日本能率協会マネジメントセンターが販売する「NOLTY」は、もともと1949年に「能率手帳」として発行された。2013年に「NOLTY」へとブランド刷新し、3年目を迎えている。67年もの歴史のなかで、時代背景や働き方に合わせて手帳のレイアウトや構成も変化してきたという。そこで今回は日本能率協会マネジメントセンター NPB事業本部 販売促進部 矢野真弓さんに、手帳からみえる働き方の変化や、過去と現在における手帳に対する意識の違いなどについて伺った。

働き方とともに変化してきた手帳の内容

――誕生当初の手帳にはどのような特徴があったのでしょうか

当時、手帳を使っていたのは主に働く男性でした。手帳はビジネスツールとして定着していたので、あまりプライベートのことを書き込む習慣がなかったんです。いまは週末の欄にプライベートの予定を書き込んでいると思いますが、当時の手帳の日曜日の欄は「今週の目標」を書くスペースも兼ねていました。

日曜日の欄に「今週の目標」と印字されている

誕生当初からある小さい手帳は当時の官製はがきと同じサイズでした。電話もメールも普及していない時代だったので、人々ははがきを送り合って仕事上のやり取りをしていました。だからこそ、ビジネスの必携品だったはがきをぴったり収納できる手帳サイズが誕生したんです。

また当時は、大型のデスクダイアリーも人気でした。当時はパソコンがなかったので、デスク全体を物書きのスペースとして使えたんです。パソコンが普及し始めると、スペースを取るようになってきたので、中間サイズの手帳が登場するなど、サイズの多様化につながりました。

昔の官製はがきと当時の能率手帳

手帳の時間軸の表記も、一時間刻みから30分刻みに変化しています。昔の「能率手帳」の記入例をみると、午前に予定が1つ、午後に予定が1つくらいしか書かれていないのが印象的です。当時は時間を「午前」と「午後」で大きく捉えていたんですね。現在では15分単位の打ち合わせが入ることもあるように、より時間管理が緻密になってきています。

昔の能率手帳に印字された記入例

年齢早見表の最初が江戸時代!

――手帳の歴史で、働き方の変化がみえてくるというのは面白いですね

手帳はその時代の社会的な環境や、ビジネスのスタイルに大きく影響されています。ほかにも、誕生当時の「能率手帳」は、週間ページが「日曜日始まり」でした。当時は土曜日も仕事をしていたため、「一週間のはじまりは日曜日」という考え方が強かったんです。週休二日制が定着してからは、土曜日と日曜日をまとめて、週末の予定として管理したいニーズが増えていきました。「月曜日始まり」の手帳になったのは1990年版から。「NOLTY」の歴史の中でも、かなり大きな変更でしたね。

昔と今、手帳に対する意識の変化は?

――現在の手帳は、昔と比較してどのような変化がありますか

最近の手帳は、仕事以外のことも書き込む方が多くなっています。色も昔は黒ばかりでしたが、最近では男性もカラフルなものを好むようになり、カラーバリエーションも豊富になりました。また、昔のサラリーマンは胸ポケットに手帳を入れたり、小さめのセカンドバッグを持ったりする人が多かったですよね。現在では、大きなサイズのバッグを持ち歩く人が増えてきたので、ポケットサイズにこだわらず、少し大きめの手帳を持ち運びする人も増えています。

毎年、当社で行っている手帳に関する意識調査「あなたの手帳の流儀」では、20~30代の男性は手書きに対して憧れを抱いている傾向がありました。手帳を使いこなす人は仕事ができるという、ポジティブなイメージができてきているんです。

例えば、60代と20代では、手帳に対する意識が全然違います。60代では手書きという行為に特別な意識をおいていない傾向にあります。一方、20代は普段からデジタルツールに触れる機会が多いので、特別なことを手書きしたいという人が多数を占めました。

予定だけでなく過去の記録をする人も増えてきています。ライフログとしての使い方もありますし、仕事で後々何か問題が起きたときや追及されたときの証拠として、自分がどのような仕事をやっていたのかを書いている、という話もきいたことがあります。会議で出た結論を書き残したりすると、あとで参照もできていいですよね。

今後の手帳に対する意識の変化は?

――これからの手帳を活用する人の変化を、どのように予想されますか

今後、生活のさまざまな場面で、デジタルツールの活用がますます増えてくるという予想をしています。しかし、我々としてはデジタルツールを競合だと思っていません。なぜなら、デジタルツールと手書きの手帳では、求められる役割が異なると思っているからです。例えば、予定を検索して閲覧したり、予定を繰り返して入力する場合は、デジタルツールが便利だと思います。

一方、マインド面においては手書きの方が適していると思います。嬉しかった事や悲しかった事など、感情を記したり、あるいは自分で意識づけたいことを記入するときなどに、より「手書き」に価値が置かれると予想しています。

――ありがとうございました