「物心がついた時にはバックを作っていた」というダナイヤさんは、バンコク出身の若手バックデザイナー。イタリア政府の奨学生としてバッグデサインを学ぶため渡伊し、革製品の本場フィレンツェでインターンも経験。帰国後はタイ国内の有名ブランドでデザインに携わりながら、自身のブランド「DDG」を立ち上げ、アジアを中心に販売経路を広げています。DDGのバックに使う素材は、なんと敷物用のビニール! ユニークなバッグで世界を目指す彼女が、日本で最初に感じたこととは?

ダナイヤさん/タイ・バンコク在住/バッグデザイナー/29歳

■これまでのキャリアと今の仕事について教えてください。

小さな頃からものづくりが好きで、10歳の時には既に自分でバックをデザインして作っていました。バッグ作りにのめり込んだ理由をよく聞かれるんですが、正直自分でも良く分からないくらい、自然な流れで好きになったんです。バンコクの大学でテキスタイルデザインを学んだ後に、イタリア政府の奨学生としてバッグデサインを学ぶため渡伊。フィレンツェではレザー製品を家族でデザイン・製造・販売する会社でインターンシップも経験しました。

タイへ帰国後、タイシルクで世界的に有名な「ジム・トンプソン」や日本人にも人気のアジアン・ライフスタイルブランド「GINGER」でデザインや商品開発に携わると共にDDG(Daddys Girl)というビニール素材を使ったバッグブランドを立ち上げました。実家がビニール敷物用のファブリックを生産する工場を営んでいて、そこからヒントを得たんです。バッグの主な材料となるビニールは日本で一般的に売られている「ブルーシート」と基本的には同じ物ですが、耐久性がより優れています。日本では「敷物用のビニール」と言うとブルーを思い浮かべる人が多いと聞きましたが、父はクライアントのために多種多様な色のビニールを作っているんです。私の作品はそのビニールを主として、革製品などを組み合わせて作っています。

数年前からは、より多くの人に自分のバッグを知ってもらうために、ASEAN各国や日本で行われる展示会にも参加しています。東京で行われているファッション・フェアに参加するため何度か日本も訪れました。

現在は会社勤めを辞め、自身のブランドだけで食べていこうと奮闘中の毎日です。材料の買い付けからデザイン・作製・商談・販売まで私1人で行っていて、規模もまだまだ小さいのですが、少しずつバンコク市内のデパートで販売する機会なども増えてきました。価格は日本円で2,000円から15,000円くらい。残念ながら日本での販売ルートはまだ持っていないのですが、バンコクで暮らす日本人女性の中には、私のバッグをひいきにして下さっている方もいらっしゃるんですよ。

バッグの素材はなんとビニール! とても丈夫で、機能性とデザイン性を兼ね備えている

■現在のお給料はどうですか?

有名ブランドで働いていた時は、毎月安定してお給料を頂いていました。タイでも高い水準だったのではないかと思います。しかし今はオーダーが多い月もあれば少ない月もあるので、一概にいくらとは言えませんし、安定もしていません。でも今の「自分の好きな時に好きなものを作れる」という自由さは、何物にも代えがたいですね。

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

自由! その1点につきますね。朝は好きな時間に起きて、自分に合った時間に作業をする。会社のルールに縛られることなく生活できる自由さは1度経験すると手放せません!

それと、ものづくり、とりわけバッグ作りが小さな頃から大好きだったので、それを職業にできたことに幸せを感じています。

バッグ作りの面白いところですか? そうだなぁ、自分で思い描いたデザインにぴったり合う材料を探し、組み合わせを楽しみながら創作できるところですかね。どんなバッグにしようかと考えながら市場で素材を選ぶのはとても楽しい時間です。色も素材も異なる材料がバックとして調和の取れた1つの作品になった時は「やったぁ!」と叫びたくなるくらい嬉しいです。

■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

収入が安定しないことですね。今は自分1人で買い付け・デザイン・作製をしているので、目が回るほど忙しい時期があったかと思うと、ぱたりとオーダーが入らなくなる時もあります。それと、いかに消費者に気に入ってもらえるバッグを作るかという点でも頭を悩ませています。

■日本人のイメージは? あるいは理解しがたいところなどありますか?

展示会などで何度か日本を訪れたことがありますが、他の国と比べ英語表記がなく、正直最初はとても戸惑いました。ただ何度も足を運ぶうちに日本が大好きに! 皆さん礼儀正しくてマナーをよく守り、街は清潔で食べ物も美味しくて、ものづくりはとても繊細で…。あぁ、日本の話をしていたら、すぐにでもチケットの予約をしてもう1度行きたくなってきちゃった!(笑)

ビジネスの面では、私のバッグを見ている時に表情を全く変えないので、何を考えているか読み取れず苦労しました。タイや他の国での商談では、思ったことをストレートに言葉に出して伝えます。良い点を褒めてもらえるのはもちろん、改善すべき点があればアドバイスをもらって、その場で修正したり、今後に生かしたりすることもできるので、私はこの方法が好きです。日本のマーケットにも今後販売を拡大してゆきたいので、辛口でも良いから意見を聞ける機会があればいいのにと思っています。

■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何ですか?

ゲリラ豪雨が日本を襲った際にニュースで目にした映像に本当にビックリしました。洪水で浸水した地下鉄の通路の様子だったのですが、その水が何ときれいだったことか!! 日本人にはあまり知られていないようですが、外国人の間では「きれいすぎて洪水ではなくプールのようだ」「飲めそう!」とネットでかなり話題になっていたんですよ。

バンコクも数年前に大洪水がありましたが、比べものにならないほど濁っていました。日本人がみんな公共衛生ルールを守ってゴミのポイ捨てなどをせず、常に道路や公共の場が綺麗に保たれているからだろうと、改めて日本人を尊敬した出来事でした。

■あなたの「マストビジネスアイテム」を教えてください。

鞄の中に常に入っているのは、携帯、お財布、リップバーム、チューインガム、お気に入りの本。それと、ノートと鉛筆です。良いデザインのアイディアが浮かんだ時にすぐに書き込めるよう、どこに行くにも必ず持ち歩いています!

浮かんだデザインのアイディアをすぐにスケッチできるよう、ノートと鉛筆は常に持ち歩く

■休日の過ごし方を教えてください。

忙しさにもよりますが、週2日は休むようにしています。休みの日は甥と一緒に遊んだり、インスピレーションを得るために手芸製品を扱う市場に買い物に出かけたりします。

それと、お洒落なレストランやカフェに行くのも大好き! 日本人観光客にも人気のエンポリアム・デパートの裏手にある「KARMAKAMET DINER」はお洒落でおすすめです。それと日本人の友人にも好評なのが、落ち着いた店内で本格タイ南部料理が食べられる「Baan Ice」。バンコクのレストランの話をしだしたら止まらないから、もう1回分記事が書けるんじゃないかな?(笑)

■将来の仕事や生活の展望は?

自分のバッグを世界中の人に使ってもらいたいです。将来的には米国や欧州でもビジネスをしてみたいと思っていますが、当面はアジアに集中する予定です。今はオンライン販売を開始する準備を進めると共に、日本での販売経路を拡大するためパートナーや代理店を探しています。今後は香港や台湾などにも広げ、みんながハッピーになるバッグを作っていきたいです!

オフタイムは甥と遊んでリラックス。丈夫な自家製バッグは、甥を入れてもびくともしません