トヨタ自動車が米Uber(ウーバーテクノロジーズ)に出資し、ライドシェアで協業を始めようとしている。配車サービスが普及すれば、自動車を所有しようと考える人は少なくなり、販売面でマイナスの影響がありそうに思えるが、なぜトヨタは配車サービス大手のUberと手を組むのだろうか。
ライドシェア最大手と提携した理由
日本最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車は、純国産にこだわってきた会社のひとつでもある。第2次世界大戦直後、いくつかのメーカーが欧米車のノックダウン生産に踏み切るなか、トヨタは自社開発を堅持した。1970年代以降、数社が欧米メーカーとの資本提携に動いたときも、トヨタは少し前から提携関係にあったダイハツ工業や日野自動車との結束を強め、米ゼネラルモーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)と対抗できる巨大グループに成長した。
21世紀になると、トヨタは独BMWグループや仏PSAグループと提携し、技術提供や共同開発などを行うことになるが、投資はPSAとの合弁工場運営会社設立に留めており、資本提携は行っていない。このようにトヨタは、ことあるごとに「日本」にこだわってきた。だからこそ今年5月に、スマートフォンを使った配車サービス、つまりライドシェアという仕組みを考案したUberに出資すると発表したことには驚かされた。
具体的な出資は、トヨタファイナンシャルサービスおよび未来創生ファンド(トヨタ、三井住友銀行、スパークスの3社が出資)からであり、本社が直接関わるわけではないが、出資の意向を明らかにしたことと、相手がライドシェアを代表する企業である点には注目が集まった。なぜトヨタはUberと手を結ぶという決断を下したのか。世界中でライドシェアが大幅な伸びを示していることが大きいだろう。
メーカーと配車サービスの結びつきは強まる一方
2009年にUberが始めたライドシェア。米国では以前から一般的に行われていた、自動車の相乗りのマッチングをスムーズにするスマートフォンのアプリだ。
利用者から見るとタクシーに近いが、ドライバーを雇ったり車両を所有したりしていないので、タクシー会社とは根本的に異なる。しかしながら、乗る側はタクシーより安いうえに事前に料金決済を行うので安全であり、乗せる側は自分と愛車の空き時間を使ってお金を稼げることから、世界各地で急速に普及が進んでいる。
Uber以外に、米国ではLyft、マレーシアではGrab、イスラエルではGett、中国ではDidi(滴滴)というライドシェア企業が次々に誕生。そして今年1月にはGMがLyftと、5月にはVWがGettと、それぞれ資本提携を結んでいる。トヨタとUberの提携も、この流れの上にあるものと見てよい。