SMAPをめぐる報道は、いまだやむ気配がない。『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)での生謝罪までは、ファンならずとも「解散してしまうかも」「もう見られなくなったらどうしよう……」と寂しさを覚えた人は多かったのではないか。

今回の騒動で浮き彫りになったのは、「SMAPは日本人にとって思っていた以上に大きな存在だった」ということ。騒動は完全に鎮静化したわけではなく、まだまだ予断を許さないだけに、ここではエールを送る意味でSMAPの功績を振り返っておきたい。主にテレビ番組におけるグループとしての活動を振り返っていく。

現在につながる『音松くん』

1980年代に大きな盛り上がりを見せていた音楽番組が、アイドルブームの終焉とともに激減。1990年代に入ると、男女を問わずアイドルが活躍する番組がほとんどなくなってしまった。

1991年にCDデビューしたSMAPも例外なく苦戦していたが、その状態を切り拓いたのが土曜深夜放送の『夢がMORIMORI』(フジテレビ系)。「歌って踊る」通常のアイドル像では生き残ることが難しい状況の中、SMAPは『おそ松くん』のパロディコント『音松くん』などでハジけた姿を見せた。

そのとき、中居=青、木村=赤、稲垣=桃、草なぎ=黄、香取=緑と、今ではアイドルで当たり前になった「各メンバーを覚えやすくするためにイメージカラーを決める」という方法が採用されていたのも印象深い。そして、このイメージカラーは、のちの『BISTRO SMAP』につながっていく(中居がオーナーのため、稲垣のみ青に変更)。

そして、「アイドルのコントがこんなに面白いのか!」という印象を決定づけたのが、ご存じ『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)。中居のマー坊、計算マコちゃん。木村のペットのPちゃん、古畑拓三郎。稲垣のゴロクミ、稲小路ごろまろ。草なぎのツヨシかじり虫、デビールマン。香取のカツケン、市川カニ蔵など、強烈なキャラクターを連発して、話題をさらうとともに、芸人たちのコント番組と比較された上で称賛を集めた。

世界中の大物が会いにくる番組

さらに、『BISTRO SMAP』では、「アイドルが本格的な料理コーナーを持つ」という新機軸に挑戦。当初は懐疑的な見方が大半だったが、その後に訪れる芸能人料理番組ブームの礎を作った。

チアやダブルダッチなどに挑戦し、「成功しなければ帰れない」という罰ゲーム付きの『歌え!アイドルキックオフ』も、当時のアイドルとしては斬新。各メンバーと主演級女優がカップルになってミニドラマに挑む『本当にあった恋の話』も画期的なトライだった。

また、同番組で世界のスーパースター、マイケル・ジャクソンとの共演が実現したのも快挙と言える。何しろマイケルが日本のテレビ番組に出演するのは初めてであり、バラエティ番組に出演するのも世界初だったというからスゴイ。

その他にもマドンナ、レディー・ガガ、マライア・キャリー、バックストリート・ボーイズなどのアーティスト、トム・クルーズ、ブラッド・ピット、キャメロン・ディアス、ハリソン・フォード、リチャード・ギアなどの俳優、ウサイン・ボルト、デビッド・ベッカム、白鵬などのアスリート。小泉純一郎、麻生太郎、安倍晋三の内閣総理大臣経験者やゴルバチョフなどの政治家とも共演した。

かつて、ここまで各界の大物が出演した番組はなく、いちバラエティ番組のオファーを受け入れたのは、「国民的タレントであるSMAPの冠番組だから」に他ならない。

大型特番になるほど、輝きが増す

大ブレイクしたSMAPはメンバー全員がドラマ主演するなど、個別の活動が活発化していくが、「ここぞ」の特番で国民的タレントらしい姿を見せている。

例えば、『24時間テレビ』(日本テレビ系)では1995年に「アイドル初の番組パーソナリティー」、『FNS27時間テレビ』(フジテレビ系)では2014年に「アイドル唯一の総合司会」を務めるなど、後輩グループだけでなく、タレント全体の道を切り開いた。特に後者は、オープニングで「生前葬」を行ったほか、木村が流血した水泳大会などで、アラフォーアイドルの可能性に挑戦する姿が絶賛された。

