台北と言うと、経済・政治・文化の中心地として観光客にも人気な台湾屈指の大都市。その台北市内に、駅に降り立つとふわりと硫黄が香るこじんまりとした温泉郷があることをご存知だろうか。中には日本人にとってもどこか懐かしい銭湯風の温泉も。そんな「北投温泉」にて、地元民の目線で"温泉三昧"してみた。

煙もくもくの源泉「地獄谷」は日本人の"温泉心"をくすぐる

沸き起こる湯気に香る硫黄

北投温泉へは台北の中心地から約40分。運行間隔は数分程度という使い勝手のいいMRT(新交通システム)で、淡水線「北投駅」から新北投支線で一駅の「新北投駅」に向かう。この新北投支線は北投駅と新北投駅間だけの運行で、車両は他の路線では運行されていない特別ラッピング仕様となっている。車内には五右衛門風呂をイメージしたモニター付きの座席もあり、ここで北投温泉情報をチェックできる。

台北市内に張り巡らされたMRTは切符の代わりにトークンを使用する

新北投支線で運行されている車両は特別なデザインになっている

車内も通常の車両とは異なり、五右衛門風呂をイメージしたモニターも設置されている

北投温泉も台北市内ではあるもの、その雰囲気は台北市内の中心地などとはガラリと異なる。北投温泉は19世紀末にドイツ人によって発見され、その後、日本統治時代に日本文化が入り込み、北投に台湾初の温泉旅館「天狗庵」が建てられた。現在、北投には台湾の人たちにも人気な温泉旅館「日勝生加賀屋」など、随所に日本を想起させる風景が広がっている。

地元民の朝は露天温泉から始まる?

とは言え、北投は街歩きに便利な程度の"観光色"で、"地元色"もしっかりある。立ち寄り湯を楽しむためか、町中ではビニール袋片手に歩く年配の方をよく見かけた。そんな街の中心に位置する「北投公園」には、造形美も楽しめる「台北市立図書館北投分館」や温泉の歴史を今に伝える「北投温泉博物館」、書道家・于右任が避暑地として過ごしていた邸宅「梅庭」、そして、大衆混浴露天風呂「北投温泉親水公園露天温泉(千禧湯)」などがある。

新北投駅周辺マップ。1時間もあれば大体のエリアをめぐることができる

街の中心に位置する「北投公園」の中にはいろんな施設が設けられている

緑に囲まれた「台北市立図書館北投分館」

「北投温泉博物館」で台湾の温泉の歴史を知る

ここでコンサートなどが行われるのだろうか

遊歩道の手すりにも温泉デザインが

北投公園の先、新北投駅から歩いて15分のところには、湯気を立ち上らせながらとめどなく湯が湧き出る「地獄谷」が待ち構えている。地獄谷の面積は約3,500平方メートルあり、熱いところでは湯は90度以上にも達する。温泉の色は翡翠に似た淡いグリーンで、大量の硫酸硫黄物および微量の放射線物質「ラジウム」を含む青○(「石黄」で1字)泉となっている。地獄谷の青「石黄」泉には療養やリハビリの効果が期待できるという。この地獄谷から流れる温泉が川となって町中に流れている。

「地獄谷」では昔、一般の人も温泉卵をここで作ることができたよう。現在は安全面と泉質保全への配慮から禁止されている

地獄谷の周囲には温泉卵の出店も。また、地獄谷の入り口には温泉で使えるアイテムとともに米投土産をそろえたショップもある

そんな湯をたたえた露天風呂の千禧湯は、傾斜地を利用して段々畑のように温度の異なる5つの岩風呂が用意されている。入浴料が40台湾ドル(約150円)という安さも魅力だ。この露天風呂は、5:30~7:30、8:00~10:00、10:30~13:00、13:30~16:00、16:30~19:00、19:30~22:00と入れ替え制になっているのでご注意を。さらに、水着が必須になっているが、忘れても受付側では水着の販売もあるので安心していただきたい。訪れた時は、男性用は390台湾ドル(約1,460円)、女性用490台湾ドル(約1,830円)から用意されていた。

緑の中の露天風呂「千禧湯」は水着必須。現地でもわりと安価に購入できるが、できれば用意しておきたい

訪れたのは土曜日の朝9時。常連らしき人たちが手慣れた仕草で入場していく。ちょっとのぞいてみると浴場はかなりの混雑具合で、観光客というよりも地元の人たちが習慣として湯を楽しんでいるように見受けられた。浴場の側にはコインロッカーもあるので、ふらっと立ち寄ってみるのもいいだろう。

温泉が流れる川が北投公園内に流れている。遊歩道も整備されているので歩きやすい