20代、30代で発症するニキビには、ストレスや睡眠などのさまざまな原因がある

ニキビといえば、「思春期特有の肌トラブル」と考えている人も少なくないだろうが、実は20代、30代にとっても決してひと事ではない。今回は南青山皮膚科 スキンナビクリニックの院長である服部英子医師に、ニキビができるメカニズムや「大人ニキビの原因」などについて伺った。

ニキビができるメカニズム

思春期は目から鼻にかけてのTゾーンに、成人してからはあごや口の周りにできやすいニキビ。その対策の一環として、まずはメカニズムをきちんと理解する必要がある。

私たちの全身には皮脂をつくる「皮脂腺」があるが、「アンドロゲン」という男性ホルモンによって皮脂腺の活動が促される。次に毛穴閉塞(へいそく)の原因となる異常な角質増殖が起き、ニキビのでき始めである面皰(めんぽう)が形成された後、毛包(毛根を包む袋状の上皮組織)内でアクネ菌が増殖する。このアクネ菌が、いわゆる「ニキビ菌」だ。このアクネ菌などが炎症を起こす物質を産生するため、肌が赤くなってしまうわけだ。

ニキビを治しやすいのは白ニキビの時期

一言でニキビと言ってもいくつか段階があり、「閉鎖面皰(白ニキビ)」「開放面皰(黒ニキビ)」という炎症を伴う前の段階と、「ざ瘡(ざそう: 赤い炎症ニキビ)」「ニキビ後の赤み(ニキビ菌による炎症はおさまっている)」「瘢痕(はんこん: ニキビ後の凹み)」の計5段階がある。

毛穴が閉じている白ニキビは、肌が小さく盛り上がっているものの、肌色は通常と変わらない。一方、毛穴が開いている黒ニキビは内容物が露出し、そこに汚れがたまり黒ずんで見える。この黒ニキビに炎症が加わり、赤みを帯びてブツブツした状態を私たちは一般的にニキビと呼ぶ。

「赤くなってしまったら外用薬(塗り薬)による抗生物質を使いますが、その前の白ニキビの段階では代謝を高める薬を用いて早めに治すことができます。ただ、ご自分でうみを出してみたり、ガリッとひっかいたりするのは炎症を引き起こしてしまうので、それは控えていただきたいですね」。

睡眠不足やストレスが大人ニキビの原因に

中高生で発症するニキビは、思春期に突入したことによるアンドロゲンの過剰分泌が原因であるケースが多い。ただ、大人ニキビの原因は多岐にわたり、特に睡眠不足が多いのではないかと服部医師は指摘する。

「寝不足でニキビを悪化させてくるケースは多いですね。徹夜続きとか、連日帰宅が遅くなったとかがそうで、女性の場合は化粧を落とさずに寝る日々が続いた場合も発症しやすいです」。

その他では、「過度のストレス」「栄養面が偏った食事」なども原因として挙げられる。近年は、服部医師のクリニックに卒業論文執筆や就職活動でストレスを抱えた大学生が、ニキビを訴えてくるケースがよく見られている。さらに、黄体ホルモンも皮脂を刺激すると言われているため、女性の場合は同ホルモンが増加する生理前にニキビになる人も多いという。

「患者さんの多くはニキビの原因を何か1つに求めがちですが、複数の要因が積み重なり、ある日一気にニキビとなって訪れてくるので、普段の生活から気をつけてほしいですね」。

※写真と本文は関係ありません

記事監修: 服部英子(はっとり ひでこ)

東京女子医科大学卒業。皮膚科専門医。日本皮膚科学会、日本レーザー学会、日本臨床皮膚科学会、日本アレルギー学会に所属。大学卒業後に東京女子医科大学病院やJR東京総合病院の皮膚科に勤務した後、2005年より南青山皮膚科 スキンナビクリニックの院長を務める。