『アイドルマスター シンデレラガールズ』のライブイベント「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story」神戸公演2日目が2016年9月4日、神戸・ワールド記念ホールで開催された。

『シンデレラガールズ』初の大型地方ライブ2日目には、両日共通メンバーの島村卯月役の大橋彩香、多田李衣菜役の青木瑠璃子、双葉杏役の五十嵐裕美、白坂小梅役の桜咲千依、三村かな子役の大坪由佳、前川みく役の高森奈津美、小日向美穂役の津田美波、佐久間まゆ役の牧野由依、諸星きらり役の松嵜麗、安部菜々役の三宅麻理恵、城ヶ崎美嘉役の佳村はるか、そして2日目から参加の佐々木千枝役の今井麻夏、赤城みりあ役の黒沢ともよ、龍崎薫役の春瀬なつみ、神谷奈緒役の松井恵理子、星輝子役の松田颯水らが登場した。

今回のライブのアンコールでは、新曲「Yes! Party Time!!」を初披露。同曲は10月13日に発売されるPlayStationVR専用ソフト『アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション』のオリジナルテーマ曲となる。心浮き立つようなパーティチューンで、新公開のメインビジュアルを見ると衣裳も全員ショートパンツの活動的なイメージとなっている。『シンデレラガールズ ビューイングレボリューション』は、舞浜アンフィシアターでのシンデレラたちのライブを、VR環境で体験できるゲーム。上映されたムービーを見ると、サイリウムだけでなく「サイリウムを振っている隣の人の腕」を感じることに驚いた。円形ステージを囲むような特異なステージで、どんなVR体験ができるのかが本当に楽しみだ。

そしてレポートに入る前に、まずはサプライズゲストについて説明しておこう。2日目は、サプライズゲストとして、渋谷凛役の福原綾香と本田未央役の原紗友里の2人が、21曲目の「Snow Wings」で登場した。伏線はライブ頭の「S(mile)ING!」。「隣に並ぶみんなは」のフレーズで、歌詞的には複雑な思いが込められたフレーズなのに、左右のLEDスクリーンに映しだされた凛と未央の姿を大橋がにこにこしながら見つめているのが印象に残った。そして「Snow Wings」。ユニット曲だが、スクリーンには歌唱者として大橋彩香一人の名前が表示されている。少し寂しくもあるが、さわやかでキラキラした冬の恋の歌を大橋のソロでじっくり聴けるのはレアで嬉しい機会だ。情感豊かに大橋が歌いはじめ、しばらく歌ったところで少しハスキーで力のある凛とした歌声が、次いで元気で前向きだが包みこむような優しさも感じさせる歌声が歌い継ぐ。ステージの真ん中に立つ大橋があまりにも印象的だからこそ、違う歌声が加わったこと、いつの間にかステージの両端に凛と未央の映像に代わって福原と原紗友里が立って歌っていることが観客の心に染み込むのには時間がかかるし、タイムラグがある。会場全員の回路が驚きと喜びに直結されたタイミングで、3人がサビで歌声を揃えるのはあまりにも見事だ。間奏で「凛ちゃんと未央ちゃんが来てくれましたー!」と叫ぶ大橋の嬉しそうなことといったらない。

いるのが当たり前の3人が揃うことが、どうしてこんなに衝撃的で感動的なのか不思議だが、前日に2人が不在のライブを経験しているからこそ、改めてこの3人がどれだけバランスが良く、信頼に包まれたユニットであるかを感じたのもあるだろう。大橋の「感動している……やっぱり2人が隣に立つとなんか嬉しい……」という呟きの声の低さが完全に"素"である。思わず泣きそうになり、最近涙もろいと嘆く大橋だったが、元来の彼女は責任感と負けず嫌いの二本柱で、感動的な場面だからこそ笑おうとして、実際に笑える強さがある。実際一人でセンターを務めた前日はゆるぎもしなかった太陽のような女の子が、いつも支えてくれる仲間が一緒にいるという事実だけで泣いてしまいそうになるのだから、その絆は余人が想像できる以上のものなのだろう。個人的にすごく良かったのは、福原と原紗友里が参加した全員曲で、2人は定位置にいかず、あくまで端にいたこと。締めの流れで大橋をサポートするのは、あくまでもライブ全体を一緒に作ってきた青木や津田や牧野たちだった。

2日目参戦組を重点的にレポート!

