電話応対・話し方のスペシャリストが集まり、「世界最高のコンタクトセンター」を目指しているというJALナビア。一日で1,000便以上の飛行機が飛ぶJALで、お客さまの搭乗券のご予約から空の旅に関するアドバイスまで、電話応対によるサポートを行っている。そんな同社に、航空業界ならではの「人に伝わる話し方、上手な聞き方」のアドバイスをもらった。

日々電話でお客さまと向き合うプロ

ご登場いただいたのは、JALナビア 東京センター国際部所属の石井真由美さん。入社以来13年間オペレーターとして活躍している電話応対のプロフェッショナルだ。まず、JALナビアさんでの電話応対とは、どのような業務なのか。

石井さん「基本的には、お客さまからの質問や予約に関する様々なご相談を、電話でお受けし、サポートさせていただいています。ご搭乗予約だけでなく、空港に関するお問い合わせや、出発までの細かいお問い合わせに対し、正確に丁寧に応じることを心がけていますね。例えば、手荷物に関する規則でしたり、乗り継ぎの手続き方法、ご予約時のインターネットサイトの操作方法など、ご相談内容は多種多様です。応対時間は、空港内のご案内ならば数分で終わることもありますし、内容によっては1時間以上お付き合いいただかなければならないものもあります。平均すると1日30名ほどのお問い合わせをお受けしていると思います」

まずは心構え。「心で聴く」という極意

コンタクトセンターは、お客さまが最初に接する窓口となる。そのため、オペレーターの第一印象は非常に重要で、「顧客満足度No.1」「世界最高のコンタクトセンター」を目指しているならば、ここで顧客心理をしっかりとつかめるテクニックが必要となるはずだ。声や話し方だけで、どのようにして第一印象を作っていくのか?

石井さん「テクニックもさることながら、最も大事なのはおもてなしの心を持って接することですね。お問い合わせに答えるだけではなく、より大きな満足感を空の旅から得られるようにする。それが私たちオペレーターのミッションだと考えています。大前提として、常に感謝の気持ちを忘れず、伝統、革新、日本の心を大事にするというJALならではのマインドをもって、お客さまのお話を伺っています。それは『心で聴く』という表現で、社内でもよく使われているのです」

口角を上げて脳を錯覚させる

取材していると、石井さんの特徴の一つに、声がとても明るいことに気付く。丁寧な話し方はもちろんのこと、聴いているとどこか軽やかな気持ちになれるような声質だ。声質そのもののトレーニングなどをしているのだろうか。

石井さん「実はオペレーターのデスクには小型ミラーがついていまして、そこで笑顔を確認しながら、必要に応じて笑顔のチェックをしながらお話させていただいています。大事なのは口角を上げること。表情筋を意識することで、脳が楽しげな会話をしていると錯覚し、声のトーンが穏やかになるとともに印象のいい声が自然に出るようになるんです。これを私たちは『笑声(えごえ)』と呼んでいます」

気持ちを切り替えるスイッチを持つ

明るく感じのいい第一印象を作るために、まずは自分が笑顔を浮かべるということを意識的にやっているという石井さん。まずは形からというわけか。しかし、オペレーターだってひとりの人間。笑顔になれないときもあるのでは?

石井さん「そういうときは、何かスイッチを持っておくと良いのではないでしょうか。たとえば、私であれば電話応対用のヘッドジャッキを着けると自然に気持ちが切り替わります。それが癖のようになっていますね。あとは、お客さまの状態を常に頭の中でイメージすることが大事です。表情が見えないぶん、声のトーンでどういう状況にいるかを想像するしかありませんが、今どんな表情でいらっしゃるだろうかと意識するようにしています」

まとめ

石井さんのお話からわかったのは、やはり自分のマインドをできるだけ明るい方向に持っていくことが大事なポイントということ。意識的にでも笑顔を作って話をするのはもちろんのこと、自分も相手も話して気持ちいい精神状態になれるよう、話す前に心の切り換えをすることも大事なようだ。