過度の飲酒は脳出血などの脳卒中を引き起こしやすくなる

脳の血管がつまったり破れたりすることで起きる疾病・脳卒中は、急激な寒暖差で血圧が急上昇しやすい冬に症例が多くなりやすい。そのため、日ごろから血圧の変化に対して敏感になっておくことが発症を防ぐために必要と言える。

本稿では、高島平中央総合病院の福島崇夫医師の解説をもとに、脳卒中が起きやすいシーンや、その防御策について紹介していく。

各症例が発症しやすい状況

脳卒中は、脳梗塞と脳出血とくも膜下出血に分類できる。脳梗塞は血管がつまるなどして脳組織が酸素や栄養不足に陥り、その部位が死んでしまうことを表す。脳出血とくも膜下出血は、脳内で出血を起こしている状態を意味する。

福島医師に、発症が多い時間帯やシチュエーション例を疾病ごとに解説してもらったので参考にしてほしい。

脳梗塞

「時間帯としては午前中の発症が多いです。脳卒中全般は通常、日中の10~12時に発症ピークを迎えますが、それは日内変動のある血圧値がその時間帯に高くなるからとされています」。


特に昼間前後は血液の粘調度などの要因も加わり、脳梗塞のリスクが高まりやすくなる。水分を補給するなどして、少しでも血液がドロドロにならないよう努めよう。

脳出血

過度の飲酒は脳出血・くも膜下出血などの出血性イベントを引き起こしやすい。多量の飲酒は血圧を上昇させるし、飲酒は「血小板凝集を抑制させる」「線溶系を高進させる」など、出血を促す働きがあるためだ。


「飲酒と脳卒中リスクで言いますと、日本酒2合以上のアルコールを毎日摂取すると、脳卒中リスクが1.4倍になるというデータがあります」。

くも膜下出血

スポーツや排便、性行為などのアクティビティーをしているときに発症しやすい。これらの行為時は血圧が上昇し、くも膜下出血の原因となる「動脈瘤(どうみゃくりゅう: 動脈壁の局部がこぶ状に拡張した状態)」の破裂を引き起こしやすいためだ。


「これらの例に加え、科学的データはないのですが、実臨床では気圧の変化時や季節の変わり目などにも発症例が増えている感覚があります」。

「健康的な生活」が脳卒中予防には重要

これら3つの疾病は、血圧が高くなる午前中に発症例が増えているという点から、「余分な血圧上昇を招かない」というのが発症リスク低減の大前提となる。そのため、防御方法は非常に多様だ。

日本人は高血圧を招く食塩に影響を受けやすく、食生活では食塩を控えることが大切。付随して、排便時のイキみを減らすため、水分や食物繊維を摂取して便通改善を図ることもよいし、肥満防止のための適度な運動もお勧めだ。

「過労やストレス、寝不足などはストレスホルモンを分泌しますが、ストレスホルモンは血圧上昇に作用するため、休息を取ってリラックスすることも大切ですね。喫煙や飲酒を控えるのも、立派な脳卒中予防策です。それと、女性の場合は経口避妊薬の内服にも注意してもらいたいですね。女性ホルモンの内服は血液の凝固作用を高めるため、脳梗塞が起こりやすくなると言われています」。

冬は寒いため、休日は部屋にこもりグータラしてしまう人も少なくないだろう。そんな運動不足の状態で、おつまみ片手の飲酒や喫煙を重ねていってしまえば、自然と脳卒中発症リスクも高まる。いわゆる「健康的な生活」が脳卒中予防には重要となるため、できることから始めてみてはいかがだろうか。

※写真と本文は関係ありません

記事監修: 福島崇夫(ふくしま たかお)

日本大学医学部・同大学院卒業、医学博士。日本脳神経外科学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医。大学卒業後、日本大学医学部附属板橋病院、社会保険横浜中央病院や厚生連相模原協同病院などに勤務。2014年より高島平中央総合病院の脳神経外科部長を務める。