「とどけ!アイドル」で全員が揃った時にまず驚いたのは、ライブ初参戦、龍崎薫役の春瀬なつみのビジュアルだ。龍崎薫がそこにいる! 最初はまず、イラストをベースに髪型のイメージを捉えつつ、現実のキャストに合うスタイルで落とし込んだヘアメイクの方が天才的だなと思った。だがMCで定番の「(衣裳を見せるために)回って~!」のくだりで、春瀬が踊るように元気いっぱいにくるくる~っと回っている姿を見ると、姿形だけでは片付けられない、にじみでる何かが薫らしいんだなと感じた。隣の松田颯水は「回って~」にわたわたしながら若干挙動不審気味だったので、やはりだんだんキャラクターと演者が近づいてくるものなのかもしれない。一方、お、と思ったのが、「とどけ!アイドル」の時の黒沢が、わりと普通に見えたこと。たとえば終盤戦の「GOIN'!!!」などを見ていると、ためしに眼鏡を外してぼんやりステージを眺めても、エネルギーが爆発するようなオーラを放っている誰かがいて、双眼鏡で確認してみると黒沢だったりする。それだけに、「とどけ!アイドル」で周りに馴染んでいるのがちょっと意外だったのだが、2曲目、「ゴキゲンParty Night」の間奏で客席を煽り始めるあたりで、あ、ギアを上げた、と感じた。その後彼女の気持ちと運動量とテンションの全てがマックスに達したのが20曲目の「ハイファイ☆デイズ」で、ポニーテールを生き物のように弾ませながらの黒沢のパフォーマンスはまるで弾丸のよう。一方、表現力で勝負する「生存本能ヴァルキュリア」のような楽曲では、見ているものを吸い込むような眼力で客席を引き寄せてからすっと流す流し目一発で消えない印象を残す。ステージ経験豊かな黒沢はここが勝負どころだ! というところがわかっていて、そこにきっちり爆発のピークを持ってこられるからこそ、三宅が驚かせるほどの体力があるように見えるのではないか、と感じた。もちろん、基礎トレーニングと練習があればこそなのは、言うまでもないが。

そして長々と書いた通り、「ハイファイ☆デイズ」の黒沢の躍動や、同じ曲で春瀬が見せた「ぶい!」という感じのピースのナチュラルな子どもらしさは非常に印象に残ったのだが、実は本当の意味で一番震えたのはもう一人、佐々木千枝役の今井麻夏だった。「ハイファイ☆デイズ」で、ギア全開の黒沢の運動量にぴったりとついていっていた今井。それが「咲いてJewel」では、クールにしなやかにかっこよく、本気でキメて魅せることに没頭した青木瑠璃子と並んでまったく遜色のない表現力を見せていた、と書けばすごさの一端が伝わるだろうか。指を立てる仕草、揃えた指先をナイフのように一直線にする所作、力感のある拳、手元だけを見ても表現に意志がある。間奏のハイスパートのダンスの憑かれたような凄みも恐るぺきものがあった。

神谷奈緒役の松井恵理子に関しては、やはりソロの「2nd SIDE」に尽きる。この曲の見どころは、「虹色橋」というフレーズを歌う瞬間に会場のサイリウムが一瞬で虹色に切り替わるところ。ワンフェスに始まり様々な会場に架かってきた虹色橋だが、今回のステージの虹色はタイミングといい最高の光の海だった。巨大すぎず小さくもない、見渡せる範囲の一面が虹色に染まるのは、センターステージの松井からはどう見えたのだろうか。いつもニカッと魅力的な笑顔を浮かべている松井が、さらにその上の大感激をしているのが見るだけでわかるような最上級の笑顔がその答えだった。普段の「大好きだー!」の伸びやかな響きとはまた違う、「ほんとうに、ほんとうに、いつもみんなには力をもらっています……ありがと」のつぶやくような感謝は、万感の思いを伴ってすとんと胸に落ちてくるようだった。

星輝子役の松田颯水は見るからに人が良い好人物だが、ひとたび「毒茸伝説」を歌えば、かくも鮮烈な激情も彼女の内にあったのかと驚かされる。あの常人を超えた狂気のテンションを心の底から楽しそうに駆け抜けられるのは、キャラクターを演じているから、の一言では片付けられない気がする。面白いのはあまりにも強烈な「毒茸伝説」のステージのあとは憑き物が落ちた感じがあったことで、「きみにいっぱい☆」では黒沢、春瀬と共にステージでわーいわーいと遊びまわっているような感じ。「GOIN'!!!」の松田はただひたすらに楽しそうに踊っており、輝子っぽいカラーメッシュの入れ方が絶妙なのもあいまって、会場からは「さっつんかわいい!」の声が飛んでいた。

