2015年1月より、相続税が"身近な税金"に変わる

新聞や雑誌などで、最近よく「相続税」という言葉を目にしないだろうか。「相続!? 自分は関係ないわ」という時代はもう終わり。2015年1月に行われる相続税の増税で、東京23区在住なら、4人に1人が相続税を支払う時代になると言われている。それはどういうことなのか、『親と一緒に考えるかしこい相続』(日本経済新聞出版社)の著者である税理士の羽田リラさんにお話しうかがった。

8,000万円以下が4,800万円以下に

2015年1月の相続税改正では、税金がかかる相続財産のラインである「課税ライン」が引き下げられる。例えば、残された家族が妻と子ふたりという場合、今までは相続財産が8,000万円以下であれば相続税はかからなかったが、2015年1月からは同じ家族構成でも4,800万円を超える財産があれば課税対象となる。

「課税ラインが引き下げられることにより、今まではごく一部(100人に4人程度)の富裕層が対象だった"特別な税金"の相続税が、普通の人にも関係する"身近な税金"へ変わると言われています」と羽田さんは言う。

相続財産は人生最大の収入になる!?

5,024万円。これは70歳以上の世帯の資産の平均額だ。これに比べて現役世代の退職金の額は平均で大卒2,026万円、高卒1,606万円。「仮に2人兄弟が遺産相続をした場合、相続税の額は退職金よりも多い。人生最大の収入となる可能性もあるのです」(羽田さん)。

相続を"ひとつの収入"と考えるならば、よりよい相続のための準備は不可欠だ。そのためには基礎的なルールを知り、家族で今後についての話し合う場を持つことの重要性を羽田さんは説いている。

相続の4ステップを把握しよう
話し合いをするのなら、その前にザックリと相続対策の流れを把握しておくのが賢明である。

ステップ1)財産リストをつくる
相続対策は、財産のリストアップから始まる。最近は市販されているエンディングノートなどもあるので、これらを使って親に財産項目をピックアップしてもらうだけでも、整理の方向性は見えてくるが、ぜひこの時に財産の評価もしてほしい。

ステップ2)財産の分け方を考える
財産の把握ができたら、どう引き継いでいくか財産の分け方を家族で話し合う。そのために知っておきたい基本的なルールは3つ。
(1)最優先されるのは、法的効力のある遺言書
(2)遺言書がない場合は、誰が相続人なのかを知る
(3)法定相続分(遺産に対する相続人の権利の割合)を知る

ステップ3)相続税を確認する
財産の分け方を考えたら、次に確認しておきたいのが相続税がかかるかどうか。相続税は、税務署のホームページにある「課税ライン」をチェックしよう。それで課税ラインを越える財産を持っていることが分かれば行動することが必要となる。

ステップ4)相続税対策を考える
相続税がかかりそうなら、一度プロに相談する方がベター。相続対策とは、相続が起こった時に困らないようにすること。そのためには、場数を踏んでいるプロの知恵があるに越したことはないからだ。相続税の相談窓口として代表的なところとしては、税理士事務所や信託銀行などがある。

「自分は関係ないわ」が一番危ない

相続した財産に税金がかかる場合、税務署に申告する必要がある。この申告期限は相続開始、つまり亡くなった日から10カ月以内に現金で一括納付ということが法律で定められている。申告ができない場合はさまざまな特例が受けられず、高い税金や高い延滞税を支払うことになる。

「準備なしで相続を迎え、税務署から『相続についてのお尋ね』が届いて初めてご相談にいらっしゃる方もいます」(羽田先生)。「相続!? 自分は関係ないわ」と流してしまわずに、「そういうこともあるんだ」ということは頭の片隅に置いておいて損はない。

※本文と写真は関係ありません

プロフィール : 羽田リラ(はねだ りら)

税理士。北海道大学を卒業後、都市銀行に入行。結婚のため退社し、税理士資格を取得。会計事務所・証券会社で経験を積み、2006年に税理士・ファイナンシャルプランナーとして独立。2009年より女性開業税理士のグループ、ウーマン・タックスの代表取締役。得意分野は相続。共著に『親子で一緒に考えるかしこい相続』(日本経済新聞出版社)などがある。私生活では大学生2人の娘の母。

筆者プロフィール : 楢戸 ひかる(ならと ひかる)

1969年生まれ 大手商社勤務を経てフリーライターへ。中学生と小学生の男児3人を育てる主婦でもある。生活に役立つ情報を「主婦er」にて更新中。