あなたは「アジアのスパリゾート」と聞いたら、どこを思い浮かべるだろうか。インドネシアのバリ島や、タイを思い浮かべる人も多いかもしれない。ところが、実はマレーシアにもバリやタイに負けないくらいの"極上のスパ"が体験できるリゾートがあるのだ―。

フランスのアルザス地方に12世紀に建てられた「オー・クニグスブール城」がモデルになっている「ザ・シャトー スパ&オーガニック・ウェルネス・リゾート」

中世ヨーロッパの城を思わせる外観

マレーシアでそんな非日常的なスパが満喫できるのは、首都・クアラルンプール市内から車で北東に約45分。熱帯雨林に囲まれた郊外にひっそりと佇(たたず)むホテル「The Chateau Spa & Organic Wellness Resort <ザ・シャトー スパ&オーガニック・ウェルネス・リゾート>」(以後、「ザ・シャトー」と表記)だ。「シャトー」という名称の通り、一見すると中世ヨーロッパのお城と見間違えてしまうほどの高貴な雰囲気漂うウェルネスリゾートだ。

高級感漂うレセプション

中世ヨーロッパの時代にタイムスリップしたかのようだ

「ザ・シャトー」は、マレーシアの複合企業「ベルジャヤグループ」が保有している「ベルジャヤヒルズ」という約2,000万坪にも及ぶ広大な敷地の中に建てられている。同ヒルズの敷地内には、ゴルフコースや乗馬施設、テニスコートなどのスポーツ施設のほか、植物園やオーガニック農園なども設けられている。宿泊期間中は、それらの施設でさまざまな体験をすることも可能だ。

「ベルジャヤヒルズ」内では、乗馬にゴルフなどさまざまなアクティビティが体験できる

ヨーロッパ式のスパを複数満喫できる

2011年に開業したばかりの「ザ・シャトー」だが、すでに権威ある世界的な表彰機関「セブン・スターズ&ストライプス」をはじめ、既に数々の機関やメディアから賞を受けて今、注目を集めている。その理由の一つとして、ヨーロッパスタイルの豪華なスパを豊富に取りそろえている点が挙げられる。

「ザ・シャトー」は多くの賞を受けている

「ザ・シャトー」のCEOであるテー・ミン・ワさんが、「私たちのホテルでは、アジアのホスピタリティ精神とヨーロッパの技術が融合したスパを堪能できます」と胸を張るように、「ザ・シャトー」のスパ「ラ サンテ」は、多数のスパメニューを提供している。

清潔感あふれる「ラ サンテ」の受付

フェイシャルケアやボディーマッサージはもちろん、バストリフトやセラピーボディーラップ、ボディースクラブなども体験できる。中には、最新のマシンを使った「メディカルスパ」などもある。

最新のスパを楽しんだり、塩素を使用していない塩水プールで泳いだりできる

また、「ザ・シャトー」は、短期間でスパやフィットネスを集中的に行ってもらうことで、宿泊客に心身ともにリフレッシュしてもらうため、複数の「スパプログラム」を提供している。

「スパプログラム」は、個人に合わせたスパメニューを提供してくれる

例えば、「STRESS RELIEF」(ストレス除去)では、「ストレス除去マッサージ」「スウェーデン式マッサージ」「シーウィードピートリチュアル」「ハーバルバス」のスパメニューおよび複数のYOGAやフィットネスプログラムが体験できる。これらのメニューを3日間かけて行うことで、「頭と体のデトックス」をするというわけだ。

「スパプログラム」のような総合パッケージだけではなく、個々のスパメニューだけを体験したいというゲストの要望にも対応。「ザ・シャトー」に宿泊していない人でも、スパを利用できる点もありがたい。

マッサージで日ごろの疲れを癒やす

屋外でのヨガを初体験

筆者も実際にスパマッサージを体験してみた。普段から肩と腰の状態がよくないので、オーガニックの海草オイルを塗られた後、その2つの部分を入念にマッサージしてもらった。小一時間ほどして施術が終わると、筋肉の緊張がゆるまったのか、日本から持ってきたさまざまな憑(つ)きものが落ちたのか、両肩がすっと軽くなった感じがした。

