老後資金として必要な金額は?
次に、老後に必要な金額について考えていきましょう。現時点では数十年後の物価や貨幣価値、私たちが老後を迎える頃の年金制度の変化は、正確な予想ができません。さらに、人によって生活にかかるコストは異なります。そのため、正確な目標金額を設定するのが難しいですが、大まかであれば割り出すことは可能です。
まず、60歳以上の高齢無職世帯の生活費は、実際どのくらい掛かっているのかを見てみましょう。総務省の「家計調査報告(家計収支編) ―平成26年平均速報結果の概況―」によると、世帯主60歳以上の高齢無職世帯(夫婦)における1カ月の支出は、消費支出が20万7,370円、税金・社会保険料などの非消費支出が2万2,878円で、合計23万248円となっています。つまり、標準的な老後生活を送るために必要な生活費は、約23万円と考えることができます。
一方、「老後は趣味や旅行などにお金を使いたい!」といった希望を持つ人もいるでしょう。生命保険文化センターの「平成25年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人で60歳~85歳までの25年間で「ゆとりのある老後」を過ごす必要な資金は、1カ月あたり平均35.4万円と算出されています。ちなみに、「35.4万円×12カ月×25年」で計算すると1億620円になり、これは最近話題の「老後資金1億円」の根拠となっています。
自分が準備すべき金額を計算してみよう
上記のデータを参考にしつつ、実際に自分が蓄えるべき老後資金の金額を計算してみましょう。
■日本人の平均寿命が年々延びていることを考慮し、65歳から90歳までの25年間年金生活を送ると仮定した場合
(1)「(生活費-公的年金)12カ年」+(2)「病気など万一のときに備えるお金(300万円程度)」- (3)「退職金」で計算します。
■60歳で退職し、65歳までの5年間、無年金期間があると想定する場合
上記の(1)に「生活費×12か月×5年間」を足します。
例えば、60歳で退職し、「生活費-公的年金」は-7万円、生活費は22万円、退職金は1,500万円と仮定します。
上記の式で計算すると、2,220万円が自身で準備すべき老後資金となります。
ちなみに、「老後資金はいつまでに用意すればいいの?」ということを気にされる方もいるかもしれません。60歳まではとにかく資産を増やすことが大事ですが、それ以降もただ蓄えを取り崩すのではなく「余裕資金を安定的に運用していく」といった考え方を持ち、お金の寿命を延ばす努力が必要になります。
最後に、老後資金を準備する方法について紹介しましょう。おすすめは、節税効果に優れた「確定拠出年金」を利用すること。自身で商品を選ぶといった手間もありますが、正しく活用すれば老後資金を貯めるのに最適な手立てと言えます。老後生活への不安を和らげる1番の方法は、具体的に行動す是非、思い立った今こそアクションを起こしてみましょう。
筆者プロフィール:武藤貴子
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント
会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録FP。