『HK / 変態仮面』のヒロインに抜てきされてから3年。その続編となる『HK / 変態仮面 アブノーマル・クライシス』(5月14日公開)で、女優・清水富美加(21)は再び姫野愛子という役柄と向き合った。連続テレビ小説『まれ』の大役をはじめ数々の作品で経験を積み、それら3年の日々が続編の愛子には投影されている。
2008年の「レプロガールズオーディション」をきっかけにモデルとして活動をスタートさせ、憧れていたバラエティ界にも進出しながら、『仮面ライダー フォーゼ』(11年)のヒロインをきっかけに女優の道へ。『まれ』ではヒロインとしては落選するものの、同級生役での復活起用。失意の中で、父は「お前はヒロインの器じゃない」と厳しい言葉をかけたという。
そんな彼女が今年4月から『にじいろジーン』のレギュラーに起用されるなど、再びバラエティタレントとしての一面にも注目が集まっている。今でも自らを「女優に向いていない」と評し、「売れるとは?」「なぜ売れたいのか?」の自問を繰り返しているという清水。この日一番の笑顔は、インタビューの最後に披露した、父とのエピソードだった。
――前作は舞台あいさつを取材させていただきましたが、あれからもう3年なんですね。
あっという間ですね。前作の打ち上げの時にみんなで「続編やりたい!」と盛り上がっていて、それからは自分のお仕事をがんばる日々。ただ、「自分だけ呼ばれなかったらどうしよう」とひそかに心配していました(笑)。無事に参加させていただき、去年の夏に撮り終えてホッとしています。年末と今年のはじめには福田雄一監督の舞台に出演させていただく縁もありました。
前作に呼んでいただいたのは『仮面ライダー フォーゼ』(ヒロイン)の頃で、女優としての演技経験が本当に浅い時期。自分の仕事を深く理解していない中での福田組で、手応えや「やりきった」という達成感はあるはずもなく……。もう呼ばれないだろうなと半分は諦めていたので、本当にホッとしました。
――よく自分の出演作を観返して反省するそうですね。今回はいかがでしたか。
もちろん観返しました。今の何!? 足遅い! 顔だけ必死! とにかく突っ込みどころがありすぎて(笑)。
――毎回? いつもマイナス査定なんですか。
だいたいそうです。今でも課題や反省ばっかり。自分で自分のお芝居に満足したり、褒めたりしたことは1回もないです。
――連続テレビ小説『まれ』をはじめ、この3年間でたくさん経験を積まれたと思います。前作は名だたる俳優陣の中での現場で萎縮したそうですね。
はい(笑)。でも、今回も(鈴木)亮平さんとのシーンが多かったですし、パワフルでフレンドリーな監督が作る現場に参加させていただいて、とても幸せでした。スタッフさんもほとんど同じだったので、「戻ってきた」という感覚が強かったです。
――福田監督のツボもバッチリ(笑)?
というよりも福田監督がすごくイジってくるんです(笑)。今回は衣装合わせでの対面だったんですけど、「おはようございます!」とあいさつしても曖昧な反応。忘れられちゃったのかなと思って帽子をとったら、「お前か! 朝ドラ出てもオーラ変わらんな!」と言われてスタッフさん爆笑。現場はいつもそんな空気感なので、緊張することはありませんでした。
――演じる上では、どちらの方がいいですか。あまり知らないキャストの中での緊張感。共演経験のあるキャストの中での安心感。
カメラが回っていない時でもリラックスしている方が、自分にとっては合っていると思います。現場によって差をつけちゃいけないのは分かってるんですけど……。画面の中の自分は、別人でなければいけない。そして、「清水富美加の緊張感」が出てしまうことが一番よくない。だからこそ、今回の現場の雰囲気はありがたかったです。
――これだけの時を経て、同じ役を演じるのは初めてですか?
そうですね。
――その経験をして、何か発見や今後に生かせそうなことは?
劇中の時間や設定が全く変化していなかったら大変だったと思いますが、私が3年間でいろいろと変化があったように、愛子ちゃんも高校を卒業して大学に入学していました。お互い少しは大人になったというか。前作はオーバーリアクションをするとか、高い声を出すとか、外身のことばかり気にしていました。お芝居は中身が大事だと前作以降で学んだので、今回はそっちを重視すれば自然と大人っぽく見えるんじゃないかなと。
――確かに大人っぽく見えました。冒頭のシーンで、いきなり驚きました。狂介は、大学生になるまで愛子のパンツを借りたままだったとは……。
そうですね(笑)。印象深かったのも、狂介くんからパンツを返してもらうシーン。クランクインの日だったんですが、亮平さんは初日から”狂介節”が全開。言いづらいけど返したくなさそうな雰囲気が「パンティとは一心同体で……」というセリフにこめられていて、愛子ちゃんはそれを真面目に切り返す。それを見ている福田さんがとっても楽しそうなんですよね(笑)。
――誰よりも楽しんでいるのが福田監督かもしれませんね。
だと思います。私も福田監督とご一緒するのは楽しいですけど、イジられるから「何でですか!」と言い返すの繰り返しで。ある時は「女優としては好きだけど、清水富美加としてはそこまで好きじゃない」とまで言われました(笑)。でも、女優として呼んでいただけるだけでうれしいです。