その昔、弘法大師と天邪鬼が競った!?

串本町の中でも屈指の絶景を誇るのが串本から大島に向かい、約850mに列をなし大小40余りの岩柱がそそり立つ国の名勝天然記念物「橋杭岩」だ。その景観は潮の干満により姿を変え、実に神秘的だ。

橋杭岩。約850mに大小40を超える石の柱が並ぶ。それぞれの岩には名前がついており、JR串本方面から海沿いの歩道を歩いて行くと名を記した石碑もある

満潮の際は海に浮かび、歩いては行けないが、朝夕に浮かび上がる奇岩のシルエットは美しく、朝日や夕日の名所にもなっている。一方、干潮の際はそのすぐそばまで歩いていける。岩には一つひとつ名前がついており、目の前の「道の駅くしもと橋杭岩」から見て向かって左から元島、ゴロゴロ島、黒岩、タコ島、海老島、コボレ岩、折岩と続く、ネーミングと岩の形を見比べるのも楽しい。

橋杭岩は干満で姿を変え、夕日や日の出、昼間で趣も異なる

環境省「海水浴場百選」に選ばれた海水浴場に隣接、車で5分ほど東に走ると鯛の形にそっくりな、その名も「鯛島」も見える。その先の田原海岸は朝霧で有名で、向かい合った2つの岩の間に朝日が昇る絶景を撮影に来る人もいる。

九龍島と鯛島。画像提供: 和歌山県

田原の朝霧。画像提供: 和歌山県

ひとつの公園に水族館・海中観光船・ダイビングパーク

最後にもうひとつ、串本の海のオススメスポットを紹介しておこう。JR串本駅から約6kmのところには「串本海中公園」がある。ここには水族館、うみがめパーク、海中展望塔や海中観光船のほか、体験ダイビングやシュノーケリングが楽しめる串本ダイビングパークもある。

美しいサンゴや魚たちが「串本海中公園」で待っている

串本の海には125種類以上のサンゴがあり、世界最北のサンゴ群落として2005年ラムサール条約に登録された。ここではそのどこまでも続くテーブルサンゴや枝サンゴの群落を泳ぐカラフルな魚たちを見ることができる。時間があれば、ぜひダイビングやシュノーケリングも楽しみたいところだ。水族館では毎日ウミガメの赤ちゃんタッチングも開催している。入場料は大人は水族館・海中展望塔1,800円乗船券を含めると2,600円など(いずれも税込)。

「串本海中公園」ではいろんな体が験可能。また、3種類のウミガメにも会える

旅の〆には「カツオ茶漬け」を

今回は串本の海の資源を中心に代表的な観光名所を紹介したが、これ以外にも「絵の寺」の異名を持つ無量寺は丸山応挙ら、室町から江戸時代にかけての絵画96点を境内の「応挙芦雪館」に収蔵。中でも国の重要文化財に指定されている応挙の弟子、長沢芦雪が描いた襖絵の「虎図」は必見だ。また、熊野古道・大辺路ウォーク、マリンスポーツやサイクリングなど、串本の楽しみは多い。串本ロイヤルホテルには橋杭岩が一望できる温泉露天風呂や展望台もある。

「紀州なぎさの駅 水門まつり」にはさまざまな海鮮料理がそろう(お刺身盛り合わせは、小/税込1,380円、大/税込2,580円)

グルメで言うと、近大マグロはもちろんのこと、タイやトビウオ、カツオやウナギなど、串本では新鮮な魚料理が手頃な値段で楽しめる。「紀州なぎさの駅 水門まつり」では海を眺めながらさまざまな海鮮料理が楽しめる。売店も備えているのでお土産などの買い物や産直品の発送も可能だ。

「萬口」ではぜひ、「カツオ茶漬け」(税込1,365円)を!

また、JR串本駅近くの「萬口」はカツオ茶漬けで知られる。ここのカツオ茶漬けはまず、ご飯の上にカツオを半分乗せ、秘伝のたれをかけてそのまま食べる。次の一杯は残り半分のカツオにたれとお茶をかけて、お茶漬けにしていただくというもの。外観は古い印象を受けるが、中に入ると風情ある昭和の佇(たたず)まいが何とも言えない。ぜひ、一泊して串本の絶景と食、さまざまな体験を満喫してほしい。

※記事中の情報は2016年9月のもの

筆者プロフィール: 水津陽子

フォーティR&C代表、経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。著書に『日本人がだけが知らないニッポンの観光地』(日経BP社)等がある。