4月9日の期限までにギリシャは約5億ユーロのIMFへの返済を完了した模様だ。ギリシャは政府の資金が底を突きつつあり、公的な積立金を取り崩して支払いに充てているとされる。9日のIMFへの返済は無事済んだものの、ギリシャは、次々と到来する支払期限をクリアすることができるか。デフォルト(債務不履行)に陥る前にユーロ圏から支援金を受け取ることができるだろうか。
ギリシャは2010年以降、2回計2,400億ユーロの財政支援を受けてきた。支援は数回に分けて実行されたが、2014年中に支払われる予定だった最後の72億ユーロが12月以降のギリシャの政治混迷によって実施されていない。これを受け取ることが出来れば、ギリシャは当座をしのぐことができるはずだ。ただ、6月末に現行の支援が終了した段階で、新たな支援が必要になるとの見方は根強い。
ギリシャはユーロ圏(ECBやIMFを含む)とギリギリの交渉を続けている。ギリシャは4月1日に経済改革案の詳細なリストを提出したが、ユーロ圏からは支援金支払いを承認するにはまだ内容が不十分と判断された。ギリシャは4月24日のユーロ圏財務相会合までに合意に達したい意向だ。
ギリシャの主な支払期限は下表の通り。「短期国債借り換え」は、既存の短期国債を保有する投資家が償還時の借り換えに応じなければ、新たな買い手を探す必要が出てくる。これまではギリシャの民間銀行が短期国債のかなりの部分を購入し、それを担保にECBからELA(緊急流動性支援)を受けるという自転車操業に近い状況が続いていた。ECBはELA枠を段階的に引き上げてきたが、ギリシャの民間銀行に対して短期国債の保有額をあまり増やさないように「指導」しているようだ。
そうしたなか、一部では過激な報道も見受けられる。英国のある新聞は「資金繰りに困ったギリシャ政府が国内への支払いを優先させて、IMFへの返済を滞納する」と報道した。さらに、「支援が受けられない場合に備えて、銀行を国有化して、独自の紙幣を流通させる計画を立てている」という。それらが現実のものとなれば、事実上のユーロ圏からの離脱を意味することになるだろう。報道はギリシャの意図的なリークでありブラフ(脅し)だとみることもできようが、今後の展開がますます注目される。
執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)
マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフ・アナリスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフ・アナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。