そして、忘れてはいけないのは、年末の風物詩となっている『さんま&SMAP!美女と野獣のクリスマススペシャル』(日本テレビ系)。1995年から21年間にわたって続いている同番組は、生放送であるにも関わらず、最近でも「嘘を告発」「黒い噂を大検証」「嫉妬する人物」などの攻めた内容を貫いているのがスゴイ。

そもそも、大物芸人とアイドルグループが「1対5の図式」で冠番組を持つという形は異例であり、これも「SMAP全員がスターであり、さんまとサシで渡り合えるから成立する」番組と言っていいだろう。現在ならTOKIOや嵐などのメンバー全員が、さんまとサシで渡り合えるはずだが、当時は考えられないことだった。

それまでアイドルグループは、センターとその両脇の2~3番手が中心で人気の大半を占め、「その他のメンバーは顔と名前が一致しない」のが当たり前。しかし、SMAPが「全員がスター」のグループになったことで、アイドルや芸人の「その他」扱いだったメンバーにも脚光が当たるようになった。

昨年、『NHKのど自慢』の70周年特別応援企画として"スペシャルMC"を務めたことや、『NHK紅白歌合戦』の大トリを5度も務めたことも含め、SMAPがテレビ局やジャンルを問わず、さまざまな特番を盛り上げてきたのは間違いない。

5人でもドラマ出演できる強み

SMAPが「特番に強い」のは、俳優として出演するドラマでも同じ。1997年に放送された『僕が僕であるために』(フジテレビ系)のころは若々しい群像劇を見せていたが、1999年の『古畑任三郎スペシャル「古畑任三郎 vs SMAP」』(フジテレビ系)ではSMAP本人役で出演し、古畑を相手に堂々と渡り合って株を上げた。

さらに、2001年の『世にも奇妙な物語 SMAPの特別編』(フジテレビ系)では「各メンバーのオムニバスドラマ」に挑戦。このように人気ドラマとのコラボも軽々とこなす柔軟性も、SMAPの持つ魅力の1つと言えるだろう。

この2作がゴールデンタイムで再放送されたときに、それぞれ視聴率22.7%、18.3%を記録したのも驚かされた。「人気と質を兼ね備えたものは、何度放送しても見たくなる」という意味では、ジブリ映画に近いものがあるのかもしれない。

その後、印象的だったのは、2010年の『毒トマト殺人事件』(テレビ朝日系)。当作は『SMAP☆がんばりますっ!!』(テレビ朝日系)の撮影時に、SMAPには極秘で制作された"ドッキリドラマ"だったが、完成したものを見ると、しっかりとしたミステリー作品になっていた。

そして、今回の独立騒動であらためて注目が集まった2014年の『俺たちに明日はある』(フジテレビ系)も彼ららしい革新的な内容。ドラマは「SMAP解散説」をテーマにしたものであり、解散騒動で日本中が騒然となる様子をフェイクドキュメンタリーの形で描いていた。

いまだに5人全員が出演するドラマがあり、その内容も前例のないものばかり。俳優業においても、「芸能界のパイオニア」であるSMAPらしい活動を続けてきたのがわかる。

彼らの存在にふれない日はなかった

この25年間を振り返ると、5人そろって出演するだけでなく、朝ドラ『梅ちゃん先生』の主題歌や、報道番組『Nスタ』のテーマソングに選ばれるなど、歌声でのテレビ出演も多かった。

その他にも、数十社ものCMに出演するなど、SMAPの存在にふれない日はなかったような気がする。その功績は、何かにたとえることも、今後誰かが台頭したとしても、色あせることはない。

『ビビット』(TBS系)で真矢ミキが語っていたように、「25年もの間、これほど楽しませてくれたことや、まずは存続の道を選ぼうとしてくれたことに感謝したい」と思う人は多いだろう。ここでは書き切れない作品も含めて、視聴者もテレビ業界人も、彼らの功績をあらためて考えてみてはいかがだろうか。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超える重度のウォッチャーであり、雑誌やウェブに月間20本超のコラムを執筆するほか、業界通として各メディアに出演&情報提供。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。