2030年は遠い未来ではない

別の視点では、ドイツ車を例にすると、新車へのモデルチェンジの周期が約8年で、2030年は2モデル先の新車が売り出される時期と重なる。4~5年周期でモデルチェンジを繰り返す日本車にとっての2030年は、3モデル先と、想像もできないほど遠い話だが、ドイツの自動車メーカーにとっては次の次という次世代構想の視野に入ることになる。

大都市化の課題だけでなく、当然ながら気候変動やエネルギー動向、それらによって影響を受ける食糧問題など、ヨーロッパの人たちにとっての2030年は、遠い未来ではなく、間もなくやってくる近い将来なのである。

2030年までに、どういう社会、都市、自動車作りが求められるのか、いま真剣に考え、模索しているのがヨーロッパであるといえる。なかでも、自動車産業の中心的存在であるドイツ、またカール・ベンツによってガソリンエンジン自動車を生み出した誇りあるドイツにとって、自動車の行方を左右しかねない2030年は、重要な意味を持っている。ここに、国の経済政策に関わる政治の動きも連動し、連邦参議院の採決にもつなかったのではないか。では、日本はどうか。

排ガス削減には日本勢も取り組んでいるが…

日本国内に、火力発電所で電力を賄っているのであれば、EVでもウェル・トゥ・ホイール(Well-to-Wheel)ではCO2を排出していることになり、エンジンの効率を高めていけば差はなくなるとの考え方がある。

しかし、温暖化の影響で海水温が上昇した結果、従来、フィリピン沖で発生してきた台風が、日本列島近くでも頻繁に発生するようになった。なおかつ日本海側へ進路をとっても勢力が衰えず北海道に上陸するといった事態が生じ、各地で秋の収穫前の農産物が壊滅的被害をうけるといった気候変動の影響がすでに現実のものとなっている。漁業では、秋のサンマが海水温の上昇で不漁続き、水揚げが大幅に減るなどの影響も出ている。

暮らしに直結するこうした気候の異変が何だかのかたちで毎年身近に起きているにもかかわらず、温室効果ガスのCO2を排出し続ける発電に依存する事態こそ、憂慮すべき状態であることをまず認識すべきだ。

かといって、再生可能エネルギー率が急速に国内で増えているわけでもない。相変わらず、火力発電への依存が続き、地球温暖化対策の新たな国際的枠組みであるパリ協定の批准が、EUや米中、インドなどで進む中、日本が遅れる事態となっている。

単なる省エネルギーだけでは不十分であり、排ガスゼロによる発電をどう実現していくかを真剣に考える時が訪れている。

トヨタも環境対策を宣言

こうした情勢のもと、トヨタ自動車は昨年秋に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表した。ここでトヨタは、2050年までに、グローバル新車平均走行時CO2排出量を、2010年に比べ90%削減するとした。これは、エンジンのみによって走る自動車が実質ゼロとなることを意味する。

環境チャレンジでは燃料電池自動車(FCV)の販売目標を設定。2020年頃以降、グローバルで年間3万台以上、日本では少なくとも月に1,000台レベル、年間では1万数千台程度を目指す

その実現のため、ハイブリッド車の技術を核とし、電動化技術の水準を高め、次世代電池開発を行うという。また、半導体の開発を推進し、パワー制御ユニットの高性能化・小型化を行うとしている。