・膣や外陰部の炎症

膣や外陰部に炎症が起きていると、挿入時の刺激で炎症がある場所に痛みが起こりやすくなります。疲労による免疫力の低下で粘膜が荒れていることもありますが、性器ヘルペスやカンジダ膣炎などの性感染症が原因の可能性も。

・子宮内膜症

子宮内膜症とは、本来は子宮の内側にできるはずの子宮内膜が、子宮筋層や腹膜、卵巣、卵管などのほかの場所にできる病気で、強い月経痛や過多月経などの症状を引き起こします。子宮内膜症が発生する位置やセックスの体位によっては、膣の奥の方に痛みを感じることがあります。なお、膣の奥が痛むときは、子宮内膜症のほかに子宮筋腫や骨盤内感染症の可能性もあります。

・処女膜などの形状異常

一般的に処女膜は初めての性交渉で破れるものですが、「処女膜強靭症」といって処女膜が厚すぎて破れない場合もあります。また、膣の入り口の左右にあるヒダ(小陰唇)が大きくて、挿入時に巻き込まれて痛みが生じる「小陰唇肥大」の可能性もあります。いずれの場合も、婦人科で手術を行えば性交痛は改善します。

パートナーとの話し合いも大切

性交痛があると女性側が我慢してしまいがち。しかし、前述した性交痛の原因の中でもっとも多いのは「膣が潤っていない」ことです。まずはパートナーに痛みがあることを伝え、二人で話し合って、セックスのやり方を変える、前戯(ぜんぎ)にかける時間を増やすなどして、膣が十分に潤ってから挿入するようにしましょう。産後や更年期のホルモンバランスの変化で潤いが不足している場合は、ローション、ゼリーなどの潤滑液を使用するという方法もあります。

それらの工夫をしても性交痛が治まらないときや、激しい痛みや出血を伴う場合は、病気の可能性があるので、早めに婦人科を受診してください。診察の結果、体の異常ではなく心理的な問題が考えられる場合は、婦人科のほか、専門のカウンセリングルームや心療内科、精神科で相談することもできます。

※画像は本文と関係ありません

記事監修: 善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など