――著書の中で、就職活動のときに金銭面での条件を聞いたら落ちてしまったというエピソードがありましたよね。

あれは某外資系企業なんですけどね(笑)。お金の条件を聞いた瞬間に顔が変わったのが分かりましたから、相当ムカついたんでしょうね。「金の話をここで聞くとは、何たる無礼者!」と。もちろん聞き方はあって、「カネ払いってどうなってるんですか?」なんてダメに決まってるけど(笑)、仮に最低限の配慮として相手に失礼にならないようにしても、今の日本はそういうことを聞いちゃいけないって雰囲気が根強いですよね。

木暮太一さん

――いい人であるのをやめましょうみたいなことも書いてあったと思うんですけど、嫌われることを恐れていては何もできないということでしょうか。

そうですね。いい子ちゃんであろうとすると突き抜けることはできないし、みんなと一緒に丸くなるしかないと思うんですよね。おとなしくまとまるのが本当の願望だったらそれで構わないんですけど、そうじゃなければ、自分の欲しいものは自分で取りにいかないともらえないぞっていうのが現状だと思います。

稼ぎたいなら言い訳をせず、まず動く

――例えば目標が「お金を稼ぐこと」で、でも自分に何ができるかわからないとか、何から始めたらいいか分からないと思っている人には、何かアドバイスはありますか?

分からないのか、それを言い訳にして動かないだけなのか、ですよね。実際、うまくいっている人でもやり方が分かっている人なんてほとんどいないですから。ユニクロの社長の柳井正さんが以前『一勝九敗』という本を出しましたが、結局みんな、10回勝負して9回負けてるんですよ。だから、100%完璧なプランになるまで考えぬくっていうのは、アホ中のアホだと思うんです(笑)。答えなんて出るわけがないので、結局いつまでたっても動かないということになる。だったら、何でもいいから思いついたものをやってみて、ダメだったところを次に修正すればいいんです。

――何ができるか分からないと言い訳をしていないで、とにかく動きなさいということですね!

何をやっていいか分からないって、体のいい言い訳だって思っちゃいますね。お金を稼ぐ術なんてたくさんある。そこに正解なんかないので、やるかやらないかです。

この前、ある上場企業で講演してきたんですけど、そこで最初に問いかけたんです。「成功者はかつていろいろ失敗をしてきた」というのが正しいかどうか、と。すると結構みなさん、これは正しいっていうんですよ。でも僕は次のスライドで「……は、間違い!」というのを出しました。

どういうことかというと、成功者はたしかにたくさん失敗してきているんですけど、"かつて"ではなく現在進行形で失敗している、ってことなんです。自分が失敗するとどうしても「あの人は全部うまくいってるのに、自分はうまくいかないんだ」って思っちゃうんですけど、そうじゃなくてみんな失敗しているんだから、同じなんだと。成功するまでやるかどうかが違いなんだという話をしたんです。

――なるほど。たしかに、成功者の「失敗」には気がついていませんでした。

鶏より卵が先に決まってる!

あと、ずーっと本を読んで何もしない人。成功ノウハウ本マニア、いますよね(笑)。僕、「ビジネス書はエンターテインメントである」ってずっと思ってるんです。ジャッキー・チェンの映画を見て「自分も強くなった!」みたいな気になるのと同じで、本を読んで「俺もこうすれば億万長者だぁ!」ってなって、本を閉じて、元の日常に戻っていくという。本来はそうなってはいけないんですけど、ほとんどの人にとってはそうなっちゃうんですよね。

――会議をすると仕事をした気になっちゃう感じと似ていますね。私も耳が痛いです。

みんな少なからずそうだと思いますよ。『一勝九敗』と一緒で、100%うまくできる人なんていないので、どんなにがんばってもどんなにがんばっても9回は負けちゃうということを理解して、そういう前提で動かないと萎えちゃいますよ。

「鶏が先か、卵が先か」っていう言葉がありますよね。あれって、環境を鶏が作っていれば卵は生まれる、でも卵を最初に産んでおかないと鶏や環境が育たない……っていうことじゃないですか。でも、それを言ってる人は一生迷ってると思います。言うまでもなく「卵が先」なんですよ。誰かが産むしかないんです。産んで育てて鶏にするんですよ。そうしたら育った鶏が卵を産んでくれる。「どっかから鶏が来ないかな?」とか待ってる時点でアウトですよね(笑)。だって、絶対来ないもん。卵が先なんだよ(笑)

――肝に銘じておきます(笑)。今日はありがとうございました!

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