古くから私たちの生活になじみ深い植物「よもぎ」

「よもぎ」は、古くから私たちの生活になじみ深い植物です。お餅に練りこんで作るよもぎ団子をはじめ、てんぷらや薬味などさまざまな料理に用いたり、地域によっては入浴剤として活用されたりしています。また東洋医学で使用する"お灸"や、"漢方薬"でも理血類として使われ多くの方の健康を担ってきました。大人の味といわれることもあるぐらい、「よもぎ」そのものは相当苦みがあります。

実はこの「よもぎ」、日本中どこにでも自生している雑草なのです。銀座や丸の内といった大都会のビルの隙間にもしっかり根を張ることができる生命力にあふれた植物で、目にした方も多いのではないでしょうか。

世界中で愛用されているよもぎ

また「よもぎ」は日本だけではなく、世界中で多くの種類が存在し愛用されています。 ヨーロッパでは"マグワート(Artemisia vulgaris)"と呼ばれ、薬草として用いられています。学名のArtemisiaは、アルテミス(ギリシャ神話)という女神から取った名称で、豊穣と多産を司る"月の女神"と崇められているそうです。どういう経緯かはさておき、古代ヨーロッパではよもぎと女性の関係が深いことが推測されます。

お隣の韓国では、"よもぎ蒸し"や化粧品として、さらには中国では薬用としてだけでなく、魔よけとしても使われているそうです。

古くから広く愛用されている「よもぎ」とはいったい何なのでしょうか。なぜ"よもぎ"を使うのでしょうか。

その答えは"よもぎの薬効"を知ることにありそうです。よもぎの効果効能について探っていきましょう。

よもぎの薬効とは?

よもぎには"温"の性質

まず、薬草の効能を考えるときに重要なのは、(1)五気、(2)五味、(3)帰経の3つのキーワードです。それぞれを簡単にご紹介します。

(1)薬草は寒・涼・温・熱・平の5つの性質を持っていて温度を調整する働きがあります。冷えている時は温・熱の薬草を用いるわけです。

(2)薬草は酸・苦・甘・辛・塩辛いという5つの味を持ちます。酸は引き締め、苦は排泄、甘は補う、辛は寒気を取る、塩辛いは利尿作用などの働きがあります。こちらも目的に応じて使い分けます。

(3)帰経とは、薬草がどこの経絡を通り内臓に入っていくかを表したものです。たとえば「緑を見るとは目がよくなる」というのを聞いたことはないでしょうか? 東洋医学では、緑(青)は肝臓の経絡に入ると考えられていて、肝臓との関係性を表した五行色体表なるものが存在します。肝臓(五臓)=春(四季)=風(五気)=酸(五味)=青(五色)=目(五根)というものです。青と目がつながっているのがわかると思います。だから「青は目に効く」のです。

これら知識をもとに目的に応じて、薬草を選び、用いていきます。では、よもぎの性質をみていきましょう。

(1)五気では"温"の性質を持ち、体を温め、痛みを止め、気血のめぐりを良くする働きがあります。

(2)五味では"辛"・"苦い"の性質を持ち、寒気を取り去り、気血のめぐりを改善し、苦味の特徴であるカラダを犯す悪いもの(邪気)を排泄し、体内の余分な湿気、熱を取り除く働きがあります。

(3)帰経として、よもぎの薬効は"肝・脾・腎"という内臓に入ります。この3つの内臓は気血と呼ばれるエネルギーの生成運搬と生命力に深く関わる重要なところです。まさに肝腎要の内臓と言ってもよいでしょう。

つまり、「よもぎ」には気血の流れをよくし内臓機能を高め、エネルギーに満ちた状態にします。さらには体内にある老廃物を排泄してくれるので、便秘やむくみ、ほてりだけでなく肌トラブルにも効果的です。

ただしこれはあくまでよもぎの性質上の話であって、もっと具体的な薬効も存在します。それが、温裏、止血、止痛、安産作用です。冷えによるお腹の痛み、冷えによる下痢、鼻血、吐血、性器出血、安産作用を期待してよもぎは用いられます。

冷えやすい女性に

よもぎは温め、寒さを取り、痛みを取り、気血を作り、血行を改善し隅々までエネルギーを送り出す

女性は「陰の生き物」「血の生き物」と表現されるように、身体に潤いが多く、男性に比べると冷えやすい傾向にあります。身体が冷えると血行不良が起こり生理痛や生理不順、PMS、むくみ、冷え症、不眠などマイナートラブルを起こしやすくなります。

また、よもぎを採取する春という季節は少しずつ温かくなりますが、冬の寒さが残るだけでなく、春一番といわれるように風が強く吹き、寒かったり暑かったりと不安定な季節です。そんな不安定な季節に、よもぎは温め、寒さを取り、痛みを取り、気血を作り、血行を改善し隅々までエネルギーを送り出します。このような多彩な働きがあるよもぎは、他のどんな薬草よりも身近で、手に入りやすかったのだと推測できます。

健康なのは当たり前ですが、女性の美しさはふくよかで、潤って、うっすら赤みのある血色のよい肌であると考えます。近所にあるよもぎを採取し、そのままお風呂に入れてもよし、軽く煮詰めて、その煮汁をお肌にパックしてもよし、新芽であればおひたしにしてもよし。万能なよもぎをぜひお試しください。

※写真と本文は関係ありません

<著者プロフィール>
鈴木元(すずきはじめ)
鍼灸師/臨床検査技師/医薬品登録販売者。最先端の高度医療の現場、千葉県亀田総合病院にて臨床検査技師として勤務。高度医療に携わることで、予防の大切さを知り、鍼灸師の資格を取得。妊産婦を中心に多くの女性の施術を行うだけでなく、漢方を主体とした店舗販売業を開設。天使のたまご代替医療スクールをはじめとする各種スクールやセミナー等で講師活動を行い、雑誌やサイトなどで執筆や監修も手がける。

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