ライブ全体のセットリスト構成は、前日の基本を踏襲するもの。最近のアイマスは各回でまったくセットリストが違う贅沢すぎる構成が多いが、ひとつの流れを練り込んで完成度を上げるセットリストもまた良いなと改めて感じた。だがそんな中でせっかくだからサービスしたい、楽しんでもらいたいと思ったのが松嵜と大坪だったのはある意味必然だろうか。前日はダンサーのみだった「ショコラ・ティアラ」の「マシュマロばら撒き隊」にしれっと混ざって登場し、見事な投球フォームでマシュマロを散弾銃のように投げていた松嵜。一方、それに対する大坪の返しが最高だ。前日はかごの底からマシュマロを取り出しておちゃめに頬張った大坪だったが、今回は同じタイミングでおいしそうな肉まんを取り出しパクリ! 続く「ましゅまろ☆キッス」では松嵜と掛け合いをしながら、手を取りあってくるくる回ったりしたのは心温まる光景だったが、後のMCで実は手に肉まんの匂いがついていたまま手を取り合っていたこと、今もどうも肉まんの残り香があるっぽいことを暴露。大坪が神に愛されたトークモンスターであることを改めて思い出す一幕だった。

三宅が体力を底の底まで絞りきるパフォーマンスがいよいよ安部菜々とリンクしてきたこと。五十嵐が「あんずのうた」でひきこもり気質のキャラクターたちを率いて歌えたことに満足気だったこと。佳村が自分から志願して『デレステ』の振付を取り入れたり、ステージで黒沢の手を握って嬉しそうだったこと。すべての曲の中でも一番小さい「小さな恋の密室事件」のささやきフレーズが、一番静かな会場に響き渡っていたこと。高森が「おねだり Shall We ~?」の「隙あり!」にこだわりぬいていること、津田の「みんなー私に恋してー!」のあとのささやきにみんなが恋したこと。書きたいことはまだまだあるのだが、続きは10月のさいたまスーパーアリーナ公演の記事ででも。

ひとつだけ言えるのは、フレッシュな顔ぶればかりで、発表された時には大丈夫なのか? とも思ったSSA初日の「Brand new Castle」公演。今は炎陣の面々や牧野、桜咲や今井、長島、春瀬といった神戸を体験したメンバーたちが、ほかのフレッシュな顔ぶれと交わることで生まれる新たな化学変化に対する期待しか存在しない、ということだ。次の城での物語の扉は、10月15日、さいたまの地で開く。

「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story」神戸公演2日目 - セットリスト

M-01 : とどけ!アイドル / THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS
M-02 : ゴキゲンParty Night / THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS
M-03 : S(mile)ING! / 大橋
M-04 : Naked Romance / 津田
M-05 : エヴリデイドリーム / 牧野
M-06 : おねだり Shall We ~? / 高森
M-07 : TOKIMEKIエスカレート / 佳村
M-08 : 毒茸伝説 / 松田
M-09 : Twilight Sky / 青木
M-10 : ショコラ・ティアラ / 大坪
M-11 : ましゅまろ☆キッス / 松嵜、大坪
M-12 : 小さな恋の密室事件 / 桜咲
M-13 : Love∞Destiny / 青木、津田、牧野
M-14 : 生存本能ヴァルキュリア / 今井、黒沢、春瀬、松井、松田
M-15 : 「Starlight Casting」純情Midnight伝説 / 松田、青木、松井、佳村、黒沢
M-16 : Tulip / 五十嵐、大坪、高森、三宅、佳村
M-17 : 2nd SIDE / 松井
M-18 : メルヘンデビュー! / 三宅
M-19 : あんずのうた / 五十嵐
M-20 : ハイファイ☆デイズ / 今井、黒沢、春瀬
M-21 : Snow Wings / 大橋、福原、原紗友里
M-22 : 咲いてJewel / 青木、今井、桜咲、松井
M-23 : きみにいっぱい☆ / 黒沢、春瀬、松嵜、松田、佳村
M-24 : 明日また会えるよね / 大橋、五十嵐、大坪、高森、津田、牧野、三宅
M-25 : メッセージ / 大橋、青木、五十嵐、桜咲、大坪、高森、津田、牧野、松嵜、三宅、佳村
M-26 : GOIN'!!! / THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS
【ENCORE】
EC-01 : BEYOND THE STARLIGHT / THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS
EC-02 : Yes! Party Time!! / THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS【完全新曲】
EC-03 : お願い!シンデレラ / THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS

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