北米市場で急成長を遂げ、業績を大きく伸ばした富士重工業(スバル)だが、燃費規制の強化や、2018年からカリフォルニア州で強化されるZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)規制への対応は耳に届いてこない。ZEV規制は、2018年モデルから、新車販売の4.5%の比率で排ガスを一切出さない電動車両とすることを求める。これまではハイブリッド車もZEVに加えることが許されてきたが、2018年からはそれもなくなる。スバルは、どう取り組もうとしているのだろうか。
先日のロサンゼルスモーターショーで世界初公開したSUBARU VIZIV-7 SUV CONCEPT。大きな車体のクルマも北米におけるスバルの人気を支えているが、エコカー全盛時代が到来しても、その人気は維持できるのだろうか |
日本と欧米で異なる燃費規制についての考え方
スバルの将来に対する考察の前に、前提となる燃費規制のおさらいをしておく。
これまで日本国内では、省エネルギーへ向けた自動車の燃費基準について、車両重量による区分に応じて目指すべき燃費性能を実現していればよかった。簡単に言えば、小さくて軽い自動車の燃費は厳しく、大きくて重い自動車の燃費は甘い設定だ。
これに対し、欧米での燃費規制(またはCO2の排出量規制)においては、自動車メーカーごとの平均燃費に対する数値規制が設けられている。つまり、小さくて軽い自動車は目標達成が容易で、大きくて重い自動車は達成するのが厳しいという、燃料消費(またはCO2排出量)に対する均一な規制の考え方に基づく。米国でCAFE規制と呼ばれているものは、企業平均燃費(Corporate Average Fuel Efficiency)のことである。
当然、環境の改善へ向けては、均一的な一斉に規制する考えが的を射ている。日本の規制は、国内に8社も乗用車メーカーがあり、また4社の商用車メーカーを抱える管轄省庁が、各メーカーの存続を優先した考え方に基づいて決める。方向性として環境改善へ向かってはいても、その姿勢に厳しさが欠けていたといえなくはない。
既存エンジンでは対応不可能? 欧州のCO2排出量規制
こうしたなか、欧州では2021年からCO2の排出量を1キロメートル走行あたり95グラムまでとする規制が実行に移される。日本でなじみのある燃費性能の表記に従えば、約25km/Lと換算される。これを、これまで排気量3~4リッターといった大きなV型エンジンを搭載してきた高級乗用車で達成するのはかなり厳しい。たとえば、現行のトヨタ自動車「クラウン」のハイブリッド車は、国内のJC08モード燃費で23.2km/Lであり、まだ足りない。ガソリンエンジン車では、11.4km/Lでしかない。ちなみに、ドイツのメルセデス・ベンツの場合は、S300hというハイブリッド車で20.7km/Lである。
したがって、1キロメートル走行あたりのCO2排出量を95グラムに抑えることは、もはやハイブリッド車はもとよりディーゼルエンジン車でも至難の業で、電気を使ったモーター走行をより増やせるプラグインハイブリッド車(PHV)であることが必須となってくる。さらにその先を見据え、欧州の自動車メーカーはこぞってPHVのみならず電気自動車(EV)の開発に、一気に乗り出しているのである。
これに対し、日本の自動車メーカーのPHV化やEV化への動きは鈍いといわざるを得ない。なぜなら、欧州での日本車販売はいまだ芳しくなく、それほどこの規制が身に沁みてはいないからだろう。
一方、前回の記事で触れているように、米国市場では、スバルを含め日本の各自動車メーカーが好調で、販売実績を伸ばし、それが業績を安定させたり上向かせたりしている。
その米国でも、燃費規制の厳しさが急速に強まっている。