地方都市の城下町で多いのは、繁華街が駅周辺ではなく離れた場所にあるケース。そして、ビジネスホテルもそのような場所に密集することが多い。熊本市も日本一幅の広いアーケードで知られる「サンロード新市街」周辺にビジネスホテルの進出が多く見られる。そのような中、無料朝食を展開するビジネスホテルに注目してみたい。
なお、この企画では、地元密着の独立系や小規模チェーンのビジネスホテル無料朝食にスポットを当てており、本文では別途料金が発生する「有料朝食」との対比で「無料朝食」と定義している。
日替わりでカレーやちらし寿司も
筆者はこれまで全国様々なビジネスホテルを利用してきたが、狭い道路に向かい合った全国チェーンのビジネスホテルという光景はなかなかお目にかかれない。熾烈な競争を象徴する光景だ。
そのようなホテルのひとつである「東横イン熊本新市街」の無料朝食では、全国展開する"東横インクオリティー"を実感させてくれる。明るいスペースで、おにぎり、パン、漬物にサラダなど、利用者の評判も上々。日替わりで、炊き込みご飯、カレー、ちらし寿司なども提供している。
朝食を重視しない人にも便利な朝食
ビジネスホテルでは内容が充実した無料朝食が増えているものの、実際は宿泊料金に転嫁されている。「朝食は必要ない」もしくは「軽く済ませたい」という利用者から不公平感の声も時々聞く。そんな人には、ワシントンホテルが全国展開する「R&Bホテル」がオススメだ。
サンロード新市街近くには、同ホテルの「R&Bホテル熊本下通」がある。その無料朝食は、パンとゆで卵、ドリンク(スープ)バーというシンプルさ。シンプルゆえ、利用者の滞在時間も少ないので、ロビー前のスペースでサッと済ませてスマートにホテルをアウトできる。ロビーからはコンビニエンスストアの入り口が直結しているので、足りなければそちらで気軽に購入することも可能だ。
食器にもこだわりが光る
やはり熊本市でも全国チェーンに対抗すべく、地元独立系チェーンの健闘が光る。「エクストールイン」は銀座通りと水前寺に展開するビジネスホテルで、機能的な客室やデザイン性の高い館内に加え、充実した無料朝食も人気のホテル。ハンバーグにソーセージ、漬物、煮物に卵料理、パンも充実、もちろんサラダもある。
取材日にはカレーも提供され多くの利用者が楽しんでいた。さらに感心したのは取っ手のついた汁わん。高性能なコーヒーマシンの横にはテイクアウト用の容器も用意され、食後ゆったり客室で楽しめる。このような何気ない心遣いがうれしい。品数をそろえ、豪華に見せることも大切なのだろうが、食器やレイアウト、導線など何気ないところで利用者目線を感じられるのは高印象である。
※記事中の情報は2014年12月取材時のもの
筆者プロフィール : 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)
ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。
「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」