ママドクターも助かる仕組み

往診ドクターとして活躍する田中純子医師

さらに注目すべきは、この取り組みが子育て中の女性医師たちによって成り立っていることだ。往診ドクターは一般の病院勤務に比べて勤務時間が短く、結果として子育て中でも働きやすい環境が整っている。2歳と5歳の子どもを育てながら往診ドクターとして働いている田中医師は、「夜の呼び出しがなく、土曜日曜に出勤しなくてもいいというのが助かります」と話した。

「病院は主治医制となっているので、担当の患者さんの具合が悪いと帰りづらいとか、夜に症状が急変したら呼び出されるということがあります。当直勤務についても、病院によっては免除してくれるところがありますが心苦しかったり、代わりに土日出勤をするということになったりします」とのこと。往診ドクターという働き方は、これらの点が解消できるのだ。

また、妊娠、育児、今後は自身の体調不良や介護などによって働き方に制約が生じる場合、医師が病院勤務に戻るステップにもなると考えているという。本格的に職場復帰を考える際にも、まったく働いていないのと、ちょっとでも働き続けているというのは、全然違うからだ。

「お母さんたちがもっと楽になる方法は何かないかと、前向きにどんどん変えていける職場で働けるのは楽しい。アンケートで、『往診に来てくれて安心した』という感想を目にすると、仕事をしていてよかったと感じます」と田中医師。子どもが安心できる自宅で診察できる点も、医師の視点から意義を感じているという。

要望に応えられないジレンマも

栗原さんは「サービスの内容を充実させていきたい」と語った

一方で課題もある。現在、提携している往診ドクターは5人。往診には移動時間が伴うので、外来に比べて診察できる子どもの数が少なくなる。現体制で希望者全ての家庭を往診することは難しい状況だ。栗原さんは「子どもの症状は刻々と変わるので、誰のところにどの順番で往診するかというのは、毎朝悩むところです。本当に診察が必要な子どもに医師を向かわせることができたのか、日々ジレンマを抱えています」と語った。

そんな中でも「4月から提携医師を7人に増やし、体制を強化していく」と栗原さん。将来的には、遠隔診療で登園許可証を発行できるようにするなど、さまざまなツールをいかして内容を充実させていきたいと話した。親はもちろんだが、病気の子どもの負担も軽減できる「訪問サービス」。今後のサービス拡大を期待したい。