さらに、フィットネスプログラムとしてヨガも人生初体験。四つんばいの状態から一方の手を前方に水平に差し出し、その手とは逆側の足を後方へ水平に伸ばすポーズや、正座の状態から腕を前へ滑らせてうつぶせになるポーズなどを行った。わずか50分ほどのプログラムだったが、普段使わない体のコア部分を刺激したためか、顔中が汗でびっしょりに。デトックス気分が満喫できた瞬間だった。

汗を流すためのフィットネスルーム

朝の気持ちいい空気の中でのヨガは最高だ

オーガニックの素材にこだわる

ただ、「ザ・シャトー」の魅力はスパだけではない。ホテル名にもあるように、「ザ・シャトー」は世界でも珍しい「総合的なオーガニック体験ができる」のも特長で、ゲストに提供する食材やアメニティーは、徹底的にオーガニックにこだわっているのだ。

部屋のアメニティーには、オーガニック製品のブランドとして有名な「VOYA」を用いる

「国によってオーガニックの基準は異なりますが、マレーシアでは製品の構成要素のうちで70%以上がオーガニックであれば、その製品はオーガニックと認定されています。食材は、ベルジャヤ・ヒルズの敷地内のオーガニック農園で育てられたものを使っておりますが、中にはクアラルンプールから取り寄せるものや空輸して取り寄せているものもあります」と、従業員の村多美香さんは話す。

日本人宿泊客の担当などを任される従業員の村多美香さん

実際、部屋で使用されているベッドリネンやタオル、手に触れるものはすべて100%オーガニックに統一されている。バスアメニティーは、スパでも使用されていた「VOYA」を使用している。

最もグレードの高い宿泊部屋「ソン・アルテス・スイート」

自分の部屋でジャグジーが体験できる「スパ・スイート」(ジャグジーがないタイプもあり)

マレーシアの景色を一望できるモーニング

食事も素材本来の味を堪能できるよう、薄味で仕立ててある。薄味好みの筆者は、ランチで提供された滋味あふれる「にんじんのコンソメスープ」やアンティチョークのピューレなどで味付けされた「スズキのグリル」が特に気に入った。ディナーは、ピアノの生演奏と共にフレンチを楽しめる「ラシエット」でいただき、優雅な時間を過ごすことができた。

「にんじんのコンソメスープ」

「スズキのグリル」

そして、食事で最も素晴らしかったのは、オーガニックティーやスイーツを楽しむレストラン「ベルヴュー」での朝食だ。テラス席に座れば、高度約1,000mにある「ザ・シャトー」ならではの見晴らしのよい景色を眺めながら、オーガニック料理を味わうことが可能だ。

見晴らしのよい「ベルヴュー」での朝食は、贅沢な気分を味わえる

新鮮な空気を吸いながら食べる朝食は格別で、どれも本当においしかった。ローストビーフはジューシーで肉のうま味がしっかり味わえ、ブラックペッパーが食欲を刺激する。ゴーダ、エレメンタリー、エダムがそろったチーズ盛り合わせは、それぞれの味の違いが楽しめる。

ただ、筆者が特に気に入ったのは青りんごのフレッシュジュース。ふわふわな泡の下に隠れたジュースを口に運ぶと、まさに100%ピュアテイストと感じられるぐらい濃厚な青りんごの味を堪能できた。

チョコスコーン(中央)は絶品

青りんごのフレッシュジュース(右上)は、これまでに経験したことのない味と食感だった

体の内も外も美しくなるための時間を過ごす

実際に「ザ・シャトー」に1泊して感じたことは、「体の内も外も美しくなるための時間を過ごせた」ということだ。スパやフィットネスで外見を整える一方で、オーガニックフードでインナービューティーも手に入れる。仕事に追われている日本では、決して味わうことのできないぜいたくだった。

マレーシアは近年、ショッピング天国として名を馳(は)せつつあるが、スパ&ウェルネスとしての魅力も十分に備えている。マレーシアを訪れた際は、「ザ・シャトー」まで足を伸ばしてみて、心と体を清めてみてはいかがだろうか。