グランプリファイナルに出場したフィギュア・町田樹選手らの演技を、元フィギュアスケート選手の澤田亜紀さんが解説する

日本時間12月12日から14日まで開催されていたフィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルには、羽生結弦選手や町田樹選手をはじめとする計4人の日本人選手が出場した。

羽生選手は、中国杯のけがを乗り越えて見事に優勝を果たした。だが、町田選手は6位、大会初出場の無良崇人選手と本郷理華選手は、それぞれ5位と6位に終わった。

四大陸選手権4位などの成績を収め、現在はコーチとして活動する元フィギュアスケート選手の澤田亜紀さんの目に、町田選手らの演技はどう映ったのだろうか。町田選手、無良選手、本郷選手の演技について解説してもらった。

町田選手

GPシリーズはスケートアメリカ大会で1位、エリック・ボンパール杯で2位と安定していた成績を残していた町田選手。ショートプログラム(SP)は、羽生選手に次ぐ高得点の87・82をマークしての2位発進だったが、フリーでは冒頭の4回転トゥーループで転倒。その後もジャンプでもミスを重ねるなど、精彩を欠いた。澤田さんは、町田選手にしては珍しく精神面での揺らぎがあったのでないかと指摘する。

「ジャンプのタイミングが合わなかったように見えましたが、今までこのようにミスを引きずってしまうことがあまりありませんでした。町田選手も、ミスが続いてしまったことに動揺してしまったかもしれません。今シーズンよりジャンプの回数についてのルールが複雑になり、ミスをした場合のリカバリーの仕方も単純ではなくなっています。1つのミスを犯すと、予定しているジャンプを変えないといけない場合が多いです。演技中も次のことを常に考えなければいけない状態になるため、演技に集中できないこともあります」。

ただ、この経験が今後の町田選手に生きることを期待し、「次回の全日本選手権では、パーフェクトな演技が見られることを楽しみにしております」とした。

無良選手

GPシリーズはスケートカナダ大会で1位、NHK杯で3位に入りファイナルへの切符を手にした無良選手。SPは78・35で6位、フリーは4回転トゥーループ-3回転トゥーループの連続ジャンプなどを成功させるも157・02にとどまり、5位に終わった。ただ、澤田さんはフリーの演技に今後の期待を抱く。

「ショートでミスがありましたが、フリーでは力強いファントム(オペラ座の怪人の役名)を演じきりました。高さのある4回転を跳び、フリーではのびのびと滑っていた印象です。作シーズンは四大陸選手権で優勝しており、今シーズンの活躍を楽しみにしていた選手の1人です。次の大会である全日本選手権まであまり日がありませんが、今回の経験を糧にぜひ頑張ってもらいたいです」。

本郷選手

GPシリーズはスケートカナダ大会で5位、ロシア杯で優勝した本郷選手は、補欠1番手として繰り上げでファイナルに初出場を果たした。SPは堂々の自己ベスト61・10をたたきだしたが、フリーは115・03と伸び悩んだ。5位のユリア・リプニツカヤ選手(ロシア)と1・66点差の6位に終わり、ほろ苦いファイナルデビューとなったが、その奮闘ぶりは光るものがあったと澤田さんは言う。

「補欠からの繰り上がり出場で、準備する時間も少なかったかと思いますが、初出場とは思えないほど堂々とした演技でした。本郷選手は手足が長く、見栄えのする選手です。作シーズンよりもエレメンツの精度が上がっており、ダイナミックな演技に加えて、エレメンツといった武器が備わったなと感じています。シニア1年目、強気の攻めの姿勢で残りのシーズンを戦い抜いてほしいです」。

今回は残念ながら不本意な成績に終わってしまった3選手だが、リベンジの舞台はすぐにやってくる。12月26日より始まる全日本選手権では、この3選手の演技を刮目(かつもく)して見る必要がありそうだ。

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取材協力: 澤田亜紀(さわだ あき)

1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。