■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

デザインをパッと見て、伝えたいことの世界観を理解してもらわなければいけません。つまり、クライアントが伝えたいことが何か、その意図を一瞬でわかるように表現するのがデザインです。そのためには僕自身が案件の中身を深く理解していなければいけない。日々勉強に追われています。

また、クライアントや仕事仲間である日本人と、幼少時代に経験したものを共感できないときは寂しいですね。「これ、懐かしいよね」と言われても、僕にはわからない。この穴埋めをするために、毎年、年末にテレビで放送される「日本の○○総集編」を見て勉強しました。不思議なもので、20年も見続けると、自分も経験したような気持ちになっています。子どもが生まれたら、さらに幼少時代の思い出も補えるようになりました。

映像が空中に浮遊する特殊技術を使った作品「森の妖精」。展示作品のなかで注目を集めた

■日本についてのイメージを教えてください。良いところはどこですか? あるいは理解し難いところなどありますか?

日本人はナイーブだと思います。行動する前に考え過ぎますね。でも最近は僕も、日本人みたいに慎重になりすぎているなぁと思います。美術面でみれば、ナイーブさはプラスになると思いますが、ビジネス面でみるとワークホリックにつながると思う。マレーシア人で仕事中毒はあまりいませんね。家に早く帰りたいし、そのために早く仕事を終わらせることばかり考えていますから。

■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何? それに対し、どう感じましたか。

憲法改正など日本政府の政策が気になります。海外では「日本は戦争をしたがっている」と読み取っている人も多いように感じます。実際、マレーシアの友人にも聞かれたことがあります。

■あなたの「マストビジネスアイテム」を教えてください

マレーシアの家族の写真。僕が日本に来る前に撮影したもので、20年間ずっと、財布に入れています。2年前に同じ構図で撮影したので、2枚になりました。僕にとって家族は、チームのようなもの。タン家というチームが、いつでもどんなときでも、僕をバックアップしてくれている。そう思うと力が湧いてくるんです。

1996年の来日以来、ずっと財布に入っている家族写真。右は2013年に同じ構図で撮影したもの

■休日の過ごし方を教えてください。

週に1日は、できるだけ家族に時間を割くようにしています。晴れた日にはピクニックに行きますね。

休日だけではなく、毎日の家事は妻と分担しています。幼稚園の送り迎えは僕の役目。夜9時に子供に絵本を読みながら寝かしつけて、僕も一緒に就寝。朝3時に起きて仕事、というのが僕のワーキングスタイルです。

■将来の仕事や生活の展望は?

将来は、両親、兄弟をふくむ家族みんなで、ひとつの仕事をしたいですね。そうしたら24時間、家族と一緒にいられるから。僕の人生で一番大事なのは、家族と一緒にいる時間なんです。以前テレビ番組で、亡くなる間際の人に「思い残したことは?」と聞くと「もっと家族と一緒にいればよかった」と後悔している姿を見ました。僕はそんな思いをしたくない。だから家族を大事にしたいんです。

毎年結婚記念日には、挙式した吉田神社で家族の記念写真を撮影