「ウルトラマンG Blu-ray BOX」

特撮ドラマ「ウルトラマン」シリーズの新たな時代の到来を告げた『ウルトラマンティガ』が放送スタートしたのは1996年の9月7日。今からちょうど20年前のことである。しかしそれに先立つ90年代前半、シリーズの新たな幕開けを予感させる伝説的作品が誕生していた。それが、1990年の『ウルトラマンG(グレート)』と1993年の『ウルトラマンパワード』。『G』はオーストラリア、『パワード』はアメリカと、海外スタッフと円谷プロとの合作によって生み出されたワールドワイドな作品だ。テレビシリーズではなくオリジナルビデオとして企画され、当時ビデオソフトとLD(レーザーディスク)が発売されたのみのこの2作品が、最新のHDリマスター技術で鮮明画質、高音質となったBlu-ray BOX版でいまふたたび甦る。

1990年にビデオリリース(販売・レンタル)された『ウルトラマンG(グレート)』は円谷プロが本格的な海外進出を目指して製作された作品で、企画・脚本、ウルトラマン・怪獣デザインを円谷プロで行い、造型および撮影がオーストラリアにて行われた。シリーズの歴史から見ると、『ウルトラマン80』(1980年)の放送終了以来9年ぶりとなる「実写特撮」の新作「ウルトラマン」となる本作だが、ここに至るまでには、ウルトラマンおよび歴代ウルトラヒーローたちを息の長いキャラクターに育て上げようという円谷プロの絶え間ない努力と工夫の道のりがあった。

テレビシリーズが途絶えた後も「ウルトラマン」シリーズ自体の人気は依然として根強く、小学館のヒーロー雑誌『てれびくん』や学年誌でグラビア・漫画連載という形で「ウルトラマン」シリーズの外伝的ストーリー『ウルトラ超伝説』が好評を博し、1983年には『アンドロメロス』のタイトルでテレビ化を果たした。同じ年には、現在のマスコットキャラクター商品にも通じるウルトラマンや怪獣のファンシーキャラクター企画「ウルトラマンキッズ」が誕生。バンダイから、従来よりも飛躍的にリアル感を増したソフビ怪獣人形「ウルトラ怪獣シリーズ」が発売されたのもこの時期である。

1984年には歴代シリーズの名場面と新撮影部分を再編集した映画『ウルトラマンZOFFY』『ウルトラマン物語』が公開され、歴代シリーズのビデオソフトが販売。レンタル共に好成績を上げた。ウルトラマンや怪獣の勇姿を親子そろって楽しむ「ファンの二世代化」が到来したのが80年代中盤あたりだといえる。

このように、「ウルトラマン」シリーズが世代を越えて幅広い層に浸透していった80年代後期、円谷プロはかねてから懸案だった「英語圏へ向けた『ウルトラマン』シリーズの製作」に着手。最初に実現したのは、アメリカのハンナ・バーベラ・プロとの合作によるアニメ映画『ウルトラマンUSA』だった。1988年にアメリカでテレビ放送された『USA』は、翌1989年には『ウルトラマン大会』(ウルトラマン、ウルトラマンA、ウルトラマンキッズ併映)と銘打ち、東宝系劇場で公開された。これを大きなステップとして「実写特撮による連続シリーズ」の企画が検討され、オーストラリアとの合作による『ウルトラマンG』が実現したのである。

かくしてオーストラリアで撮影が行われた『ウルトラマンG』は、当初ウルトラマンGと怪獣をすべてパペット(メカの骨組みを組み込んだ操り人形)操作によって表現しようと試みられた。人間が中に入って動かす着ぐるみでは表現できないような怪獣独特の不気味な動作などを表すには最適な手法ではあったが、ヒーローの頼もしさや迫力を出すには至らず、早いうちから従来の着ぐるみ方式による撮影も併用して使われるようになった。『G』の大きな特徴は、スタジオの中に街や山のミニチュアを置いて撮影するのではなく、オーストラリア独特のロケーションを用いてウルトラマンGと怪獣の戦いが行われていることだろう。はるかに広がる地平線を望みながらウルトラマンと怪獣が格闘戦を行うビジュアルなどに、本作ならではの雄大なスケールを感じ取ることができる。

日本における『ウルトラマンG』は、ウルトラマン生誕25周年記念作品という冠を与えられてバンダイビジュアルより1990年9月25日に第1巻(第1~3話収録)がビデオリリース(セル&レンタル)された。日本語吹き替え版のキャスト陣も豪華な顔ぶれで、主演のジャック・シンドーには大のウルトラマン好きとして当時のバラエティ番組で熱弁をふるった二枚目俳優・京本政樹を起用。念願の「ウルトラマン」シリーズ参加に意欲を燃やした京本は、主題歌「ぼくらのグレート」副主題歌「地球は君を待っていた」も熱唱している。また、京本の交友関係によって柳沢慎吾(最新作『ウルトラマンオーブ』にもレギュラー出演)がチャールズ隊員役、藤岡弘、がナレーター(第1~6話まで)を務めたこと、そして『ウルトラマン』のムラマツキャップ役で知られ、洋画の吹き替えも数多くこなす小林昭二がUMA隊長アーサー・グラントの声を演じたのも、大きな話題を集めた。

ビデオリリースと並行して劇場版(ゴーデスの逆襲/怪獣撃滅作戦)の上映も行われた『ウルトラマンG』は、ビデオ第4巻から『新ウルトラマンG 必殺!怪獣大決戦』と改題し、都合6巻分がリリース。児童向け雑誌や絵本、販売専用ビデオの世界ではウルトラマンやウルトラセブンなど歴代ウルトラヒーローと共に怪獣軍団と戦う姿を見せたウルトラマンGは、日本の子どもたちにも新ヒーローとして認められ、愛されるようになったのである。