例えば結婚生活の中で、女性がちょっと外出するために男性に掃除と洗濯を頼んだとします。帰ってきてみると、掃除しか終わっていない。そんなことって、よくありますよね。「洗濯機を先に動かして、その間に掃除をしたら両方終わるでしょ」と女性は思います。ですが、男性からすると、1つの仕事が終わってから次に進みたい。仮に、洗濯を先にやっても、それが終わるのを待って掃除をしてしまうかもしれません。

よく、女性は一度にたくさんのことができるといいますよね。歯を磨きながら、洗面所の掃除をしたり。料理をしながら、テレビを見ながらでも会話ができます。それに対して、テレビを見ている男性はテレビを見るということしかできないため、話しかけても生返事。どうして男性は、1つのことしかできないのでしょうか。

男性脳→シングルタスク、女性脳→マルチタスク

結婚生活の中で、「どうして1つのことしかできないのよ! 」と妻側が不満を爆発させることも

男性脳と女性脳という言い方をよくしますが、一般的に脳科学の分野などでは、男性脳は一つのことしか集中できないシングルタスクだといわれています。よくいえば、1つのことにこだわり、追求していくには向いています。ですが、その一方で同時にいろいろなことができないといわれています。それに対して女性脳は、同時にいろいろできるマルチタスクだとされています。

なぜ男性脳と女性脳で、シングルタスクやマルチタスクに別れるかについては、明確にはわかっていません。ですが、これを進化の視点で考えていくと、少しわかるようになります。

男性の主な仕事が猟に出かけることだった頃。男性が狩りに成功するためには、一つの獲物に集中しなければなりせんよね。あちらこちらに注意がそれては、獲物に逃げられてしまいます。また、女性の場合は育児をしながら、掃除や洗濯などの家事をしなければなりません。同時にしなければならない仕事が、女性たちにはたくさんあったわけです。男性脳と女性脳というのは、そんな大昔の生活のあり方が、進化の中で脳や行動の仕方に影響を与えたのかもしれませんね。

ちなみに、1つのことしか集中できないということは、男性は女性とケンカをしても、仕事をしている間はそのことをすっかり忘れているということ。家に帰るまで、ケンカのことは頭をよぎりません。これはケンカに限らず、好きな恋人のこともそう。仕事中に甘いメールを送ってくることはないのです。

なので、「なんでゴメンっていってこないの? 」とか「もっと日に何度もメールしたいのに。ホントに私のこと、本気なのかな」と考えるのは、意味がないのです。男性脳と女性脳の違いや、男性はシングルタスクということを理解しておけば、男女の間で余計なケンカをしなくてもすむようになるかもしれませんね。

※画像は本文と関係ありません。

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理に詳しい。
現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は「化粧にみる日本文化」「黒髪と美女の日本史」(共に水曜社)など。