えるとしても、仕事は続けていきたいと思っていました。でも1人目のときは、娘と過ごす時間が少なくなるのが嫌で、復帰予定の時期を延期してもらい、産後8カ月で復帰しました。他人に抱っこしてもらうのも抵抗があるくらい、私の手で育てたいという思いが強かったからです。

しかし、そうやって濃密な時間を過ごした結果、長女はすごく人見知りのママっ子に育ちまして(笑)。一方保育園に通っているお友達を見ると、愛想がよくてなついてくれる子や、しっかりしている子もいるんですよね。

「たくさんの愛情を注ぎたい」というベースは同じ。その上で、子どもを預けながら、一緒にいる時間は濃密に過ごす、という方法もあるし、自分のやりたいように常に子どもを見守って、手をかけるという方法もあるのだと学びました。

――本の中には、子どもを預けて働くことに、罪悪感があったという言葉もありました

仕事に向かうとき、長女が私と離れたがらず、泣き叫んで、玄関の扉を閉めたあとも「ママ」と言っている声が聞こえて……こんなに泣かせてまで、仕事をする意味があるのかなと思ったこともありました。

しかしあとで聞いてみると、私がいなくなった5分後にはケロッとしているというし(笑)、今は長女も自分で心の整理がつけられるようになり、「ママ、行ってらっしゃい」と言えるようになりました。

今でも罪悪感はゼロではないですが、それ以上に、娘が寂しさを受け入れたり、自分の思い通りにならないことがあると知ったり、その中で工夫したりすることが、心の成長につながっていると思います。

自分を満たしてあげてもいい

――そんな中で、2人目の妊娠時は女優という新しいお仕事にチャレンジされています。やってみようと思ったのはなぜですか

仕事って、「今、逃してはいけない!」という瞬間がありますよね。そのチャンスを、自分の嗅覚というか、感覚でキャッチしていかないと、楽しめないというのが、私が仕事をする上でのベースにあります。

お芝居の仕事は、その食指が動きました。2人目が生まれてからでは到底無理。今やらないとできないし、私としてもやってみたい。そう思ったのです。

それから、新しい場所で、新しい人間関係の中で、新しいことにトライするという刺激がほしいという思いもありました。ワガママかもしれませんが、育児を通して娘と濃密な時間を過ごしていたので、振り子を振るように、そんな思いが強くなったのかもしれませんね。

こどもを預けて仕事をしたり、食事をしたり、自分の時間を使うと、お母さんってすごくたたかれるじゃないですか。お母さんになる前は誰も何も言わなかったのに、お母さんになった瞬間に、「いろんなものを犠牲にして、周りのために尽くし続ける崇高な存在」にならなくてはいけない、暗黙の空気が漂っている気がしています。

負けず嫌いな性格の私は、育児に関して「私にもできないことがある」ということが嫌でした。ですから、そういう神々しい存在になりたいと思っていたし、そこに向かっていく自分も好きでした。

でも、2人目の出産を控えて、1人では手一杯になって、「できないことがある、むしろ、できないことの方が多い」と思って「もう無理!」と声をあげたら、人の手が借りやすくなりました。そして、自分の時間を使って、自分を満たしてあげてもいいのではないかと思えるようになりました。

それもあり、これもあり、みんなあり

育児の話をするときにいつも思うのが、お母さんの最大の味方はお母さんだし、最大の敵もお母さんだということです。多くのお母さんは、自分のやっている子育てを、自信を持って一生懸命やっていると思います。ですから、自分のやり方と違うことや認められないことがあると「それってどうなの?」という視点が強くなってしまう気がしています。

私自身も、妊婦さんがヒールの靴をはいていたり、生後2カ月の子を保育園に預けている話を聞いたりすると、勝手に心配してしまう時期がありました。しかし、2人目がうまれたくらいから、みんな一生懸命だし、必死だし、それぞれの子育てのやり方をお互いが認め合えれば、もっと気楽に育児ができるし、子どももうみやすいのではないかと思うようになりました。

自分もそうですが、子育ては"それもあり、これもあり、みんなあり"だよなと、みんなが一歩ひいた心でいられたら、窮屈な状況は変わるのではないかと思います。

『彩育 伝える、変わる。』(1,400円・税別/KADOKAWA)

2016年に第2子がうまれ、現在4人家族の高島彩。「育児でこんなに自分が変わるなんて!」と実感し、待望の第1子出産後のエピソードから、子育て、家族の協力、ストレス、ママ友、仕事復帰、など初めて語る子育てエッセイ。第2子出産日記や第2子も初登場。「本当に役立つBABYアイテム」や「絵本のセレクトとオススメ本紹介」なども掲載。出産後の育児の道を、悩みながら、楽しみながら、愛おしみながら、愛情あふれる日々の思いが詰まった1冊です。